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魔王城に乗り込もう!

 一通り叫んで、心が落ち着いてから、私達はいよいよ魔王城へと乗り込んだ。ピルツェータ達は気付いたらいなくなってた。まあ、あいつらはほっといても大丈夫でしょ。

 まるで砦を思わせる、重厚なお城だった。本気で防衛戦仕掛けられたら、さすがに苦戦するかも。

 と、思っていたんだけど、魔王城には人っ子一人いないようで、城門を潜った後は全然誰にも会わないまま中庭を通り抜け、扉までたどり着いてしまった。

 何かの罠かとも思ったけど、そんな気配もない。重い扉を頑張って開け、城内に入る。

 まあ、飾りっ気も素っ気もない、ひたすら重厚なお城だ。見た感じ、一階部分は生活空間かな?ちらっと食堂は見えた。で、二階が謁見の間とかありそう。

 でも階段はやたら細くて急だし、これ本当に生活し辛そうだな。防衛にはいいんだろうけどね。でも人がいないんじゃこの構造も全く活かせないよね。

「食堂に何か食べ物あるかな?」

「い、いや、ないんじゃないかな?仮に何かあっても、魔王城でごちそうになろうとは思わないかな……」

 魔王が何を食べてるのか、ちょっと興味あるんだけどな。ま、倒した後に家探しでもいいしね。

 急な階段を上り、二階に進む。船の階段、とまではいかないけど、それに匹敵するねこれは。前世も今世も自分の足で上ったことはないけど。

 一つだけ目立っている、やたらめったら大きな扉。きっとここが、謁見の間とかそういうところだろう。ゲームならセーブポイントがあるであろう場所。

 と、私は一つ、自分の使命を思い出した。チュートリアル担当のサポート妖精なら、絶対外せない一件があるね!

「ねえ、ザイン」

「どうしたの、リィン?」

「この扉を潜ったら、もう引き返せないよ!やり残したことはないかな?」

 ザインは一瞬きょとんとして、そしてすぐに笑顔になった。

「大丈夫。リィンと一緒なら、きっと勝てるよ」

 チュートリアル妖精をナチュラルに戦力に数えるね!まあ間違ってはいないけど!

 扉に両手をつき、力を込める。ギギッ、くらいの案外小さな音を立て、巨大な扉が開いていった。

 その先は、広大な部屋だった。石造りのだだっ広い部屋で、奥の方が若干高くなっている。階段5段分くらいかな。うーん、いかにもラストバトルの会場って感じ。

 一番奥に、玉座が置いてある。そしてそこに座る、一人の虎の獣人。

 ……獣人?あれ、魔王ってもっと悪魔っぽいものかと……獣人?え、マジであれ魔王!?四天王にも悪魔とサキュバスっていたのに、まさかの獣人がラスボスなわけ!?

 私が一人で混乱してると、その獣人はゆっくりと手を叩き始めた。なんだお前は、将軍様か。

「いや、見事見事。四天王のみならず、あのキノコ頭も退けてここまでたどり着くとは。どいつもこいつも、決して弱くはなかったはずなんだがな」

「お……お前が魔王か!」

 シャベルを構え、ザインが叫ぶ。

「ああ、いかにも。俺が魔王だ」

 やっぱりこいつかぁ。いや、別にいいんだけど、ちょっと想像と違いすぎてびっくりだよ。見た目で判断しちゃいけないんだろうけど、どっちかっていうとウォルス辺りを魔王にして、こいつが四天王の方が似合うような。

「お前達は、シャベルの勇者と猛獣の妖精だな?ウォルスを倒した時点で注目はしていたが、ここまで来るとはな。正直言うと、アデラが負けたのも予想外だった」

「アデラ……?」

 誰だっけ?そんな奴いたっけな?

 二人してそんな顔をしていると、魔王は悲しげな溜め息をついた。

「サキュバスの奴だ。痴女っぽい格好をした……」

「ああ、あいつ!」

「哀れ過ぎるだろ、せめて名前ぐらい覚えてやってくれ……」

 部下を大切にするタイプの魔王なのかな。ていうか、あんまり魔王って感じしないなこの虎。なんていうか、割かしフレンドリー。

「まあとにかく、だ。お前達は初めてこの城にたどり着いた勇者だ。歓迎するぞ」

「はーい、質問質問」

「はい、そこの妖精」

 魔王は普通に私を指してきた。なんだ、ノリいいなこの魔王。

「歓迎するって言う割には、出迎えとか無かったのはなんでですかー?」

「逆で考えてみればわかると思うぞ。お前達が王城にいたとして、俺が単身乗り込んだ場合、他の奴等は逃がさないか?特に非戦闘員は」

 ごもっともすぎる。ザインも『納得した』みたいな顔してるし。

「ついでにもう一個質問ー。私が『猛獣の妖精』とかひどい呼び名なのはなんで?」

「食事の邪魔をした相手を切れ散らかして殺そうとする奴を、猛獣以外の何と表現すればいいんだ」

 ご、ごもっともすぎるっ……!これが……これが魔王かっ……!

「さ、最後にもう一個いい?歓迎してくれるって言うけど、食事したいとか言ったら用意してくれんの?」

「え……?」

 マジかこいつ、みたいな顔で見られた。なんだ、お前が言いだしたんだぞ?

「そ、そうだな……ホーンラビット焼き、ぐらいなら、何とか……」

「あ、それ僕達もよく食べてます。手軽で美味しいんですよね」

「まあ、悪くはないな。俺の好みとしては生が良いんだが、焼くのもたまには悪くない」

 本当にフレンドリーかつ変に真面目な魔王だな!『お前等を晩餐にしてやる!』くらいの台詞を期待したのに、普通に慣れない料理しようとするんじゃないよ!

 危うくホーンラビットの話で盛り上がりかけたところで、魔王は雰囲気を変えるためか、パンっと大きく手を叩いた。

「と、とにかくだ!お前達の目的は、この俺の首だろう?もちろん、タダでくれてやるわけにはいかない。欲しいなら、力尽くで取ってみるがいい!」

 多少強引だったけど、空気はしっかり変わった。私とザインも気合を入れ直し、それぞれに構えた。

 魔王が玉座から立ち上がる。

 ボッ!と音がし、目の前に魔王がいた。

「えっ……?」

 一瞬後、ザインがド派手に吹き飛ばされ、帽子をその場に残して10メートルほども転がって行った。

 なるほど、フレンドリーに振る舞えるわけだ。私達程度の相手なら、余裕で殺せるってことだね。これが、魔王の実力か。

 全身に冷や汗が流れるのを感じながら、私は何とか立ち上がったザインの隣に行き、魔王を睨み付けるのだった。

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