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「双樹・・・遅かったな」

「ごめんなさい、先生」

 頭に布を巻き、顔は泣いた跡がある

 その様子に雪鳳はさすがに心配になった。

「何があった?」

「木から落ちちゃったんです・・・それだけ」

 困った様子で、双樹は答える。

「まあ・・・」

 少し考えて雪鳳は答えた。

「お前ぐらいの歳の男の子なら、よくある事じゃ・・・ただし、あまり無茶をするな」

「はい」

 そういうと、双樹は夕食の支度に厨房へ引っ込んでゆく。


 それからしばらくして、もう一人少年が入ってきた。

・・・一瞬、誰だか解らなかった

 それが解った瞬間、雪鳳は眉をしかめた。

「何があった?」

 先ほどと同じ質問を嫦娥にする。

 嫦娥は一別すると

「別に?」

 と言って、書斎部屋に引っ込んでいった。

「・・・・・」

 訳がわからない。

 雪鳳は首をかしげた。


「ほほほ」

 機嫌のよい婦人が高笑いをしている。

 先ほど、嫦娥を引き連れてやってきた。

 黒い髪を結い上げ、真紅の衣装を身に着けている。

 色白の肌に赤い唇、どことなく近づきがたい美女だ。

「・・・・・・・」

 双樹が、どこかで見た気がする・・・・とでも言うように首をかしげた。

「・・・あの・・金母きんぼさん」

「あら、貴方」

 金母がにこやかに微笑む。

「すこし、大きくなったわね」

 双樹がおずおずと話しかける。

「あの・・・嫦娥の・・・お母さんですか?」

「・・・・・・」

 ただでさえ、気まずい空気が、さらに気まずくなる。

 金母と嫦娥は、雪鳳の遠い親戚で、姉弟でやってきた・・・という説明を双樹にした。

・・・とはいえ、普段からきまぐれにやって来ては、きまぐれに去っている。

 そんな二人と、いきなり家族ごっこをしなければならないのかと、雪鳳と古鏡は目くばせしながら困っていた。

 一番、動じていないのは、事情をしらない双樹と、状況を楽しんでいる金母だ。

 金母は、いたずらな表情を浮かべ、嫦娥に抱きついた。

「今日は一段と可愛いわねぇ、嫦娥」

 大笑いしたいのを必死でこらえている様子だ。

「久しぶりに一緒にお風呂に入る?背中を流してあげるわよ」

「ふざけるな!」

 小さな自分の姿を馬鹿にされ、嫦娥はムキになって怒る。

 振り払おうとしたのだが、力は金母の方が上なので、振り払えない。

・・・その時だった。

「うふふふ・・・」

 堪えながらも、もれる噴出し笑いが聞こえた。

 嫦娥は振り返る、双樹だ

 最初は、我慢する様子だった双樹もいつしか、声にだして大笑いをはじめる

・・・人を馬鹿にするな!

 と普段だったら、掴み掴みかかっただろう。

 だけど、動けなかった。

 双樹が心から笑っている姿なんて始めてみたからだ。


「ごめん、ごめんね嫦娥」

 笑いすぎて出た涙を指で拭いて、微笑む。

「仲がいいんだね・・・羨ましいな」

「・・・・・・」

 なんて答えていいのか・・・いや、何て聞かれたかも解らなかった。

 ただ、その顔から目を外せない。

「顔が赤いわよ、嫦娥」

 横でニヤニヤしながら笑う金母がささやき、嫦娥は我に返る。

「・・・離せ!」

 必死になって振りほどいた。

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