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噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第四章 地獄の学期末試験。
40/50

学期末試験開始。

「今日から学期末試験かぁ~……」


学期末試験当日――


いつもより早く目覚めたヘルミーナは、ベッドからゆっくり降りると、カーテンを少し開けて外を見た。


(今日は天気もいいし、なんだかうまくいきそうね!)


ウルヴァール競技祭を終えてから一か月。

友達に囲まれて、皆で勉強を頑張ってきたからか、不思議と試験に落ちるという感覚はなかった。


「まだ時間もあるし、ゆっくり準備しながら最後の追い込みをしようかな。」


ヘルミーナは時間を確かめると、教科書や筆記用具をカバンから取り出した。


それからしばらくして――


「おはよう。今日は早いのね。」


リルベーラが目を擦りながら、ベッドから降りてくる。


「リル、おはよう。今日はなんだか早く目が覚めちゃったの。」


ノートから顔を上げ、リルベーラの方へ向く。


「学期末試験、皆で合格したいね!」


ヘルミーナの言葉に、リルベーラは一瞬目を大きく見開いた。

そして、ふっと目じりを緩めて微笑んでから、自分の手のひらを見つめた。


「そうね。私は刺繍が心配だけど、皆に教えてもらったから頑張りたいわ!」


「ふふっ。きっとリルベーラなら大丈夫よ!

最初はできなかった花の刺繍も、最後は形になっていたじゃない。」


「そうかしら……」


少し不安げなリルベーラを見て、ヘルミーナは大きく頷いた。


「うん!

さぁ、着替えたら朝ごはんに行きましょ?

腹が減っては力が出ぬっていうしね?」


「それを言うなら、腹が減っては戦はできぬでしょ。」


「あはは。そうだった~。まぁ意味合い的には変わらないし!ね?」


二人は軽口を言い合いながら準備を終えると、食堂へと向かった。


***


「おはよう。今日から学期末試験ね。」


「そうね……補講だけは嫌だから回避しないと……」


「うんうん……補講だけは絶対いやよね。」


食堂――


食堂のあちこちから、学期末試験の話題が聞こえてくる。


「補講ってそんなに大変なのかな……」


周りから聞こえてくる言葉に耳を傾けていたヘルミーナは、隣にいたリルベーラに話しかけた。


「私もお兄様から聞いただけだけど、補講になったら長期休みは消えるものと思った方がいいらしいわ……」


「え!? 長期休みが消える!?

それは……絶対嫌ね。」


(久しぶりに帰省できるのに……)


周りの話を聞いて、少し瞳が揺らぐ。


それを見ていたリルベーラは、ヘルミーナの肩に軽くそっと手を置いた。


「まっ、大丈夫よ。

だって、あれだけ勉強してきたじゃないの。

それにヘルミーナは勉強も、刺繍も、ダンスも問題なくできるんだから!

そのために、まずは腹ごしらえでしょ? ほら……」


一度、リルベーラは話を区切ると、


「……“腹は減っては力が出ぬ”なんだから。」


ヘルミーナはリルベーラを見る。


「それを言うなら、“腹が減っては戦が出来ぬ”でしょ?」


「「ふふ…」」


そして、緊張していたことが嘘だったかのように、二人は顔を見合わせて笑い合った。


それからしばらくして――


「「ごちそうさまでした」」


朝食を残すことなく平らげると、二人は食器を片付け、試験会場へと向かった。


***


「よし、完璧ね!」


「うん、リルも完璧!」


お互いに制服の身だしなみをチェックする。


裁縫室での勉強会中。

色々なアドバイスを、ミライアやリナリアからもらっていた。


『いい?学期末試験はね。身だしなみも含まれるの。学園に入った瞬間から全てを見られているわ。だから気を抜かないこと。わかったわね?』


『そうだ。それと、挨拶も忘れるなよ?先生たちには愛想を振りまいておけ』


『え?二つとも学期末試験に関係ないような気がするんですけど……』


リルベーラがクララたちの方へ目を向けると、先輩たちはそろって頷いていた。


『いいか?リルベーラ。お前も公爵令嬢だからわかっているだろう?

この学園は貴族やある程度金を持ったものが通っているんだ。

と、言うことは先生たちもそれ相応の身分だということ。

だからこそ、気を抜いた瞬間一気に付け込まれる。』


その言葉を聞いてすべてを悟ったリルベーラは、ごくりと息を呑んだ。


(貴族としてのたしなみ、素養。マナーのテストはもうそこから始まっているということね……)


二人は先輩たちの話を思い出し、教室に入る手前で出会った教師に、


「「先生、おはようございます!」」


と、笑顔で挨拶をした。


「はい、おはよう。」


ガラガラガラ


挨拶を返した教師は、教室に入っていく生徒たちをちらりと見た。


廊下のざわめきとは対照的に、教室の中は次第に静まり返っていく。


「あれ?今声が重なって聞こえた気がしたが……」


教師は一瞬だけ眉をひそめたが、


「気のせいか……。」


それだけ言うと、教師は二人に続いて教室の中へと入る。


「これから、学期末試験を始める。

まず、席はこちらで指定した。黒板に書いてある席に座るように。」


全員が一斉に動き出した。


椅子を引く音、足音、机が擦れる音が重なり、やがてそれも収まっていく。


「よし、席に着いたな。では、これから試験について説明するぞ。」


黒板に書いてある席順を消すと、カツカツと白いチョークで字を書き始めた。


「試験の日程は三日間だ。

今日は筆記試験。明日、明後日は実技を行う。

実技はこれから配るところに行くように。」


教師は一枚ずつプリントを配り始める。


「それは後で確認しておくように。

このまま筆記試験を始めるぞ。」


問題用紙が一斉に配られ、紙の擦れる音が教室に広がった。


「テストの時間は四十五分だ。

終わったものから教室を出ても構わないが、再入出はできないから注意するように。」


後ろまで配り終えるのを確認すると、


「始め。」


短い合図と同時に、ペンの音が走り出した。


一瞬、息を呑むような静寂が訪れ、

次の瞬間、それを破るように教室中に音が広がった。


(あっ……この問題知ってるわ!)


ヘルミーナは問題を確認すると、スラスラとペンを動かしていく。


(この問題も!勉強会やっておいてよかった~。)


ペン先が紙を走り、行が埋まっていった。


室内は、カリカリとテストを解く音だけが響き渡っている。


誰も、顔を上げない。


そんな時――


ゴホン


誰かが小さく咳払いをした。


それに続くように、


ぺらり。


紙をめくる音が聞こえる。


刻々と迫る時間。

時計を見れば、残りの時間はあと五分となっていた。


ヘルミーナは持っていたペンを置くと、答案用紙から手を離した。


(ふぅ~、何とか間に合ったわね。)


「そこまで。」


ヘルミーナが顔を上げると同時に、教師の声が響き渡った。


「答案用紙を伏せておいて、ここから出ていくように。」


ヘルミーナはカバンを手に持つと、いったん廊下へと出る。


(うん、やることはできたはず……。)


全員が廊下から出たのを確認すると、教師は一枚一枚、答案用紙を集めた。


「……あれ?ここに誰か座っていたか……?」


「まぁ、答案があるならいたのか……」


その違和感は、誰にも気づかれないまま、教室に残された。

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