表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第四章 地獄の学期末試験。
39/50

裁縫室の勉強会。

「はぁ~、もうすぐ学期末試験かぁ~……」


エイクシュニル寮、裁縫室――

クララのため息が、裁縫室の中に響き渡った。


ウルヴァール競技祭以降、衣装係のメンバーとリルベーラの七人は、ちょくちょく集まってお茶会を楽しんでいた。


クララの言葉に、リルベーラとヘルミーナは首を傾げた。


「クララ先輩。学期末試験って、そんなに大変なんですか?」


クララはリルベーラの方を見ると、もう一度深く息を吐く。


「大変ってものじゃないわ……。

筆記はまだいいのよ。でも実技がね~……」


その言葉に、先輩たち全員が頷いた。


「私はダンスのテスト追試だったぞ……。

たった一回、たった一回つまずいただけなのにさぁ……」


「私も~。お茶会のテストで、前の人とお菓子が被っただけで追試になったわ。」


「私は音楽……。

ヴァイオリンとフルート、どちらかしか選べないって……。

ピアノなら弾けたのに……」


(えぇ~、ここにいる全員、一個は追試ってこと……!?)


先輩たちはそれぞれ、テーブルの上のお菓子を手に取り、大きく息を吸った。


そして――


「「「「「刺繍は一発合格だったのに~~~」」」」」


ここにいる先輩たちの声が重なった。


《でも、意外ですね。オスカルド先輩は、苦手な物なんてないと思ってました。》


今まで黙って聞いていたヘルミーナが、ノートを書く。


オスカルドはしばらく黙っていると、意を決して話し始めた。


「だってぇ~。

私、男側のダンス踊れないのよ~ん。」


まさかの話し方に、ヘルミーナだけでなく、ミライア以外の全員が固まった。


「はは。オスカル、皆が驚いてしまったぞ?」


「えぇ~。

でもぉ、ここのメンバーにはバレてもいいかなぁって思ってぇ~。」


どうやらミライアは、オスカルドの正体を知っていたらしい。


(え~っと、初めて出会ったけど、心が乙女ってことなのかな?

でも、こういうのって自由だもんね。

裁縫も上手だし。

私にとっては、大好きな先輩に変わりないわ。)


《私は、どんなオスカルド先輩でも好きですよ?

それに、ミライア先輩も男勝りですし、お似合いなんじゃないですか?》


ヘルミーナの言葉に、二人は頬を紅くした。


二人の様子を見ていたクララたちも、ニヤニヤしている。


「もしかして~……お二人は、そういう関係なんですかぁ~?」


「へぇ~。お似合いですね!

いいと思います。ねぇ~、リナリア。」


ユーディットに名を呼ばれた瞬間、リナリアは口をあんぐりと開けて固まった。


「へっ!?!? 私?」


「あなた以外、他に誰がいるっていうのよ。」


リナリアの返事に、ユーディットは首を傾げる。


(そうよね……。ここにはリナリアって、私しかいないし。)


リナリアはちらりとリルベーラの方を見て、胸の奥が小さく跳ねるのを感じた。


(破いた布は縫うことができる……か。

ここは、きっと縫い直すチャンスよね。)


「確かに、お二人はお似合いだと思うわ。

っていうか!

考えたんだけど、よければ皆で勉強会とか……どうかしら?」


自信がないのか、少しずつ声が小さくなっていく。


しかし――

その心配は、杞憂に終わった。


バンッ!!


クララが机を叩き、立ち上がる。


「それ! いいわね!!

お互い、得意なものを教えあうっていうのはどうかしら!」


クララの言葉に、皆が立ち上がる。


「筆記なら教えられるぞ。」


「ダンスなら……」


「ヴァイオリンなら……」


「フルートなら、私が教えられるわぁ~」


先輩たちがそれぞれ得意なものを言っていくと、全員の視線がリナリアへと向いた。


「お茶会のマナーなら……。

な、なんとかなると思う。」


その言葉に、ここにいた全員の顔がパッと輝いた。


「で、でも、あまり期待しないでね。

何とかなる程度だから……。

そ、その……」


今まで輪の中にいるだけだったリナリアが、少し前に出ようとする。


その様子を見て、ヘルミーナはクスリと笑った。


その姿を見ていたリルベーラが、リナリアに近付いた。


「リナリア先輩。

私も、お茶会でしたらお手伝いできると思います。

ですので……そ、その……」


目線を少し外し、恥ずかしそうに一言。


「代わりに、刺繍を教えてくれませんか?」


二人の間に、沈黙が流れる。


すると、リナリアの背を押すように、温かな空気がその場を包んだ。


「う、うん。

私でよかったら……」


こうして次の日から、裁縫室では毎日、勉強会が開催されることになった。


***


「ここって、どうやって解くの?」


「これは、Xを代入してこうすれば……ほら。」


二人組になって勉強する姿を見ながら、ヘルミーナは微笑む。


「へぇ~。学年によって、勉強内容って違うのね。」


ヘルミーナは足をバタバタ揺らしながら、隣に座るリルベーラを見る。


刺繍を刺すのに、苦戦していた。


「いたっ……。

なんで、うまくいかないのかしら。」


指には、たくさんの絆創膏が貼られている。


《リルって……不器用だったのね。》


思ったことをノートに書いて見せると、それを見た皆がクスクスと笑った。


「わ、わるかったわね……。

昔から、針仕事は苦手なの……。

……いたっ。」


「あ~、だめよ!

糸を引っ張りすぎ!

それに、全然下書き通りに刺繍できていないじゃない!

ちょっと貸して!」


リナリアはリルベーラから刺繍枠を奪うと、一つ一つ丁寧に糸を取っていく。


「はい、やり直し!

これじゃあ、試験で合格どころか、追試も通らないわよ。」


まさかのスパルタ指導に、リルベーラは思わず周囲を見回した。


しかし、ここにいるのは、衣装係になるほどの腕前の人ばかり。

誰一人として、リルベーラの肩を持ってくれる人はいなかった。


ポンッ――


ヘルミーナは、リルベーラの肩を軽くたたくと、首を横に振った。


「ミーナ。

あなた一人、余裕そうだけど……大丈夫なの?」


ヘルミーナは少し考えてから、目の前にある問題を、すらすらと解いていく。


「か、か、完璧……」


《昔から、本を読んだり勉強するのが好きだったからね。

お兄様たちにも、教えてもらっていたし!》


自信満々にこたえるヘルミーナだったが、

その姿が見えていたのは、リルベーラだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ