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噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第四章 地獄の学期末試験。
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実技試験。

「これより実技試験を行う。今日は午前中に音楽。午後は男女に分かれ、女子は刺繍、男子は剣術の試験だ。各自、試験に遅れないように。」


翌日――


ホルトが教室に現れると、一言だけ話して出ていく。


「午前中は音楽か~……。リルベーラは何を選んだの?私はヴァイオリンなんだけど。」


「私はフルート。ヴァイオリンは複雑で苦手なのよ。その点フルートは肺活量があれば何とか音は鳴らせたから。」


リルベーラの言葉を聞いて、ヘルミーナは刺繍が苦手だったことを思い出した。


(きっと手先で作業することが苦手なのね。)


「そっか~。確かにヴァイオリンは音階が難しいものね。もっと簡単なものだったらいいのにね。カスタネットとか……」


カスタネットを持って、リズムに合わせて叩いている姿を想像する。


「クスッ……(見た目はクールな美少女なのに、すごいシュールね。)」


「何一人で笑ってるのよ……。人には得意、不得意があるでしょ~。」


リルベーラがヘルミーナのことを横目で睨むと、彼女は目線をそらす。


「何でもないわ!ただ……ちょっと色々思い出しただけ。さぁ、気を取り直して頑張りましょ?」


リルベーラの手を持つと、ヘルミーナは一緒に音楽室へと向かった。


***


「うわ~、すごい人ね。」


音楽室に着くと、これから試験を受ける生徒たちが集まっていた。


パッと見、百人以上の生徒が音楽室に詰め掛けていた。


「これでも今日明日、午前午後で分けているだろうから、もっと人がいるってことよね。」


すでに座る場所はない。

二人は邪魔にならないように壁の方へ寄った。


キーンコーンカーンコーン


「はい、これから音楽のテストを始めます。担当するリュミア・サーペンです。」


「カルド・ヘルヴだ。」


二人は簡単に自己紹介をすると、そのまま試験について説明をしていく。


「音楽のテストはヴァイオリン、フルートのどちらかです。

ヴァイオリンを選んだ生徒は、配布された番号順に私について来てください。

フルートはヘルヴ先生が担当します。」


それだけ告げると、リュミアはそのまま教室の外へと出た。


「じゃあ、行ってくるね。リルも頑張って。」


ヘルミーナは小声でリルベーラに声をかけると、そのまま教室を出た。


***


(さっきより狭いけど、やっぱり一番大きな学園なだけあってしっかりしてるわね。)


第二音楽室――


移動を終えると、リュミアが手を叩いた。


パンパン


「それではテストを開始します。

テスト中は私語厳禁。話した人は不合格です。十人ずつ、番号順に行います。」


(一人ずつなわけないか……そんな時間ないものね。)


「あぁ、これだけは安心してください。まとめて行うからといって、甘い評価をするつもりはありません。」


先ほどまで柔らかい雰囲気だったリュミアは、

第二音楽室に入った瞬間から、

今にも雪が降りそうなほど、冷えた空気をまとっていた。


そして小さく微笑んだ。


「さぁ、始めましょうか。」


(……前言撤回。この先生、かなり厳しいわ。)


「番号を呼ばれた順に、前へ。」


それから十人ずつ、淡々と進んでいき――

とうとう最後の組になった。


「次、この組は九人ですね。……では、準備ができたら始めてください。」


♪~♪~♪


課題曲は全員共通。

わずかなズレも、すぐに分かってしまう。


ヘルミーナは一つ一つ、丁寧に音を重ねていく。


そして演奏が終わると、


(はぁぁぁ~、終わったぁぁぁ~~)


大きく息を吐いた。


「これで全員終わりですね。結果は後日お伝えいたします。次に試験に移動してください。」


リュミアは淡々と連絡事項だけ伝えると、その場を後にした。


音楽の試験を終えた生徒たちは、指示に従って次の試験会場へと移動していく。


それから、時間は進み――


午後の刺繍試験も、想像していたほど特別なものではなかった。


配られた布と糸、決められた課題。

番号順に席へ案内され、静かな空気の中で、ただ針を進めていく。


(刺繍は小さい頃からずっとやってきたし、楽勝ね!)


ヘルミーナの手は迷いなく動く。


下書き通りに糸を置き、歪みを整え、最後まで縫い切る。

途中で止められることも、声をかけられることもない。


(うん、完璧!!)


バサリと広げて確認すれば、均整の取れたきれいな花柄の刺繍が出来上がっていた。


「時間です。」


終わりの合図が出ると、完成した刺繍だけが机の上に残された。


こうして、二日目の試験も滞りなく終わった。


少なくとも、その場にいた誰もがそう思っていた。


そして翌日――


マナーの試験。


「マナーの試験を担当するゲフィナ・ルクスです。

今日の試験はお茶会を想定したものです。

お茶菓子のタイミング、お茶菓子にあう紅茶を出せるかどうかが試験となります。

テーブルごとに行いますので、名前の書いてあるところに座ってください。」


ヘルミーナは名前が書いてあるところに座ると、お茶会の準備を始めた。


その瞬間――


「ヘルミーナ・スヴァルドレーンはいますか?」


ゲフィナの声が響き渡った。


「はい!います!!」


しかし、ヘルミーナの声は届いていないのか、ゲフィナはそのまま手元にある用紙にチェックをつけると他の所へ進んでいく。


「……次」


試験官は、何事もなかったかのように次の名前を告げた。


一瞬、場の空気が揺れた気がした。

けれど誰も気付くことなく、そのままマナーのテストは進んでいく。


ヘルミーナは、何も言えないまま元の位置へ戻った。


遠くで心配そうにリルベーラが見ていたが、テスト中ということもあり声をかけることはできない。


それからどんどん試験は進み――


最後のダンスの試験。


広い室内で、二人ずつ呼び出されていく。


音楽が流れ、組になった生徒たちが順に踊り始める。


「ヘルミーナ・スヴァルドレーン」


再び、名前が呼ばれた。


「はい!よろしくお願いいたします」


ヘルミーナは前に出て、位置に着くと相手が来るのを待つ。


しかし、待っていてもヘルミーナの相手は現れなかった。


音楽が鳴り始める。


(一人で踊ればいいのかな……。)


ヘルミーナは相手がいることを想像しながら、一人でダンスを踊った。


けれど、試験官は視線を巡らせ、首を傾げただけだった。


「……次」


教師の一言で、試験は滞りなく進んでいく。


(えっ!?おわり……?)


誰も、何も指摘しない。


(できることはやったし大丈夫よね……。)


こうして全ての実技試験は、大きなトラブルなく終わった。


「リル!」


「ミーナ!」


パチン


違う会場にいたリルベーラと再会すると、お互いの手を叩く。


「終わったわね。」


「うん!あとは結果を待つだけね。」


「ふふ……今日はカフェでケーキでも食べて帰りましょ?」


「うんうん!行こう、行こう!!」


二人の間に、今日もいつも通りの笑い声が響いていた。

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