表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒緋色の翽  作者: 瑞ノ星
第一章
4/47

第三話:違和感

その日の夜。

クロアケとチェディーは、寝室にある狭い布団で、眠りにつこうとした。


「…やっぱり狭いね、チェディーは床で寝るよ。」

そう言って布団から出ようとするチェディーを、クロアケは止めた。


「お前が家主だろ、むしろ私が床で寝るべきだ。」

クロアケは布団から出て、冷たい床に寝そべる。そして、天井を見ながら言った。


「…こっちのほうが、慣れてる気がするんだ。」


「…そっか、まあ、三日も森で寝てたもんね〜、あはは!」


チェディーは皮肉交じりに笑う。

クロアケは冷笑で返した。


しばらくして、チェディーの寝息が聞こえた頃。


クロアケは音を殺して床から起き上がり、静かに家の中を探索した。


包丁を見つけた瞬間、胸の奥がひくりと跳ねて、クロアケはハッとした。

クロアケは自分が無意識に武器を探していたことに驚く。


そして、研ぎ澄まされたクロアケの耳は、ベッドが軋む音を捉える。


「う〜ん、クロアケ…何してるの?」


チェディーが起きてしまった。クロアケは必死に誤魔化した。


「あ、いや、ずっと寝てたから、寝付けなくてさ…。」


「そう…でも…人間はちゃんと寝ないといけないよ…おやすみ…。」


クロアケはチェディーが眠ったことを確認して、静かに家の扉を開ける。両親を探そうとして。

一歩外に踏み出したとき、外の闇の深さに恐怖した。


「ひとりの夜は、怖いな…。」


結局クロアケは、部屋に戻り、大人しく眠ることにした。


…。


翌朝。

鳥の鳴き声で目を覚ましたクロアケは、上体を起こす。ベッドにチェディーがいない。

寝ぼけ眼で家の外に出たクロアケは、家のそばにある木に登って伸びをしているチェディーを見つけた。


クロアケの姿に気づいたチェディーは、軽やかに木から身を離すと、器用にも一回転して着地してみせた。同時に、チェディーの揺れる銀髪が、陽の光を浴びて輝くのを、クロアケは何も言わずに眺めていた。


「おはよう、アケちゃん!」

チェディーはクロアケに声をかけた。


「アケちゃん…私のことを言っているのか?」

奇妙な呼び方に、クロアケは首を傾げる。


「うん。名前に黒色が入ってるのって、なんか嫌じゃない?アケちゃんのほうが、夜が明ける…って感じで、なんか縁起良さそう!だからアケちゃん!」


そう言いながらチェディーは、朝日を指差す。クロアケは指さした方を見て、眩しさを感じ、思わず目を細めた。


「…顔、洗う?」

チェディーはクロアケの顔を見つめて、何気なく言った。


「どうして?」


「…泣き跡があるし、顔が腫れてるから。」


「泣き跡…。」

クロアケは顔を触る。確かに熱を発している。


「そうだ、近くに川がある!水汲んでくるから!待ってて!」


そう言うとチェディーはすぐに家から桶を持ってきて、五分もかからず水を汲んで戻ってきた。本当に側に川があるようだ。


「ほら、洗い場に鏡もあるから!アケちゃん、何かあったら相談してね!」

そうしてクロアケは、背中を押され家の中の洗い場に案内された。


「…何もリアクションできなかったな……。」

クロアケは呆然としていた。


恐る恐る鏡に近づく。包帯を外して顔を見れば、確かに顔が腫れていた。


「怖い夢でも見たのか…はは、情けないな。何も覚えていない…。」


チェディーから受け取った水桶を使って、クロアケは顔を洗う。袖で顔を拭った後、時間をかけて包帯を巻き直す。左目は相変わらず見えない。


「怪我をしているわけじゃないけど、まぁ…包帯はあったほうがいいな。」


…。


居間に行くと、台所でチェディーが調理をしていた。魚が焦げた匂いがする。


「あ!アケちゃん、大丈夫だった?これ食べて元気だしなよ!」

チェディーはクロアケを気遣いながら、料理を差し出す。


焦がした魚を皿に乗せただけの、いかにも粗末な料理を前にして、クロアケはぎょっとした。


「…お前、今までこんなものしか食べてこなかったのか?」


「え?何か変だった?ごめん、人間の食事を作るって初めてで…。」

チェディーは申し訳なさそうな顔をした。


「まぁ、居候の私が言える立場じゃないか。明日から私が調理する。食材は私が言ったものを用意してくれないか?」


「うん!調達は任せて!馴染みの店があるんだ!」


二人は談笑しながら、焦げた魚を食べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ