外伝2~お茶会~
ルーテイシアとカイザークの息子視点です。
自分で書いててしっくりこないです。
難しい……。
私は今義母上とお茶を飲んでいる。生みの母上の名はルーテイシア・バレッタ・レンツァー・ミラコン・スオード・ライデン・ドルス。
その血筋から貴族の中の貴族と呼ばれる空軍少将だ。戸籍上、義母上の息子として私は暮らしている。なぜなら母上はあのローデルの英雄、シェイス殿と暮らしているからだ。複雑な事情により兄弟達は全員父親が違う。父上と母上は元々幼なじみで、身分血筋どちらも申し分なかったのだが、母上が嫌がった。
なんだかんだでシェイス殿を一番愛しているのだろう。母上が子供たちを愛しているのは判っているので私達が末の弟に対して思うところはない。末の弟は不満そうだが。母上を一番愛しているのもシェイス殿だろうし、私としては母が幸せであればそれで良いのだ。
「レオ?どうかしたの?」
「ああ、いえ。そういえば今週は我が家で晩餐会だったなと思い出しまして」
「ええ、とっても楽しみ。ルーシア様に久しぶりに逢えるんですもの」
ここだ。我が母上は大変女性におもてになる。
普通なら父上を挟んで母上と義母上の三角関係と、流行の恋愛小説並の泥沼が起きてもおかしくないのだが、義母上が変わっているのか父上と母上の娘が欲しいと言い出す始末。
(因みに恋愛小説は臣下に押しつけられただけで決して私の趣味ではないと付け加えよう)
とにかく義母上はご自分で産む気はないらしい。息子の目から見ても義母上と父上はそれなりに仲睦まじい夫婦(政略婚にしては)だと自認しているのだが、それ以上に母上への憧れが勝るらしい。これ程権力に興味がない人間も珍しいのではないだろうか。母上を正妃として自分はあくまで側妃に徹するつもりのようだから極まれりである。
「シェイス殿が嫉妬なさいますよ?」
「良いじゃないの偶には。シェイス殿はいつもルーシア様を独占なさっているのだから、偶には陛下に譲って頂きたいわ。陛下とルーシア様はとてもお似合いだもの」
うっとりと頬を染めながら想像する義母上。
ああ、母上。狙われておりますよ。これではシェイス殿も油断できないわけだ。先日の弟の件といい、男として同情禁じ得ない。
男女で取り合う図が出来てしまうのが母上の魅力なのだから。当の本人は、言っては悪いが男以上に男らしい。
入軍志望の若者の大半が憧れの人は?と問えば、九割は母上の名が上がると言っても過言ではない。母上が軍服で社交界へと出ればハーレムが出来上がるのだから。
あの光景を初めて見た時は唖然としたのを憶えている。父上は苦笑していたが、義母上の姿も実はその中にあったと明記しておく。
これでは夜会を開く意味がないと年頃の娘を持つ貴族達がこぞって父上に訴えたので、数年前に母上は軍服での参加を勅令で禁止された。
その後はドレスを着るようになったのだが、今度は男達の目を惹きつけるようになり、逆現象が起こっている。勿論母上の周りには父上方が陣取っているのだが、馬鹿な勇者はどこにでもいるのだ。
当然そんな輩はいつの間にか城を去っていることだろう。そんなわけで母上は皇帝主催の夜会以外は参加禁止にされている。
なぜ皇帝主催の夜会だけは除外されているのかって?今度は母上の熱烈なファンから泣きつかれたからだ。怒った夫人や令嬢方がこぞってストライキという前代未聞の珍事に、泡を食った旦那や父親が前言撤回を求めたのである。さすがに不敬に当たると皇帝主催の祭事は出席していたが、その年の夜会開催率は例年の3%以下という驚異的な数字を弾き出した。それに伴い、婚姻率の低下と最早一人だけの問題ではなくなったのである。母上を気に食わない貴族達も認めざる負えなかったというわけだ。
私が学んだのは、兎に角、女性を怒らせてはいけないということ。家を守るのが女性の役割だと侮る事なかれ。彼女らは立派な牙を持っている。
その意味で、派手な女遊びをしている直ぐ下の弟の行く先が不安なのだが、あれでそつなく立ち回っているので大丈夫だろう。弟を亡くすのは私とて悲しいのだから。
「貴方も一人では寂しいでしょう?折角ですもの。補佐をしてくれる弟か妹が欲しくないかしら」
「おや。義母上もようやくその気になられたのですか」
「まさか。今宵はまたとない機会ですもの。陛下には頑張っていただかねば」
どうやら義母上は本気らしい。義母上が興奮しながら話す計画と、小鳥の囀りを耳にしながら、私はゆっくりカップを傾ける。
本日も平和で何よりだ。
この後、私に新たな兄弟が出来たかどうかは神のみぞ知る。
結果は外伝1を読めば分かります、はい。