表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

顔合わせ2

「ほほ。最近連絡もよこさないから心配しましたよ。ねぇ貴方?」

「……ん。なんかいったか?」

「いい歳こいて昼寝なんぞするでないわ!」

「主がいうことかえ?どちらもじじいには変わりないだろうに」

「なんじゃと!儂はまだぴっちぴちじゃ」

「お二人とも相変わらず仲が良いわねぇ。もう一人頑張ったらいかが?」

「……それには激しく同意ですよ、お祖母様」


 連れ去られるようにして押し込められた馬車には、双方の祖父母が勢揃いしていた。錚々たる顔ぶれに、当然護衛も半端ない数がつけられている。それぞれの私兵に混じって近衛兵が混じっているのは恐らく皇帝に命じられたからだろう。後ろに皇太子が乗っているはずなので、物々しい警護なのも当然か。


 歳を理由に政から一線を引いて半ば領地に引きこもっている面子が、こうして帝都までやってきた。この意味が判らないほどルーテイシアは愚かではない。それにしても、朝の騒ぎから今に至るまで手際が良すぎる。嵌められたと思った時には遅く、こうして逃げられない状況まで追いつめられていた。


 護衛は同時に監視も含まれているのだろうと、そこまで推測して小さく溜め息をついた。


「あらあらルーちゃんはお疲れかしら?」

「若いもんがこんな朝早くから疲れるなど言語道断!鍛え直してやろうか」

「休日くらい休ませてくださいよ、お祖父様。これでも忙しいんです」

「……問答無用」

「ハロルドお祖父様まで!?」

「ほれ笑うのじゃルーシア。折角ハロルドが冗談を口にしたのだ。空気を読むのも社交術よのう」

「高度すぎてついていけませんよ、お祖母様」


 なぜ4人ともこんなにハイパワーなのだろうか。いい加減隠居してくれればいいのに。いや隠居してくれても、これ以上領主の仕事を増やされては困る。ただでさえ、王都での仕事を引き受けているのだ。空軍に士官したのは、なるべく爵位から逃れるためでもある。


「逃げる算段を考えても無駄だぞ。この日のために、精鋭を連れてきたからな」

「どうせ今度開かれる武闘大会に出場するため連れてきたのでしょう?」

「そこは私のためにとかなんとか驚くものだぞ」

「馬鹿じゃ」「お馬鹿さんね」


 二人の女性からそれぞれ厳しい指摘を受けて凹む祖父を尻目に、窓の外は今や城門をくぐり抜け、目を楽しませるためだけに莫大な費用をかけて維持されている広大な庭を写している。その桁数を見れば目が飛び出ること間違い無しだ。十人の庶民が一生を稼いでもまだ足りない金額である。税金の使い方が間違っていると思うのだが、これも”国力を見せつけるため”なのだから仕方ない。


 一部の特権階級だけでなく、定期的に市民に開放されているだけマシだろう。何でも樹齢○千年を越える巨大な樹の下でプロポーズすると実るという奇妙なジンクスまで出来ているらしい。開放される時期になると、毎年どの女性がルーテイシアを射止めるかで賭まで行われているとは本人の与り知らぬことである。




 諦め模様で黄昏れている内に、馬車は許されている中の一番奥で停まっていた。この入り口を使うことが許されているのは、王族及び王家の血を継ぐ三公爵のみだが、今回は特別に許可が出たらしい。皇太子の学友として過去に呼ばれ、幾度となく通ったこの道をこれ程憂鬱な気分で歩くのは初めてだ。


 唯一の味方であろう男は、ルーテイシア以上に強固に、正確に言えば、腰の獲物を奪われた上で上半身から首まで隙間なく縄で捲かれ、更には両手足に手錠付の厳重体勢で近衛兵に囲まれながら歩いている。


 なぜ知り得るはずのない、奴との関係が知られているのかという驚きはない。どれだけ巫山戯た男であろうとも相手は大国を統べる皇帝なのだから。


「いくらシェイスでもあれは可哀相じゃないか?」

「お前はあれを見てないから……。あれは化け物だ」


 視線を逸らすカイザークに、自分がいない間にどんな攻防があったのか是非とも知りたいところであったが、口を開く前に目的地へたどり着く。この国の紋章が中心に描かれた、蒼い染料が採れる貴重なアコリヤ貝がふんだんに使われている扉が、常駐する近衛兵によって開かれる。


 任務を終えて一瞬気が緩む隙を探していたのだが、どうやら言い含められているのか緊張が包んでいる。


 ……お見通しというわけか。


 最後に逃亡する機会を失ったことに対する落胆を顔に出すことはない。カイザークに促されるまま、ルーテイシアは肩を竦めて扉の中へと消えていった。




 頭を下げた先に扉の空気が抜ける音を聞いて、近衛兵達は強ばった身体を弛緩させた。高まった緊張が霧散する。


「漸く終わったな。これから一体何があるって言うんだ?」


 軍の中で彼等を知らない者などいないだろう。

 ドーランの英雄に加え、既に次代の宰相や噂の魔術師、更には、国の重鎮と目される公爵閣下や侯爵閣下まで来ているのだ。錚々たる顔ぶれに、彼等が戸惑うのも無理はない。その中で雪華の魔女とも呼ばれているあの女傑、ルーテイシアの逃亡阻止まで含まれていたのだから。


 給料二倍くらいでは足りない働きだった。




おいぃぃぃ!?旦那達どこ行ったよ?じいさんとかばあさんとかどうでもいいじゃんよぉ!

てなわけで、更に次回まで持ち越しって事d…ぐはぁっ(吐血)

父さんにも殴られたこと無いのに(TT)(←嘘です)



10/25 家の事情により、これから2,3週間ほどインターネットに接続できない状態とかお知らせしましたが、あれはなしになりました。詳しくは活動報告にて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ