表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
噂の幽霊令嬢は今日もトラブルに大忙しです!  作者: ゆずこしょう
第二章 制服だけが知っている。
17/50

疑いの芽。

「ねぇねぇ~、最近よくある噂があるのは知ってる?」


「えぇ、私も耳にしただけですが……聞いたことがありますね」


生徒会室――


それぞれが自分の仕事を片付けていると、一人の男が声を発した。


「そうそう、女生徒の制服紛失が最近増えていると思うんだけど、いつの間にか靴箱に入ってるらしいよ」


グレインやリンデルは話に入ることなく、二人の会話に耳を傾ける。


「そうです。しかも制服は、以前のものよりも頑丈になって戻ってくるとか……」


(十中八九……ヘルミーナの仕業だろうな)


顔には出さないが、グレインはその話を聞いて、ため息を吐いた。


「ローヴァン。その噂については、私も知っているが……何か、他にも寮で話題になっていることはないか?」


リンデルの問いに、首を傾げて考え始めるローヴァン。


(ローヴァンなら、ラタトスク寮だし、男女問わず人気だから、知っているかもしれない……ということか)


グレインは二人の話に耳を傾けながら、自分の仕事を確実に処理していく。


「ん~っとね。女の子によるんだけどさ、制服がなくなって、ひとりでに戻ってくるから怖いって言ってる子もいたよ」


(そりゃ、そうだろうな……俺でも、何かあるんじゃないかと思って、簡単には着られない)


「あと、もしかしたら……特定の女生徒に恨みを持った子が、やっているんじゃないかって話もあったね」


「特定の女生徒?」


今まで聞くことに徹していたグレインが、声を上げる。


そして、ローヴァンの代わりに、セリクが話し出した。


「その話……私の寮でも聞きましたよ。今まで、制服がなくなった人たちに共通点があるとか……それで、一人の生徒が疑われているみたいですね」


セリクが眼鏡をクイッと上げると、ニヤリと笑った。

それはまるで、獲物を見つけたハイエナのようだ。


「これは、裁きの鉄槌が必要かもしれませんね」


「いや、まだその特定の生徒がやったと、分かるわけじゃないだろう? そういうのは、はっきりしてからにしろよ」


冷静に見えるセリクだが、生徒会の中で一番の直情型な彼に、グレインはストップをかけた。


そして、小さくため息を吐く。


(……なんだか、嫌な予感がするな)


その言葉は、表に出ることなく、心の中で溶けていった。


「最近、教師の耳にも届き始めているらしい。放置はできないだろうな。そろそろ、動くころ合いか……」


話を聞いていたリンデルが、机を指でトントンと叩く。


「ローヴァンは、今まで通り噂を集めてくれ。セリク……は、このまま生徒会の仕事を」


「えっ? なんでですか!? 私も動きますよ」


「いや、お前はだめだ。すぐ手が出るし、決めつけが多いからな。生徒会室で留守番していてくれ」


その言葉に、グレインとローヴァンが頷く。


「グレインは、情報収集を。できるだけ、正確な情報を集めてくれ。……できるな?」


最後の「できるな?」には、リンデルの王族としての言葉も含まれている。


「……わかりました」


「私は先生に話を通しておく。このまま広がり続けるのは避けたいから、早急に解決しよう」


それだけ言うと、リンデルは生徒会室から出ていった。


(面倒なことにならなきゃ、いいんだが……)


グレインは、リンデルが部屋から出ていくのを見届けると、目の前の書類に目を戻した。


***


「うわぁ~……!!」


お昼休み――。


天気がいいから外で食べようと、リルベーラと二人で中庭へ出ると、ヘルミーナが急に大きな声を上げた。


周りに他の生徒がいないこともあって、誰にも聞こえていないことに、安堵する。


「ヘルミーナ……? どうしたの?」


「あそこを見て……?」


ヘルミーナが指した方向を見れば、そこには――


「えっ……? 制服?」


見るも無残な姿の制服が、木に引っかかっていた。


「そう……。いつもこうやって、色々なところに落ちてるのよ。誰かに見つけてほしいのか……それとも、見つけてほしくないのか……わからないんだけど」


ヘルミーナはランチボックスをリルベーラに預けると、そのまま木によじ登った。


「ちょ、大丈夫?」


「へーき、へーき!! 昔から訓練でよくやらされていたから、このくらい楽勝よ!」


音を立てずに、ひょいひょいと昇っていくヘルミーナを見ていると、ひとりの女生徒が近くを通りかかった。


「あら、リルベーラさんじゃない。こんなところで、何をしているの?」


(げ……。この人、たしか……セレーネの取り巻きの一人だったはず……。早く取らないと……誰かに見つかったら、また騒ぎになるわね)


ヘルミーナの姿は、案の定、目の前にいる女生徒には見えていない。


そのため、ここにいるのは、リルベーラ一人だと思われている。


リルベーラは、軽く微笑んだ。


「今日は天気がいいので、外でご飯を食べようかと思いまして……。先輩こそ、どうされたんですか?」


「ちょっと……探し物をね。あなた、この辺りで制服を見なかったかしら?」


「せ、制服ですか?」


「そう。見ていないなら、いいのよ」


そう言って、女生徒がこの場を去ろうとした瞬間――


ドサドサドサッ。


体勢を崩したヘルミーナが、木の上から落下した。


(いったぁぁぁ~~~……)


木が揺れた音が聞こえたのか、女生徒は後ろを振り返った。


「い、今……何か、聞こえなかった……?」


一瞬だけ、視線がヘルミーナのいる木の方へ流れる。


だが、それを悟られないように、リルベーラはすぐに表情を整えた。


リルベーラは口角をピクピクと動かすと、首をゆっくり傾げる。


「い、いえ……きっと、猫が木に登っていたんじゃないでしょうか?」


苦し紛れの言い訳をしていると、切り刻まれた制服が、リルベーラの足元に落ちていた。


(しまった……手から離れちゃった)


ヘルミーナの手から離れたことで、女生徒にも、切り刻まれた制服が露見する。


リルベーラは、サッとしゃがみ込み、制服を隠そうとするが……


時すでに遅し――。


ばっちり見られた切り刻まれた制服を見て、女生徒は大きな声を上げた。


「きゃぁぁ~~~~!! あなたがやったのね!!」


その声は、中庭中に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ