表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/300

俺が“無敵”だと、なぜか世界がザワつく件

どうも、焼きそばパン信者の作者です。

今回はついに──“魔王軍幹部”とのニアミスバトル回!

おっとり(でも芯は強い)ヒロイン・セリスティアが本格参戦し、物語も少しずつ広がってきました。


あとカグラ、そろそろ「無敵」のやばさに気づいてもいいんじゃないかな……?(笑)

というわけで、ゆるっと楽しんでってください。

「おい、見たか!? 昨日の《実技試験》のログ……あれマジなのかよ?」


「マジだって! 王立魔術院の記録保管庫に、ちゃんと動画もアップされてた!」


 


──王都・西地区の広場。

そこでは、朝から屋台が並び、学生や冒険者たちが騒がしくしていた。


 


「属性全ダメージが“Not Found”? あのスキル、ホントに実在するんだな……」


「運営が確認中とか言ってたけど、あんなヤツ前例ねぇぞ」


「しかも本人は“焼きそばパン”にしか興味ないらしいぞ」


 


ざわつく広場。その中心──。


「おっ、今日は特製ソースだな! 焼きそばパン最高〜!」


カグラ・シノノメ、本人はまったくもって“無風”だった。

いつものように、屋台のベンチに座ってモグモグ中。


 


「……ふう。世界が平和だと、パンもうまいな」


 


世界は全然平和じゃなかった。


 


王国の上層部は《特別監視対象・カグラ・シノノメ》の扱いを巡って会議を重ねており、

魔王軍も「スカウト失敗か……次の手を」と密かに動き出していた。


 


にもかかわらず、本人は──。


 


「お代わりしようかな。今日のパン、マジで当たり」


 


──完全に、ただの“飯テロマン”である。


 


一方その頃──


王城の会議室では、年配の魔導士たちが顔を真っ赤にしていた。


「そもそも“Ver0.01β”って何だ!? 魔法じゃないぞあれは!」

「解析不能、干渉不能、観測不能の三拍子だ! 我々の面目丸潰れだぞ!」

「絶対に“王国の管理下”に置かねば……!」


 


そんな緊迫した議論の裏で──。


 


「うおお、屋台のおばちゃん特製“激辛バージョン”来た! これ絶対うまいやつ!」


 


カグラの胃袋は、今日も元気に稼働していた──。


 

「……って、あっちじゃん。逃げろ逃げろ〜!」


 


俺とセリスティアは、わけもわからず路地裏を爆走していた。

後ろからは「確保せよーっ!」って魔術院の連中がドタバタ追ってくる。


 


「なんで逃げてんだ俺たち!?」


「決まってるでしょ! 捕まったら実験体にされるよ!? あの人たち、名前が“研究班”なんだよ!? 絶対ヤバいやつ!!」


「おい、そこ伏線じゃねーだろな!?」


 


パンくず落としながら、ぐねぐね曲がった小道を抜けた。

城下町ってマジで迷路。何度目かの角を曲がったところで──


 


「うわっ」


 


俺の足元に、光るトラップが浮かび上がる。

警戒魔法か? 一瞬、赤いルーンが光ったかと思うと──


 


《システムエラー:対象に干渉できません》


 


「……今、なにかエラー出た?」


「なんか、“干渉できません”って……え? 魔法、発動しなかった?」


「……マジで? 魔法陣すらスルーしてるって、それ完全に“魔法の存在を否定してる”ってことじゃ……?」


 


え、俺のスキル、そんなヤバかったの?

炎とか雷とか防げるって話じゃなくて、魔法そのものが俺に反応しないみたいな……?


 


「ちょっと、カグラ……」


 


セリスティアが立ち止まる。真面目な顔だ。

俺もつられて足を止めると、彼女はじっと、俺の目を見る。


 


「あなた……本当に“人間”……だよね?」


「……は?」


 


まるで、そこにいるのが“人”じゃないみたいな。

そんな空気が一瞬、俺のまわりに立ちのぼった。


 


(いやいや、俺はただの焼きそばパン好きの高校生──ってことにしてた落ちこぼれだし!?)


 


「……ごめん、なんでもない」


セリスティアは笑ってごまかす。

だけどその言葉は、どこか胸の奥に残っていた。


 


──魔法が効かない。

──魔道具も無反応。

──そして、世界そのものが“違和感”を訴えてくるような感覚。


 


もしかして、俺は──この世界にとって、異物なのか?


 


そんなこと、考える暇もないまま──


 


「発見! そっちだ!!」


「くっそ、また来やがった!! てか追跡はえぇよ!!」


「ほら、急いで! ここ抜ければ、人混みに出るから!」


 


セリスティアに引っ張られて、また走り出す。

この世界の理屈とか、俺が何者かとか、正直よくわかんない。


 


でも──ひとつ言えるのは、


「焼きそばパン、落としたのが一番つらい」


 


ってことくらいだ。


「カグラ、あそこ! 行き止まり――!?」


 


突き当たり。

逃げ込んだのは、石造りの倉庫の裏手。出口、なし。


 


「囲めーッ!!」「対象は捕獲優先、魔法障壁を張れ!」


 


うわ、来た来た。

めっちゃフル装備の騎士団と、いかにもなローブの魔導士たちがぞろぞろと路地に入ってくる。


 


「はっはーん、もう逃げられないってことか……」


「く、くるよカグラ! 魔術師たちが詠唱を――!」


 


ドゴォォォォンッ!!


 


炸裂する雷。

吹き荒れる氷結。

空間が焼けるような、魔力の奔流──


 


「……で?」


 


煙の中から出てきた俺は、ちょっと服がパチパチしてたけど、

それだけ。


 


「うん、眠い」


「え、え、え、えええええええ!? なにその反応!? いま、王国騎士団の精鋭魔導師が束になって撃ってきたんだよ!?」


 


「そっか……それは大変だね……(あくび)」


 


「……っ! まだだ、やれ!」


 


次々と飛び交う魔法。

防御魔法、拘束魔法、精神干渉まで撃ってくるが──


 


《対象に効果なし》《対象に効果なし》《対象に効果なし》


 


「やべぇ……マジで全部通らねぇ……」


「これ、ただの人間じゃない……!」


「“災厄”……いや、“神性バグ”か!?」


 


なんか変な二つ名つけられた。


 


「……でさ、そろそろ帰って寝ていい?」


「いや無理でしょ!? 捕まったらヤバいってさっき言ったでしょ!?」


 


敵の誰かが震える声で言った。


 


「……これ、下手に関わっちゃいけない存在なんじゃ……?」


 


周囲が静まる。魔法の光が止まり、騎士団の動きも凍った。


 


俺、別に何もしてないけど。

ただここに立ってるだけなんだけど──


 


「よし、逃げるぞセリスティア!」


「どの口が言ってるの!?」


 


そしてまた、追われながらの逃走劇が始まった。


でも俺は思っていた。


 


(焼きそばパン、補充したいな……)



「ようやく──見つけたぞ」


 


その声は、頭上から降ってきた。


 


見上げると、建物の屋根に立つシルエット。

漆黒のローブに、漆黒の仮面。

ただ者じゃない雰囲気を、ビンビンにまとった人物がいた。


 


「え、だれ? あれ」


「知らないんかい!?」


 


その人物はふわりと飛び降り、無音で着地した。


「我は、魔王直属の精鋭部隊《終焉の牙》の一人──ラドリウス。

 貴様が“例の逸脱者”……カグラ・シノノメか?」


 


「おお、なんか肩書きがつよそう」


「もうちょっと警戒してよ……!」


 


ラドリウスはゆっくりと歩み寄る。


「王国が騒いでいるのも道理。貴様の存在は、我らにとっても……規格外だ」


「え、そう? 俺ってそんな目立ってた?」


「むしろ存在そのものがバグだ」


 


「ちょっと待って! カグラは関係ないってさっきから──!」


 


セリスティアが前に出るが、ラドリウスは彼女に目もくれず続ける。


 


「一つ問おう。貴様の能力──“絶対無効(Ver0.01β)”は、いかなる条件で発動する?」


 


「いや俺にもよくわかんないけど、なんか……勝手に?」


 


「──つまり、無自覚のまま、世界のルールを壊しているわけか」


 


「うわ、なんか言い方怖いな……」


「当たり前だよ!? 世界のルール壊してるって言われてるんだよ!? もっと自覚して!!」


 


ラドリウスはふと空を見上げた。


「……どうやら時間がない。貴様の存在が、いずれ“神託”に触れることになるやもしれん」


「なんか意味深なこと言ったー!?」


 


そのとき──



「……じゃあ、私があんたの“保護者”になる!!」


 


「──いや、また言った!? 前にも言ったよね、それ!」


 


「う、うるさいっ! 二回目の方が……こう、重みがあるの!」


 


「重ねがけみたいなもんかよ……」


 


セリスティアがふくれっ面でカグラの前に立ちはだかり、腕を広げる。

対するラドリウスは、つまらなそうに鼻で笑った。


 


「王国の姫君とは思えぬ茶番だな。

──だが、それもいい。守りたいものがあるなら、なおさら“壊しがい”がある」


 


「やっぱ敵だわこの人!」


 


次の瞬間、ラドリウスの影が伸び、周囲の空間がざわりと揺れる。


だが──その攻撃は、セリスティアの展開した魔力障壁によって、寸前で拡散された。


「……ここは通さないよ。

私が“保護者”として、カグラを守るって決めたから──」


「いやマジで、なんでそんなにテンション高いの!?俺、屋台の焼きそばパン探してただけなんだけど!?」


 


笑いながらも、カグラはセリスティアの背中を見つめていた。


 


(……なんかすげー頼りになるな、この人)


ラドリウスの魔力が、空間を軋ませる。


セリスティアの結界がギリギリで受け止めてはいるものの、放たれる瘴気と衝撃波が、周囲の地面や壁を焼き崩していた。


「君を連れて行ければ、それでいい。魔王陛下がそう仰った。従え、カグラ」


「えーっと、無理。だって俺……」


 


カグラは屋台袋から、半分に折れた焼きそばパンを取り出した。


「まだ昼飯中だから」


「……舐めてんのか?」


「わりと本気で言ってる」


 


爆発的な魔力が放たれた。

ラドリウスの影の手が、空間を裂いてセリスティアへと伸びる。


「セリスティア!」


「大丈夫、私に任せて!」


 


彼女の髪がふわりと浮かび、周囲の空気が鮮やかな光に包まれた。

柔らかな金色の光が空間を浄化し、影の魔力を薄めていく。


──それは、王国に数人しかいない“聖域系統”の上位魔術。


「この子に手を出すなら──王国を敵に回すことになるよ」


「……なるほど。たしかに君は“姫”らしい」


 


ラドリウスは一歩下がり、帽子のつばを軽く下げた。


「今回は見逃そう。だがカグラ、いずれ“その力”が何を意味するか……知るときが来る」


 


彼の影は霧のように消え、数秒後には完全に姿を消していた。


 


「あー……行っちゃった。なんかごめんな」


「なにが?」


「俺のせいで、たぶん色々めんどくさいことに巻き込んでる」


「ううん、私は……楽しいよ」


セリスティアはふっと微笑んだ。


「カグラは“私を助けた人”。その恩返しをしてるだけ。

あとは……そうだな、“保護者”の使命?」


「なんか、照れるわ……」


 


そう言いながら、カグラは焼きそばパンをぱくりと食べた。


「──やっぱこの味が、最強なんよなあ」


 


 


──その時。


空間が、また“ゆらぎ”を見せた。


まるで目に見えない“何か”が、一瞬だけ世界の法則をひっくり返したかのような──


 


「……っ、今の、なに?」


「なんかまたバグったかも」


「この世界、壊れてない……?」


 


ふたりは顔を見合わせたまま、しばらく黙り込んだ。


読んでくれてありがとう!

第8話、いかがだったでしょうか?


セリスティアは“お姫様”だけど、カグラにとっては「馴れ馴れしい知り合い」くらいの距離感。

でもそのうち、このふたりの関係性がどんどん深くなる予定です。

あと、空間がゆらいだ“あれ”、ちゃんと伏線です。多分バグじゃない。多分。


次回は、ちょっとだけ“世界の謎”に触れていきます。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ