表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒緋色の翽  作者: 瑞ノ星
第四章
36/47

第三十五話:魔王の有り様

クロアケはいつも通り、悪夢に魘され、目覚めが悪かった。

それでも、チェディーが隣で手を握ってくれていたのが救いだ。


「おはよう、アケちゃん!」


「…ああ、おはよう。」


時間が流れたはずなのに、魔界の空はずっと赤黒く、昼夜は分からない。それでも、起きたらおはようと挨拶をする。クロアケもチェディーも、人界での生活が染み付いていた。


クロアケが目覚めた時には、既に全員起きていた。

シュナは手のひらに収まるほどの時計を見つめ、全員に声を掛けた。


「…九つの刻だ、飯にするぞ!」


…。


シュナは乾燥した固形の簡易食をクロアケ達に分け与え、焚き火の跡を囲んで談笑する。


「よく眠れたか?」


「まあまあ。」


「二度と硬いところでは寝たくないですね。」


「そうか?私は結構眠れたぞ。」


「チェディーは普通かな〜…。」


味のない簡易食を咀嚼する。生きるために。


しかし平穏な時間はすぐに終わった。

歪な形をした魔物が、チェディーの背後から現れた。


「ッ!おい!」

シュナは驚いてチェディーに声を掛ける。


しかし、瞬きの間に、魔物は二つに裂けていた。チェディーの手には、いつの間にか大鎌が握られていたが、それも次の瞬間には消えていた。一瞬の出来事だった。


「あー、つい…癖で。あはは。」

チェディーは落とした簡易食を見つめ、誰とも目を合わせなかった。


「…アンタ、ずっと隠してきたのか?」

シュナは頬杖をつきながら問う。


「タイミングを逃し続けちゃっただけ…そろそろ言わなきゃいけないね。」

チェディーは尻尾を揺らし、翼を震わせた。


「実はさ。チェディー、魔王…なんだよね。」


短い沈黙。しかし、この場で驚く者は一人だけだった。


「そんな重要なことは、もっと早く言ってくださいよ!」

リュクナが食べかけの簡易食を握りつぶして叫んだ。


「あーあ、もったいねぇ。飯を大地に食わせてどうすんだよアンタ。」

シュナはリュクナがこぼした簡易食の残骸を眺める。


「…知ってる。ボクが生まれる前から有名だったし、ずっと強いよ。チェディーは。」

アドペロは簡易食を完食し、舌で手についた欠片を舐めていた。


「だからそんな強いんだな、凄いぞチェディー!」

クロアケはチェディーの頭を撫でる。


チェディーは全員の反応が予想外だったのか、目を丸くしていた。


「え、もっとなんか、空気が重くなるとかじゃないの?こういうのって。」

クロアケに頭を撫でられながら、呟く。


「でも、チェディーはチェディーだろ?私が初めて街角魔法店に行った帰りの会話を忘れたのか?」

クロアケはチェディーを撫でるのをやめ、頬に手を当てる。


「人間と何も変わらないじゃないか。」


チェディーは目に涙を浮かべる。

「アケちゃんのそういうとこ、本当に、つらいんだよ…。何も分かってない…。」


「いいや分かるさ、一年半も衣食住を共にしてきたんだ。最高の相棒だよ。」


「アケちゃん…。」


二人は抱き合った。チェディーの号泣だけが、静かな野営地に響く。

アドペロは空気を読んで、少し離れた。


「…いい友情じゃねぇか、なぁ坊や。」


「坊やじゃないです。リュクナです。」


「そりゃ失敬、そういや全員の名前を把握してねぇや。」


「シュナさんって、肝心な情報は覚えないんですね…なんだかご主人を思い出して、胃が痛いです…。」


「お、なんだそのご主人って!気が合いそうだな!」


「はぁ…胃が痛いです…。」


…。


そうして騒がしい食事を済ませた五人は、旅支度を整え始めた。


「ハースティアの連中に見つからないように、旧奴隷収容所を通るぞ。ちょっと前に戦争の影響で壊されて、誰も寄り付かないから、いい隠れ道なんだ。そこまでの道のりが遠いんだけどな。」


「奴隷…。」

クロアケが呟く。泣き叫ぶ幼少期の記憶が微かに過った。


「大丈夫?」

アドペロが背中を支えた。


「多分、大丈夫だ…。」

眉間にシワを寄せ、歩き出す。


「アケちゃん…。」


一番後ろを歩くチェディーの姿は、まだ秘密を隠している様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ