ポンコツ悪魔ちゃん襲来!
前回、「無敵すぎるバグスキル」がバレて世界から命を狙われ始めたカグラくん。
今回は新キャラ、ポンコツ悪魔のリリスちゃんが登場です!
おいおい敵か味方かどっちなんだよ!?ってくらい自由な子ですが、カグラにとっては“はじめての協力者”…かも?
バグ VS 世界の秩序、ちょっと(?)スケールがデカくなってきた話、ゆる〜くお楽しみください!
「──で? 呼び出したってことは、また俺、なんかやらかした?」
カグラは焼きそばパンを頬張りながら、王都騎士団の指揮官室にいた。
正面には、渋面の団長と、その後ろでふたり、やたらムキムキな騎士たちが仁王立ちしている。
「やらかしてないが、面倒が来た。……またな」
「またって何」
団長がテーブルにバンッと書類を叩きつける。
そこには《王都近郊に魔族らしき反応あり。要対処》の文字。
「いや、そういうの専門の部署があるんじゃ……?」
「お前が“どんな攻撃も効かない”ってのがバレてから、すーぐに回ってくるようになったんだよ。頼むから、黙っててくれないか」
「俺、なんも喋ってないんだけど!?てか勝手にログ解析されたんだけど!?」
「ともかく、目撃情報が出た場所は市場の南側だ。住民が“怪しいフードの少女”を目撃したらしい。何かしらの魔力反応も検出されてる」
「少女……またかよ……」
──前回、魔王軍からの“直々のお誘い”を受けたカグラは、なんやかんやでそれをうっちゃり、現在は“王都の様子見要注意人物”として監視されつつ自由に過ごしている。
そして今回は──またもや“やべー匂い”が漂ってきた。
「まぁ、ぶっちゃけ俺、そういうの慣れてきたし。
行ってくるわ〜、昼メシのついでにな!」
「おい、ちゃんと任務って自覚を……! 聞いてないなアイツ」
焼きそばパン片手に出撃するカグラ。
王都に、新たなトラブルの足音が近づいていた──。
「……あっ、いた。あれっぽいな」
市場の南側。屋台の陰から覗いていたのは、
ツノつきの少女──いや、ツノの生えたフードのポンコツである。
「おい、そこのフードの君〜。ここ、魔族立ち入り禁止エリアなんだけど〜?」
声をかけた瞬間──
「ばっ、ばれてしまった!? 人間界の警備、なめてたァァ!!」
ビクゥッと肩を震わせ、フードがずるっと脱げる。
現れたのは……可愛らしい小柄な少女だった。
ツノと羽付き。目は赤く、顔は真っ赤。
「な、なんでバレた!? フード着てたのに! ステルスレベル3なのにっ!?」
「いや普通にツノ出てるし。尻尾も出てるし」
「ギャアアア!? しまい忘れてたァァァ!!」
その場で転がるポンコツ悪魔。
(えぇ……敵が勝手にセルフ失態かましてるんだけど……)
カグラはほとんど動かず、ただツッコみを入れるばかりだった。
「えっと……一応聞くけど、君、何しに来たの?」
「うっ……わ、我は、魔王直属の、あの、その……視察官で……!」
「絶対ウソだろ。今ちょっと詰まったもんね?」
「ぐぬぬぬ! こ、今度こそ世界を滅ぼすために来たのだァ!」
「具体的には?」
「えーと……その……焼きそばパンが食べたくて……」
「おい」
カグラの焼きそばパンを見つめる悪魔少女。
そのお腹が「ぐぅぅ〜」と響いた。
「……お前、名前は?」
「……リリス。魔族四天王(候補生)……だった」
「だった?」
「落ちた……筆記で……」
「……お前マジで何しに来たんだよ」
──天然ポンコツ悪魔、リリス。
彼女との出会いが、この物語をさらなるカオスに導くことになろうとは──
まだ、誰も知らない──!!
「ふん……おぬし、何者だ? このリリス様にここまで言わせるとは……」
悪魔少女・リリスは、食い終わった焼きそばパンの袋を抱えながら言った。
口の端にはソースがついてる。
「えーっと、俺? ただの“全属性適応ゼロ”の落ちこぼれだよ〜」
「それで無効化って、設定ミスにも程があるぞ!」
「俺に言うな!」
──ひとしきりの茶番が終わったころ。
リリスはふいに真面目な顔をした。
ちょっとソースが残ってて台無しだが。
「……カグラ、おぬしに警告をしに来たのだ」
「お、急に真面目じゃん。どうしたどうした」
「このまま“絶対無効”の力を広めれば……いずれ、“あの組織”が動く」
「“あの組織”って、魔王軍じゃなくて?」
「違う。もっとやっかいな連中だ。システムの外側にいる……“修正者”」
「なんかやべえ名前出てきたな?」
リリスが言うには、
世界には“想定外の能力”を持つ存在が現れると、
それを「バグ」として消去しようとする組織があるという。
「でもさ、それなら今までもいたんじゃね? おれみたいなバグキャラ」
「いたにはいたが……全員、消されている」
(マジで言ってんの!?)
カグラの中で、かすかにやばいという警報が鳴る。
「だから言ったであろう。そなたが何もせずに“勝ってしまった”あの日から──」
「運命は、既にイカれ始めているのだ」
「こわっ」
──その瞬間、空がバチバチと音を立てた。
「なっ……もう来た!? 反応が早すぎるぞっ」
リリスが空を指さす。
見上げた先には、真っ黒な球体が浮かんでいた。
【緊急エラー:想定外スキル検出】
【対象:カグラ・シノノメ】
【修正プロトコル:開始】
「おいおい、待て待て!? さっきパン食ってただけだぞ俺!」
「説明してる時間はない! 逃げるぞ、カグラ!!」
──こうして、ポンコツ悪魔ちゃんと落ちこぼれチートの逃避行(?)が始まった。
どこへ行くかもわからないまま。
誰に狙われてるのかも不明なまま。
でも、とりあえず走れ──!
「……ってわけで、おぬし、今すぐここから離れるのだ!」
「え、無理じゃね? てかなんで俺が逃げんの? “修正者”っての、まず何なん?」
リリスが手をバシッと前に出し、宙を指差す。
「それは、世界の整合性を保つために存在する……“メタの守護者”!」
「うさんくさっ!!」
黒い球体がカクン、と不自然に首をかしげたような動きをする。
一瞬ののち、機械音が鳴り響いた。
【対象:カグラ・シノノメ ログ解析完了】
【存在パラメータ:未定義/読込エラー】
【処理:削除】
「は、は!? いきなり削除て!!」
シュバッ!!
空間がズバンと裂け、黒い光線が真下に走った。
「うおぉぉぉ!? なんか今、設定ファイル消された音しなかった!??」
「実体が“コード”として認識された時点で、存在が脆弱になる……このままでは本当に消されるぞ!」
(なにこの世界!?!?)
「うおおおおぉぉ!!」
カグラ、全力で走る。
リリスも小さな羽根でパタパタと横を飛ぶ。
その後ろから、無表情の修正者ロボが三体ほど浮遊中。
「なんでだよおおおぉぉ!! 俺、なんにもしてねぇだろおぉぉ!!」
「してるぞ! 存在自体が“エラー”なのだ!!」
「ひでえ言われよう!!」
逃げるカグラに、ビームの雨が襲いかかる。
だが──
「……全部、効かねぇんだけど……?」
「だからそれがバグだというのだ!!」
リリスが横から叫ぶ。
「カグラよ、逃げるだけではダメだ。次元歪曲炉へ向かうのだ!!」
「何そのラスボスの家みたいな名前!!」
「そこなら、おぬしの存在を書き換えることができるやもしれぬ!」
「って、なんでお前そんなこと知ってんだよ!?」
「……実は、わらわも“バグ”でな……」
カグラは一瞬止まりかけた足を再び踏み出す。
「……ポンコツだと思ってたけど、仲間じゃん!」
「余計なお世話だ!!」
そして──。
「次元歪曲炉って、どこ!? ナビとかある!?」
「この道をまっすぐ、120キロ先だ!!」
「遠っっ!!!!!」
「ハァ……ハァ……ハァ……おい、リリス! ついたか!?」
「まだあと119キロ!!」
「1キロも進んでねぇぇ!!」
真っ黒な空に、ふたたび修正者たちの影が差す。
「やれやれ……チート無効化スキルとか持ってないよな……?」
「さすがにそれはバグでも無効化できん!!」
カグラは歯を食いしばって叫ぶ。
「なんでもいいけど……これ、“学園ファンタジー”だったよな!?!?」
黒い球体がまたも言う。
【最終警告:存在異常。削除開始】
ズガァァァァン!!
空が割れ、世界のコードがむき出しになるようなエフェクトが走る。
それでも──カグラは立っていた。
「俺は……絶対に、消えねぇぞぉおおおおおお!!!!」
焼きそばパン片手に!!
──次回、第5話「やっぱり俺、バグってた」(仮)へつづく!
今回からちょっとずつ「この世界、やべぇんじゃね?」感が増してきますが、安心してください。
この作品は終始ゆるく、ノリで進みます。
次回、カグラとリリスが目指す“次元歪曲炉”とは!?
そして黒い球体はいつまで追いかけてくるのか!?
お楽しみに!