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黒緋色の翽  作者: 瑞ノ星
第四章
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第三十九話:お得意様

クロアケ達は廃城を目指して、ラドアバルの名もなき街を歩いていた。

道中、魔物や魔族が現れた時は、他のメンバーは隠れ、シュナの魔法具や話術でやり過ごす。派手な戦闘は避けるべきというのが、シュナの考えだった。


シュナはハースティアのメンバー達と交流があった。便利屋として名が知れ渡っていることによって、犠牲にされることを回避し続けていた。シュナの協力の下、休憩を挟みつつ、安全に進んでいた。


「…アンタも大変だな、“人界からの侵入者探し”って。」


「うん。シュナちゃんはすごいよ、そんな可愛いのに一人で便利屋なんて。」


「よせよ、オレは男だって何回も言ってんじゃん!じゃ、またな〜。」


魔族の気配が遠ざかる。


「……おい、もう出てきていいぞ。」


物陰に隠れていたクロアケ達は、周囲を伺いながらシュナの元へ歩いていく。

この場で頼りになるのはシュナしかいなかった。


「今のも、“お得意様”?」

クロアケが疑問を投げかける。


「ああ、ウチの店によく魔法具を買いに来る常連だ。この辺で魔法具を持ってる奴は、全部オレが作った魔法具を使ってると思えばいい。そのくらいオレは顔が広いんだ。」


シュナはリュクナが持っている灯し石を見て、苦笑する。


「例えばそんな石ころも、加工すれば少量の魔力で周囲を明るく照らせる…。そうだな、持ち手付きの携帯灯とか…名前はランタンでどうだ?イカすだろ。」


「頭がいいんだね、シュナって…顔も整ってるし。」

チェディーは嫉妬気味に口を尖らせて言った。


「顔は関係ないだろ!?」

シュナは頬を赤く染め、乱暴に歩き出した。


「ほら行くぞ、そろそろ貧民街がある辺りだ!どっかの路地裏で休むぞ。オレの時計も一の刻を示してる。月の模様が浮かんでるから…人界では深夜ってとこか。」


「随分正確に分かるんですね…その時計。」

リュクナが不思議そうにシュナの時計を眺めている。


「…オレが作ったからな。」


それだけ言って、歩き出す。


…。


貧民街に入ると、急いで物陰に隠れる魔族の姿を見かけた。


「懐かしいな…。」

ふと、アドペロが呟く。


「…確かにね。十年は前だっけ、チェディーも君達兄妹に会いに通ってたな。その時からここに住み着く下級魔族は変わんないね、ずっと怯えてる。」

尻尾を揺らしながらチェディーも呟く。


「魔王様が関わってた下級魔族……ああ!アドペロって、捨てられた双子の獣人の…妹か!聞いてた姿と違うし、戦争に巻き込まれて死んだって話だから、流石に分からなかったぜ。」


「うるさいな、便利屋ならワケアリなの分かるでしょ。」


「はいはい、成長が止まったんだろ?知ってるよ…じゃあ、育ての親ってのは、アレか。」


「アレって言わないでよ、魔王のこと。」

チェディーはふくれっ面をしてシュナを睨む。


「いやそっちじゃなくて…有名なほうだよ、ほら、一族が滅びた人魚の末裔…。おっと、続きは飯を食ってからだな。」


シュナは隠れられそうな家の跡地を見つけると、そこに全員を誘導する。


…。


五人は家の跡地に座って、シュナから渡された簡易食を食べる。

チェディーは魔法で仕舞っていた水を全員に配ると、シュナが話し始めた。


「…五百年前に女神様とかいうのが現れて、脚を生やしてもらった代わりに、一族が絶えたっていう人魚の伝説。その末裔が、獣人の双子を拾って育てたって。魔王様も手伝ってたってさ。な?」

シュナはチェディーを一瞬見ると、チェディーは頷いた。


「あの女神、そんなこともしてたのか…。」

クロアケは記憶を辿りながら言った。


「…父さん、そんな過去があったんだ。教えてくれなかったな。」


「ま、その人魚は、拾った子が戦争に巻き込まれて家ごとなくなったって知って、酷く絶望したってさ。」

シュナは簡易食を頬張る。


「ボク、父さんに生きてるよって伝えなきゃ。父さんの居場所は分かる?」

アドペロはシュナの方に寄りながら問う。


「…あ〜、流石に分からん。教えてくれなかったからな。」

シュナは仰け反った。


「ていうか、兄の方は?妹が生きてるなら、兄も助かったんじゃないか?オレが知ってるのは魔界の情報だけなんだ。どうなった?」


その言葉を聞いて、全員が固まる。


「…あ。」

シュナは空気を読んだ。


「……死にました。魔術の代償で。僕の…師匠でした。」

ずっと黙っていたリュクナが、口を開く。


「失礼なことを聞いちまったな、すまん。」

シュナは謝罪し、水を飲んだ。


…。


それからは、気まずい空気のまま、食事を終わらせ、各々睡眠を取った。

アドペロは育ての父を思い浮かべながら、眠りにつく。


ハースティアの影が近づいていることに、誰も気づかなかった。

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