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噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第四章 地獄の学期末試験。
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追試要項。

「エーデルヴァーン。」


翌日――


リルベーラが学園へ行くと、ホルトが校門で待っていた。


「ホルト先生。おはようございます。」


「あぁ、おはよう。これをスヴァルドレーンに渡しておいてくれ。」


そう言って取り出したのは、一枚の紙。


そこには、追試要項が書かれていた。


―――――


学期末試験・追試要項(実技)


明日より以下の日程で追試を実施する。


一日目

・刺繍(制限時間:一時間)

 刺繍のテーマは花とし、それ以外は自由とする。

 白いハンカチと刺繍糸を各自用意すること。


・音楽(演奏時間:一人につき五分)

 課題曲は学期末試験と同じものとする。


二日目

・マナー(制限時間:一時間)

 学期末試験と同様の内容にて実施する。

 当日までにお茶菓子と、それに合うお茶を用意すること。


三日目

・ダンス


なお、実技追試においては、下記を評価基準とする。


一、試験官が受験者本人を確認できる状態であること

一、受験者と成果物、または演奏・動作との対応が明確であること

一、制限時間内に課題を完遂していること


※ダンス実技について

受験者は、試験開始時刻までに

ダンスの相手を自ら用意すること。

ただし、同学年に限る。


―――――


紙の下には、学期末試験管理局の印が押されている。


(期間は三日ね……この内容だったら、何とかなるかもしれないわ)


リルベーラは、隣にいたヘルミーナへ、ホルトから受け取った手紙を差し出した。


「あら、この内容だったら……何とかなりそうね。」


ヘルミーナも同じことを思ったのか、リルベーラと同じ言葉を口にする。


だが――


紙に視線を落としたまま、ふと、ある一文で動きを止めた。


「……と思ったけど……一番最後のダンスだけは、ちょっと大変かも……」


「え!?」


リルベーラは、その言葉に目を見開き、もう一度、手紙へと視線を落とした。


「ん~っと……ダンスの相手は自分で用意する……か。しかも同学年っていうのがちょっと難関ね。」


リルベーラの言葉に、ヘルミーナはこくりとうなずく。


「同学年でなければ、グレインお兄様に頼めたんだけど、それは無理ね。」


ヘルミーナは肩を落とした。


この学園にきて、まだ異性と会話らしい会話をしたことはないのだ。


そんな時――


ふと、一人の男子生徒が目に浮かぶ。


リルベーラも同じことを思ったのか、ポンッと肩を叩いた。


「「レオンハルト!」」


二人の声が重なった。


「レオンハルトだったら、ミーナのことを認識は出来ていなかったけど、理解はしてくれていると思うわ。」


「うん。私もそう思う。それに、何度かリルを通して話もしているしね。」


二人は視線を合わせて小さくうなずくと、レオンハルトの所へ向かった。


***


「レオンハルト。」


二人はレオンハルトのいる教室まで行くと、声をかけた。


アルファルズ学園は専科も合わせると、一学年十クラスに分かれている。


その中でも貴族科は全部で三クラス。


同じ寮生でもクラスが一緒になるとは限らない。


レオンハルトは自分を呼ぶ声が聞こえたのか、ちらりと廊下の方へと視線を移した。


(リルベーラ……?が、一人で来るのは珍しいな。)


レオンハルトは立ち上がると、そのまま彼女の方へと向かう。


リルベーラを見ていると、誰か話しているのがわかる。


(あぁ~、もしかしてヘルミーナも一緒なのかな。)


レオンハルトはウルヴァール競技祭で初めてヘルミーナの存在を知った。


(リルベーラに聞いたときは「まさか……」と思ったものだが……。今は疑う余地がないんだよな。)


倒れた時、助けてくれたのは間違いなくヘルミーナだった。


そして、王族が倒れたことが公になれば大変なことになると、裏工作までしてくれたことを知っている。


レオンハルトは二人の前に行くと声をかけた。


「リルベーラ……と、ヘルミーナも一緒なのかな?二人そろってどうしたんだい?」


「レオンハルトに頼みたいことがあるのよ。」


リルベーラはそれだけ言うと、レオンハルトの腕をがっしり掴んで人がいない方へと連れて行く。


(うわっ……リル。それじゃあ、また誤解されちゃう。相手は一応王子だよ。)


周りにはヘルミーナが見えないからか、コソコソと話す人たちがいる。


しかし、リルベーラは気にも留めていないのか、そのまま足を進めた。


ガラガラガラ


「ここ空いているみたいだから、話するのにちょうどいいと思うわ。」


それだけ言うと、リルベーラは中へと入った。


「レオンハルト。急にごめんなさいね。」


「いや、それはいいんだけど、そろそろ腕を離してくれないか?」


リルベーラは腕を握っていることに気付いていなかったのか、自分が掴んでいるものへと視線を向ける。


(あ、やっと気づいたみたいね。)


自分がやらかしたことに気付いたリルベーラは顔を真っ赤にして、「ご、ご、ごめんなさい。」と謝った。


「いや、いいよ。リルベーラのおかげで変な虫もよらなくなりそうだ。逆に助かるよ。」


意地悪そうに笑うレオンハルトを見て、頬を膨らますリルベーラ。


「はは、冗談だって。そんなに怒らないでくれよ。」


「それで?頼みって何だい?」


レオンハルトは首を傾げると、リルベーラは空気を変えるように一度咳ばらいをした。


「頼みは私じゃないの。ミーナ自分でちゃんと言いなさい?」


リルベーラの言葉にこくりとうなずくと、ヘルミーナはメモ帳を取り出してスラスラと字を書いていく。


スッと目の前にメモ帳が現れると、レオンハルトは覗き込んだ。


《単刀直入で申し訳ないのだけど、私のダンスの相手をお願いできないかしら?》


「ダンス……?」


(何もないところから物が出てくるのは未だに慣れないな。)


それからもう一度メモ帳が消えると、文字が追加されて戻ってくる。


《相手を自分で見つけないといけないのだけど、レオンハルト以外に知り合いがいなくて……。》


ヘルミーナの文字に頭が追いつかないでいると、リルベーラが口を出した。


「ミーナ。あなた端的にまとめすぎて、レオンハルトが追い付いていないわ。

レオンハルト。あなたも知っているでしょ?ヘルミーナの実技試験が全て追試になったこと。」


その言葉を聞いて、レオンハルトはハッとした。


「あぁ~。あれか。噂になっていたからね。筆記は上位にいるのに、実技全部落ちるって初めて見たって……。」


自分で話をして、原因が分かったのか、一度言葉を飲み込む。


「……もしかして……?」


三人の間に一瞬の沈黙が流れる。


「……そう、そのもしかしてよ。

他の三つの試験は何とかなりそうだとヘルミーナが言うんだけどね。

唯一ダンスだけは、同学年で自分で相手を見つけてくるようにと書いてあったの。」


そう言って追試要項の紙を見せると、レオンハルトはその紙を読み始めた。


「……なるほどね。」


それからしばらく考えると――


「分かった。ヘルミーナ。君には命を救ってもらった恩もあるし、私でよければ相手をしよう。

ただ、当日はどうすればいいんだい?」


レオンハルトの言葉に、ヘルミーナはホッと息を吐いた。


《当日、この時間に来てほしい。》


レオンハルトはそれ以外何かを聞こうとはせず、「分かったよ」と返した。

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