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EGOシリーズ

EGO国物語外伝~新たなる物語~

作者: ハテナ・ディン

先日、知人が結婚したと聞いてプレゼントとして書きました。お二方、本当におめでとうございます!

「ミー将軍おめでとうございます!」

「ありがとうね。」


私が城内を歩いているとすれ違った兵士から祝福の言葉が投げかけられる。何回も聞いた言葉だが改めて言われると嬉しい限りだ。


「おっとミーさんじゃないですか。遅くなりましたがご結婚おめでとうございます。」

「ディンさんありがとうございます。」


ふと前を見ると黒いコートに黒いズボン。黒いハットにサングラスと全身黒一色のディンさんが私にさっきの兵士と同じく祝福の言葉を浴びせる。この人は365日の季節の間ずっとこの格好だ。


[夏とか暑くないのかな?]


私はいつもそう思う。ちなみにこの人はこう見えてチェリーさんという可愛らしい奥さんがいる。聞く所によると尻に敷かれているという話だが私も月日が経つとそんな奥さんになるのだろうか?


そう考えると少し笑えてくる。


「どうしたんですか?」


ディンさんが怪訝そうな顔で私に問いかけてくる。どうやら知らず知らずの内に表情に出ていたらしい。いけないいけない。


「いえ何でもありませんよ。チェリーさんはお元気ですか?」

「相変わらず尻に敷かれますよ。オレは結婚式に出られませんがお幸せに。」

「それは残念ですねぇ。チェリーさんを見習いながら頑張ります。」


いやそれは見習わないでほしい…とディンさんは苦笑していたが私は聞こえなかったフリをした。


国の職務中、机の上で私は今までの事を思い出す。そういえば色々な事があったなぁ・・・

EGO国の建国、自分の幹部昇格、戦争、そして突然の王への任命。


[今思えばよく私死ななかったなぁ。]


戦争の時は死にかけた事が何度もあったが生きてこれたのは仲間たちがいてくれたおかげだろう。本当に感謝してもしきれない。


コンコンッと執務室のドアをノックする音がする。誰だろう?


「入って良いですよ。」

「失礼します。」


執務室に入ってきたのは世界を見てくるといって出国したレィさんに代わって外交兼政務官に就任したハーマ・ヌダラだった。


「今年の世界情勢です。」

「ありがと。また大きく情勢が変わったね~特に聖ブルーローズ教国なんか産業でいえばウチを追い抜いてるよ。全くディンがあの時潰さないから…」

「まぁ今は小競り合いがあるだけで大きな戦争にはいたってないから良いじゃありませんか。ローズ国とは今では交流もありますし。」

「そうなんだけどね~」

「それよりミーさんは自分の事を考えてください。ありがと。」


ハーマさんはにっこり笑いながら私の机にお茶を運んでくる。気配りができて機転も回る本当によく出来た人だ。


「結婚か・・・」


まさか自分が結婚するなんて…本当にこんな私で良いのかな?そう考えると急に不安になってくる。これが噂に聞くマタニティー・ブルーというやつか。


「大丈夫ですよ。」


私の表情から考えを読み取ったのかハーマさんはそう言ってまたにっこり笑いかけた。あぁもう可愛いなぁ・・・結婚したら愛玩動物として飼いたいなぁ。


そんな危ない考えを浮かべながら仕事が終わり部屋をでる。するとディンさんと歩兵隊の将軍であるライスさんが何かを小声で話していた。


「それは本当なのか?」

「確証は無いが恐らく…」

「何を話しているの?」

「あ、ミーさん。いえ何でもないですよ。」


私が気になって話しかけるとライスさんは気まずそうな顔でディンさんと一緒にその場を離れていった。

何だろう?気になるなぁ・・・


仕事が終わった後、私は夫の実家に寄る事にした。実家に行くと私の愛すべき人がそこにいた。


「んっ?よぉお帰り…おっと。」

「ただいま!」


私は彼の姿を見て思わず飛びつき、ゴツゴツした筋肉に頬をスリスリさせた。いつも会っているけれど全然飽きない。この筋肉の触り心地が良い。


「来るんだったら連絡くれればよかったのに。」

「なんか急に会いたくなって…」

「いつも会ってるだろうが。」


そう言って彼は笑う。彼はEGO国の刑務官をしているがそうとは思えない程その笑みは優しかった。


[ま、そこが良いんだけど。]


「今日は家に泊まってく?」

「もちろん!」


私と彼は家の中へと入っていった。結婚式まで後数日。・・・でもこの人となら大丈夫!

こうして私の不安は一挙に解消した。


執務室での会話から数日が経った。世界情勢に変化は無く穏やかな日々が続いていた。そして今日は待ちに待った結婚式の日だ。結婚式場にはすでにウエディングドレス姿の私が緊張しながらチェリーに化粧を施されていた。


「いよいよ結婚式ですね~」

「…ほんとだね。」

「・・・もしかして緊張してます?」


チェリーさんの言葉に頷く。だって結婚式だよ?緊張しない方がおかしいよね!?


「大丈夫ですよ。私も旦那様との結婚式は緊張しましたけど後の喜びもすごいですから。あ、ちょっと下向いてください。」


そう言いながら私の化粧をどんどんと進めていく。チェリーさんの言葉に私の緊張も若干ほぐれた。


「シェリーさんありがとう。」

「どういたしましてっと…終わりましたよ。鏡の前に立ってみてください。全く式に来れないなんて旦那様には後でお仕置きが必要ですね。」

「あはは…お手柔らかにしてあげてね?よいしょっと・・・」


私はチェリーさんの言った通り鏡の前に立つ。それと同時にコンコンッとドアが叩かれた。


「どうぞ。」

「失礼します。新郎の用意ができました。」

「こっちもちょうど準備が終わりました。入ってミーさんの花嫁姿をみてもらいましょう。」


チェリーが嬉しそうにドアを開けるとタキシード姿の彼が照れくさそうに立っていた。か、かっこよすぎ・・・


「きれいだよ。」

「うん…ありがと。」

「ほらほらお二人とも。もうすぐ式が始まりますよ。さっ、新郎はこっちです。」


お互い照れくさそうにモジモジとする。それを見かねたのかチェリーが話に割って入った。

チェリーが式場を指さして新郎を導く。そして私もチェリーに連れられて入口へと歩いていく。入口へ歩くとそこにはお父さんがいた。


「お父さん…」

「ミー・・・昔はお父さんと結婚するって言ってたのに…うぅ・・・」

「ちょっ、お父さん泣かないでよ。私まで泣きそうに…」


扉の前で泣くおじさんと新婦。はたから見るとシュールな光景かもしれない。


「泣くのは式が終わってからですよ。そろそろ入場の時間です。ほらお父さんの腕を持って。」


チェリーがテキパキと私とお父さんに指示してから後ろの長いベールを持つ。


「・・・幸せになれよ。」


お父さんが横で呟く。


「・・・うん!」


それに私は大きく頷いた。そして式場の大きな扉が開かれた。


------------------------------------------------------------------------------


「・・・今頃ミーさんの結婚式が始まっている頃かねぇ?」

「・・・そうだな。」


ミーが結婚式を挙げている教会のすぐ近くの森の中、そこで血まみれの二人の男女が座っていた。


「・・・まぁこれで仕事は終わりましたね。」

「全くこれだけ刺客がいたとは…国境の検問を強化すべきだな。」


血まみれの女性、ライスは後ろを見る。そこにはたくさんの覆面を巻いた人達が倒れていた。覆面には各国の国章や刑務所に服役していた証の紋章がついている。


「全く人の結婚式に襲撃たぁナメた事しやがる。」

「ディン、感謝するぞ。お前の情報のおかげで気づけた。」

「オレはミーさんに幸せになってほしかっただけだ。」

「フフッ…ここからミーさんの結婚を祝福しましょう。」

「あぁっ…っ!?ちょっと待て。一つ二つ三つ・・・報告された人数と倒れているヤツの数が違う。一人・・・足りない。」


するとライスが大声を出す。


「なんですって!?クッ・・・急いで式場に向かいますよ!」

「了解。間に合ってくれよ…?」


そして二人は風の様にその場からいなくなった。


-------------------------------------------------------------------------


何者かが教会に近づく十数分前、その頃の教会では変わらず結婚式が続けられていた。指輪交換・誓いの言葉も終わり、いよいよ式は終わりへと近づいていた。


「・・・すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。愛は決して絶えることがありません。神よ、新たなる夫婦に永久とわの幸せを。」


神父の言葉が終わり、残るは夫婦での退場のみとなった。私はウェディング姿で今日、夫になった彼に連れられてレッドカーペットを歩いていく。不覚にも誓いのキスの時に感極まって泣いてしまったので私の目は若干赤い。


「おめでとうございます!」

「幸せになってよねっ!」


横で長年の友であるペケサ・バツとカー・チキンが私に祝福の言葉を贈ってくれた。いかん、これはまた泣きそうになってきたぞ?

私は涙をこらえながら外へ出て日の光を浴びる。結婚式の最中ずっと建物の中にいたので少し光が眩しい。


階段を下りる手前、私と彼の前を何者かが走ってきた。その手元には何か光る物体。あれは・・・ナイフ!?


「誰かソイツを止めろっ!?」

「死ねぇっ!ミー国王っ!!」


横にいた誰かが大声で叫ぶが突然の事すぎて周りの反応が遅れる。顔面を血だらけにしたその男は叫びながら私の心臓に向かって刃を突き立てようとする。私は反射的に避けようとするがそれが間に合わない事は長年のカンから分かっていた。


「ミーっ!?」

[殺られる!?]


私はお腹にくる痛みを想像して目をつぶった。・・・だがいつまでもその想像した痛みは来なかった。


[・・・あれっ?]


恐る恐る目を開ける。まさか一瞬すぎて痛みも感じずに死んだんじゃないだろうな?しかしその考えは次に自分の目に飛び込んできた光景で全て吹き飛んだ。


「お前・・・人の嫁さんに何をしようとしてやがる。」


私の横にいた彼がいつの間にか私の目の前に立ってナイフを持った暗殺者をその太い腕で叩き伏せていた。一瞬すぎて私の周りの人たちも唖然とする。・・・そういえば彼って柔道してるんだっけ。


「ミー、大丈夫か?」


彼が心配した顔で私の顔を覗き込む。頬を彼の太い指が撫でるが今の私は助かった安心感より彼に対する痛みの方が湧きあがっていた。私は彼に向かって怒鳴る。


「バカっ!なんであんな危険な事したの?死んじゃったらどうするのっ!?」

「妻が危ないのに助けない夫がどこにいる。というかお前オレが昔剣道と空手をしてたの知ってるだろ?」

「それでもダメっ!もしあなたが死んだら・・・私は…ウっ…ヒクッ・・・」

「悪かったよ。・・・だから泣くな。オレは生きてるから。」


彼の手が泣いていた私の頭を撫でる。彼のゴツゴツした手が彼が生きているという実感を私に与えてくれた。こういう優しさに私は惹かれたのだろう。


「きゃっ!?」

「暴れるなよっ!」


急に彼が私の腰に手を当てて私を持ち上げた。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。


「恥ずかしいよ!」

「最後くらいカッコつけさせろ。」


彼は私を抱っこしたまま階段を一歩一歩下りていく。彼に叩き伏せられた暗殺者はカーに連れられていった。今頃ボコボコにされている所だろう。


「オレ達はいらなかったみたいですね。」

「ミー…絶対に幸せになってよ。」


私と彼が歩いていくその様子を遠くから眺めている黒服の男とピンクの髪の女がいたという話だが定かでは無い。


「幸せになろうね?」

「オレが幸せにするよ。」


私はそう言って彼と笑い合うと唇を合わせた。

ここに私と彼、二人の新たなる物語の新たなる章が始まった。私達の物語は今もそしてこれからも終わる事は無いだろう。


「一生離さないからっ!」

「離すつもりは無いよ。」

やっぱり結婚って人生の分岐点の一つですよねぇ…えっ?私にそんな人がいつのかって?・・・そこは聞いてはいけません♪(ぁ


さて知人の結婚をモチーフに書きましたがこれを読んでどなたかが結婚を決意してくれたら幸いです。


では最後に一言、みなさんの物語に多くの幸がありますように・・・

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[良い点] うんうん、わっちとのラブラブ小説はないのか(ry [一言] 久しぶりの短編♪とても楽しかったですww次も楽しみにしていますね!
[良い点] 旦那さんカッコイイですね~♪ その強さ、憧れます☆ [一言] 楽しませてもらいましたよ~^^ 小説書くときに思うのですが、キスシーンとかで自分が恥かしくなったりしません? ダンさんみたいに…
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