表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒緋色の翽  作者: 瑞ノ星
第二章
13/47

第十二話:大通り

白く輝く花の側で、クエラとクロアケ、チェディーは、地面に座って談笑していた。


クロアケの左目は、まだ痛みと熱を発している。原因不明の違和感に、クロアケは苦しんでいた。チェディーはクエラに警戒を持ちながらも、人間の子供がクロアケに危害を加えているとは考えづらく、悶々としていた。クエラはただ、白く輝く花を時々愛でて、鈴のような声で笑っている。


チェディーはふと、クエラに訪ねた。

「さっきからその白い花を見てるけど、何か知ってるの?」


クエラは答えた。

「うん、前にね、ここで女神さまに会ったの。まじゅつ?で咲いてるんだって。この花はまぞくが嫌うから、街をずっと守ってくれるんだよって言ってた!」


周囲が澄んでいて、空気が美味しい。魔族が姿を現さないのは、この花が咲いているからだとチェディーは理解した。


「そう……。」

女神様、魔術。気になることは多かったが、クエラが全てを理解しているとは思えず。疑問を口に出すことはなかった。


クエラは突然立ち上がる。

「そうだ、あたしそろそろ帰らなきゃ!おうちのひとが探してるかも!」


それを聞いてクロアケも焦る。クロアケは白く輝く花についての知識はない。いつ魔族が出るかもわからない状況で、人間の子供がうろつくのは危険だと察した。


(やっぱりこいつ、無断で家から抜け出したんだ。森で迷子となれば…両親は心配するだろう。)

「…私達が送っていくよ。家まで。」


チェディーは勝手に巻き込まれたことに驚く。

「え!チェディーもついていかなきゃ駄目?」


「お前は私が心配なんだろ?ならついてこい。」


二人の会話を聞いたクエラは微笑む。

「おねえさんたち、仲良しなんだねぇ!ねぇ、名前は?」


「クロアケ。」

「…チェディーだよ!」


クロアケとクエラは手を繋いで歩き、チェディーは少し後ろを歩く。

クエラは森に落ちている小枝を拾っては振り回し、はしゃいでいた。


「まえに来たときはね、ここにすっごい大きな鳥いたよ!」

「あっちは夜に来たとき、光るきのこがあったんだよ!」


話を聞けば聞くほど、クエラは一人で森に来た回数が多いことが二人には分かった。楽しげに話し続けるクエラを見て、クロアケはぶっきらぼうな返事を繰り返すが、歩幅はそっとクエラに合わせている。


一方チェディーは、ふと足を止めた。


(…人の匂いがする。もうすぐ街だ。)

「アケちゃん、チェディーは先に帰ってるね。そろそろ牛乳飲みたくなってきたから!」


「は?おい待て、どんな理由だよそれ!」

クロアケはクエラの手を握りながら、翼を広げて飛んでいくチェディーを見る。


「まぞくって、すごいねぇ!」

クエラは飛んでいったチェディーを見て、ただ感心していた。


…。


いつもと違う道を通ったせいか、森を抜けるとすぐ、正規の道に出た。

クロアケがチェディーと共にいつも歩いていたのは、町外れの森から伸びる細い裏道。正規の道は広く、街の入口は既に人々の活気で満ちていた。大通りに出ると、荷車が行き交い、人々が歩いていた。広場には大きな刻み時計があり、針は十二刻を刺していた。


いつも訪れていた街角の静けさとは違う。

ここは、街が生きている場所だった。


クエラの案内通りに街の奥へと進むと、突き当りに石造りの階段が続いている。階段を一段上がるごとに、音が遠のいていく。すると、整った庭と立派な屋敷が見えてきた。隣には、教会があった。


クロアケは呆れ混じりに口を開く。

「お前、こんな豪華な家の子だったのか。」


クエラはクロアケから手を離し、庭を駆けながら言う。

「うん!でも、街のそとのほうが好き!」


しばらくすると、教会の方から神父服の男が現れた。クエラは神父服の男に駆け寄り、満面の笑みで抱きついた。


「アルノーさま!ただいま!」


アルノーは柔らかい笑みを浮かべる。

「おかえり。今日も森に行ってたの?危ないからやめたほうが良いって言ったよね?」


「だって、街はつまんないもん。それに今日は、クロアケもいるよ!」

クエラはクロアケを指差し、アルノーから離れる。


「なるほど。君が…お嬢を?」


「森の中で迷っててな。」


「迷ったんじゃないよ!探検してたの!」

クエラは否定するが、アルノーから軽く手刀され、落ち込む。


アルノーはクロアケを軽く観察すると、目を細めた。

「…君、変わった気配をしてるね。魔族みたいだ。」


「え…。」


アルノーの目に、光はなかった。

その目はまるで、獲物を見つけた狩人のようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ