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噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第四章 地獄の学期末試験。
50/50

誰も覚えていない合格者。

「いや~、今回の学期末試験はすごかったですなぁ。」


「本当ですね。今まで行ったテストの中で初めてではないですか?」


職員室――


学期末試験の追試も無事終わり、教師たちはそれぞれ事後処理を行っていると、とある生徒の話題で持ちきりだった。


「筆記はすべての科目で二十位以内。トップに名を連ねていた科目も二つくらいありましたよね。」


「ありましたねぇ~。」


そこで教師たちは一拍間を置くと、


「「「「なのに、実技は全て全滅」」」」


口をそろえて同じことを言った。


「しかし、追試試験は見事でした。」


「本当ですよね。周りとは違う特性を持ちながらもそれに真摯に向き合っていた。他の生徒であれば投げ出していたのではないでしょうか。」


「そうですね。あれはヘルミーナ・スヴァルドレーンだからできたとしか……さすがあの二人の娘。それに、あの一家は色々な意味で有名ですからな。」


誰かが小さく呟くと、誰も反論することはなく「確かに……」と返した。


***


「……リル!やったわ!追試全部合格だって!!」


追試から数日後――


学園の掲示板には追試者の合格発表が貼りだされていた。


ヘルミーナは朝一で学園に向かうと、掲示板の前で足を止めた。


―――――


学期末試験 追試結果通知(実技)


下記の受験者について、

所定の評価基準を満たしたものとして 追試合格 と判定する。


【刺繍】

・ヘルミーナ・スヴァルドレーン

・マルタ・シュナイダー

・イリス・ハルクヴィスト


【音楽】

・ヘルミーナ・スヴァルドレーン

・ノア・フェルステル

・ユリアン・クロッツ


【マナー】

・ヘルミーナ・スヴァルドレーン

・ベアトリス・ルント

・フローラ・ミューラー


【ダンス】

・ヘルミーナ・スヴァルドレーン

・レオン・ヴァイスマン

・カロル・ブレンナー


なお、上記に記載のない受験者については、

後日あらためて補講および再試験を実施する。


学期末試験事務局


―――――


ヘルミーナは掲示板に貼りだされた名前を確認すると、一目散にリルベーラの元へ向かい、抱き着いた。


「わかったから。ミーナ、落ち着きなさい。」


ヘルミーナを何とかたしなめると、ゆっくりと身体から離れていく。


「これもリルと、グレインお兄様、それにレオンハルトのおかげね。」


目の前で喜んでいるヘルミーナを見て、リルベーラはホッと息を吐いた。


(まさか全て何とかしてしまうなんてね……一体、この子は何者なのかしら。)


「私は何もしていないわ。あなたが頑張ったんでしょ?」


リルベーラの言葉にヘルミーナは首を横に振る。


「ううん、頑張れたのはリル達が最後まで付き合ってくれたからよ?私一人だったら諦めていたと思うの。だからありがとう。学園は楽しいところだって、お母さまに聞いていたけど、本当に学園に来てよかった。」


裏表のない無邪気な笑顔を見て、リルベーラは胸の奥がちくりと傷んだ。


(それはこっちのセリフだわ。)


「これで、長期休みはゆっくり里帰りできそうね!リルベーラも里帰りするんでしょう?」


学期末試験が終われば二か月間の長期休みに入る。


その間はどこに行くのも自由だ。


ヘルミーナの言葉にリルベーラの顔に少し影が落ちる。


「わ、私は……寮に残る予定。」


(もしかして……戻りたくないとかなのかしら。)


リルベーラ自身、実家に帰りたくないというわけではなかった。


(帰ったらダーリンの話になるわよね……それでなくても女ってだけで肩身狭いのに。)


ヘルミーナは少し考えてから口を開いた。


「じゃあ、もしよければ私の家に遊びに来ない?ちょっと寒いけど、とてもいいところよ?」


「えっ??」


リルベーラは、ヘルミーナの言葉に思わず二度見する。


「っていっても、二週間くらいだけどね。それ以外は私もユグラシルの図書館とか、美術館とか、仕立て屋さんとか色々回りたいの。せっかくの休みだし、満喫しないと損だもの。」


「それに、私、リルのことをお母さまたちに紹介したいわ。せっかくできた親友だし。」


ヘルミーナの言葉にフッと心が軽くなる。


「い、いいの?」


彼女は微笑むと、こくりとうなずいた。


「もちろん!一緒にお休みを満喫しましょ!」


今はただ、この時間が続けばいい。


そう願っていた。


***


「グレイン。追試合格したようだな。」


「何の話ですか?」


「とぼけたって無駄だぞ?しっかりスヴァルドレーンと名前が入ってるんだからな。」


生徒会室――


追試合格発表があった直後、グレインは報告書を仕上げていた。


リンデルはどこから持ってきたのか、


バサリと


掲示板に貼られていた“追試合格通知”をグレインの前に置く。


「お前、妹がいたんだな?」


(チッ……面倒な奴にバレたな……。)


「えぇ~、いましたよ?父上が国王陛下に書類も提出しているはずですが……?」


貴族である以上、出生届は出さなければならない。


「ふむ……そうか。ではなぜ、貴族の宴に参加していなかったんだ?」


「参加していましたけどね。国王陛下にも挨拶をしていますし。」


(嘘は言っていないぞ。ただ、誰も気づいていなかっただけだ。)


この場を乗り切るためにグレインはリンデルの話を適当に返していく。


(っていうか、何でヘルミーナなんだよ。王子なんだから選りどり見どりだろうが!)


一人心の中で毒づいていれば、リンデルはそのまま自分の机へと戻っていく。


「ふ~ん。まぁ、お前が嘘をつくはずがないか。もしかすると、今回の追試の件と関係しているんだろう?」


リンデルは含みのある笑顔を向けると、そのまま話を続けた。


「噂になっているぞ?追試には儚い美少女がいたと。だが、儚い美少女というだけで誰一人顔は覚えていないらしい。」


グレインはごくりと唾を飲み込んだ。


「もしかしたら幽霊なんじゃないかってな……まぁ、名前がある以上そんなわけないんだがなぁ~。」


リンデルは目の前にあるクッキーを手に持つと口の中に入れる。


サクッ


クッキーの咀嚼音が生徒会室に響き渡った。


その夜――


学園の回廊で、誰かが足を止めた。


「……今、誰かいたような……?」


そう呟いたが、答えは返らない。


風に揺れるカーテンの向こうに、人影はなかった。


——けれど。


確かに、誰かはそこにいた。


名簿にも、記憶にも、うまく残らないまま。


それでも、一人の少女は試験に合格し、少しずつ周りに色を与えていく。


それはまるで刺繍のステッチのように……


――第一部・学期末試験編 完

あとがき


こんばんは。ゆずこしょうです。


いつもお読みいただき、ありがとうございます(*.ˬ.)"


ここで一旦、ヘルミーナの物語は

第一部・学期末試験編として完結とさせていただきます。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。


ゆずこしょう

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