勇者同士の戦いに勝とう!
ザインとピルツェータの戦いは、もう終盤に差し掛かっていた。才能の差をひっくり返し、相手の動きを読み切ったザインは、一切の危なげなく相手を追い詰めていく。
「くそっ、くそぉ……!そこの、妖精さえいなければぁ……!」
ん?なぜそこで私?私何かしたっけ?
私が首を傾げていると、ザインが戦いつつ叫ぶ。
「余所見なんかしてるからだ!僕なんか余所見をしてても勝てると思ったんだろう!?」
「そこまでっ……ぐっ……相手を舐めるようなヘマはしませんよ!ただねぇザイン!貴方とは相容れない存在ですが、これだけはわかってほしい!」
一度、大きく斧を振り払って距離を取ると、ピルツェータは腹の底から叫んだ。
「女の子の妖精同士でエッチなことをしているのが見えたら!!!!さすがに見るでしょう!?!?!?」
ザインはしばらくピルツェータを睨み付け、そして油断なく答えた。
「わかる」
わかる、じゃねえんだわ。
そもそも私達そんなエッチな事した!?精々、拘束具模した氷で拘束して電撃ぶちかまして……あ、ピルツェータってドSで気の強い女の子を屈服させたい人なんだっけ。
うん、なるほど。どストライクだったのねあれ。そんなつもりは欠片も無かったんだけど。
「しかもっ!一見格下に見える妖精に良いように嬲られっ!気の強い妖精が泣きそうな顔をしてっ!必死に許しを請う姿なんてっ!見ないわけにはいかないでしょうがっ!!!」
いや、何なのこの変態……自分の性癖をそこまで声高に叫ぶ?普通……。
一方のザインは、その言葉にちょっと悩み中。悩むな少年。即否定しろ。
「ちょっとわかる」
わかるなわかるな。ザイン、ただでさえ結構エッチなんだから、これ以上変な扉を開けないで。
「けど、一つ言わせてもらうよ!リィンは格下なんかじゃない!僕なんかより……ううん、僕達なんかより、ずっと強い妖精だよ!」
ザインがシャベルを振りかざし、ピルツェータはそれを斧で受けようとした。けど、ザインの狙いはその斧。
刃の少し下、木製の柄を思い切り叩き斬る。斧の刃がゴトリと落ち、一瞬後には、ザインがシャベルをピルツェータの喉に突きつけていた。
「……終わりだよ、ピルツェータ」
「その……よう、ですね」
ピルツェータは膝をつき、がっくりと項垂れた。もはや抵抗は無意味だと悟ったようで、暴れるような気配もない。
「殺しなさい、ザイン。わたくしは、人間の敵になった男です。もう……生きている意味も、ない」
「……」
その言葉に、ザインは珍しく迷っているようだった。実際、敵として戦った以上、その強さも知ってるだろうし、殺すことも選択肢に十分入ってるんだろうね。
でもそこで、エリカが二人の間に割って入った。
「お願いです!殺さないで!確かに、ピルツェータ様は道を間違えました!でも、やり直させてください!」
「エリカ!?何を勝手に……!?」
「罰はあとで何でも受けます!喜んで受けます!むしろ罰してください!ああぁぁ、ピルツェータ様から罰していただける……!」
「……」
ザインは無の境地のような顔で、二人を見つめている。たぶん、私も同じ顔してる。
「はっ!?す、すみません!そ、その、気にしないでください!ではなく!こ、殺すなら私も一緒に殺して!ピルツェータ様がいない世界なんて、私には耐えられない!」
「ピルツェータ殺したら、何もしなくたってあんたも一緒に死ぬけど?」
「ピルツェータ様の死を一瞬でも見るなんて、死んでも嫌!だから、殺すなら私ごと貫いて!」
エリカとピルツェータを見ながら、ザインはしばらく迷っていた。そして、黙ってシャベルを下ろした。
「戦いは、僕達の勝ちだ。だったら、君達をどうするかも僕達の自由だよね」
うんうん、これでこそザインだよね。結局何だかんだ理由付けて、どんな相手でも生かしておくんだ。代わりに殺そうかな?
「な、何を甘い事をっ……!?」
「ピルツェータ。君がこれまで何をしてきたかは知らない。でも、誤ったことをしてきたなら、人生をかけて償って。死に逃げるなんて、僕は絶対に許さない」
おお、眼光がびっくりするほど鋭い。ザイン、これ結構怒ってるんだな。ピルツェータもさすがにぎょっとしたみたいで、ビクッと震えて何も言わなくなった。
「エリカ、だっけ?君も、今度こそきちんとピルツェータを支えて。間違った方へ行かないように、間違ったことをしないように。主人から与えられる快楽に溺れて肯定するだけのサポート妖精なんて、いる価値はない」
「ひっ……こ、心に銘じます……!」
き、厳しいなザイン。価値が無いって言い切ったぞ。わ、私もちょっと気を付けようかな……。
「……リィン」
「な、何かな?」
「ごめん、魔王のところ行く前に、ちょっと魔力分けてくれる?今の戦闘で、結構使っちゃって」
よ、よかった!私もなんか言われるかと思ってドキドキしたよ!でもそれぐらいならお安い御用!むしろ歓迎!
「いいよー、元はザインの魔力だしね!じゃあ、ん」
私がザインの前で目を瞑り、少し上を向くと、ザインは軽く抱き寄せて唇を重ねてきた。それなりの量の魔力を渡すと、ザインは唇を離した。
「ありがとう、リィン。それじゃあ、魔王のところへ……」
「ちょ、ちょっといいですかザイン?」
いきなりのピルツェータ。なんだ、何か言い足りない事でもあったのか?好きなシチュを叫び足りないのか?
「あの……なぜ、わざわざキスを?」
「え?だって、魔力の受け渡しってそうするんじゃ……?」
「いや、どっか触れさえすれば渡せますよ?」
「え?」
「え?」
え、何その新情報。ちょ、待って?え、マジで?え、口移し限定じゃないの?
試しに、無言のままザインと手を繋ぎ、魔力を渡そうとしてみる。うん、魔力は無事渡った。
「……ピルツェータ殺そうか?」
「ちょお!?何を言いだすんですか!?そもそも、なぜそんな勘違いをしているのかわたくしが聞きたいところですが!?」
「えっと、ガリーナが、信頼し合ってる者が、最も効率よく受け渡せるやり方って言ってたから……」
「手を握る、で十分じゃないですか?むしろ接触面積が大きい分、受け渡ししやすそうじゃないですか?」
ごもっとも。実にごもっとも。確かに、よくよく考えれば魔力ってどこからでも出せるんだから、わざわざ唇でやる必要なんて……。
私とザインは、顔を両手で覆って同時に蹲った。いやもう、恥ずかしいなんてレベルじゃないねこれ!
「私達、色ボケにしか見えないじゃんかぁぁぁ!!!」
「言われてみたらそうだよねぇ!?僕達なんで揃ってこんな勘違いをぉぉぉ!!!」
「ガリーナ!ガリーナが悪い!!今度会ったらあの縦ロールぶった切ろう!!」
「いやでも結構楽しんで……」
「それは言わないでぇぇぇ!!!」
そんな騒がしい私達を、今度はピルツェータとエリカが虚無のような目で見つめていた。
「……これに、負けたんですねえ」
「負けたのねぇ。でも、まあ、そっとしておきましょ?掛ける言葉は……ううん、掛けられる言葉はないわ」
そうして、私達はしばらくの間、魔王城の前で緊張感もへったくれもないままに、恥ずかしさのあまり叫び続けるのだった。
今回の成果=魔王に付いたピルツェータに勝利した。
ピルツェータは歴代勇者の中で、最も能力合計値が高い勇者だよ!全てが万遍なく優秀で、体力とか魔力とかに関してははっきり言ってザインの上位互換!
元々頭が良くって、そのために周囲とは話が合わなくて軋轢ばかり生んでたよ!あと髪型をからかわれることが多くて、それらのせいで人間嫌いになってたみたい!
やめりゃいいのにとは思うんだけど、本人はマッシュルームヘアが一番好きなんだって!
エリカに紹介されちゃってたけど、気の強い女の子を屈服させたいってのも、そういったところが歪みに歪んだ結果得た性癖みたい!
ちなみに、エリカは胸大きいよ!そして縛り方も胸を強調する辺り、完全な胸派!ザインとはちょっと合わないかも!
でもザイン、お尻叩き好きっぽい気配もあるんだよな……話が合う日が来ないことを私は祈るよ!!!




