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ゆっくり休もう!

「ガリーナさん、だよね?ついさっき来たところだけど……今の、すごかったね」

 ザインの言葉に、縦ロール勇者ことガリーナは得意げに胸を張った。

「まあね!あたしは選ばれた勇者なんだから、これぐらいできなきゃ!」

 動きに合わせて、縦ロールがピョンピョン踊る。ぶった切るかじゃれつくかしたくなるな。でも我慢我慢。

「だけど、一体何があったの?あんなに大量のアンデッドが襲ってくるなんて、聞いたことないよ」

「それはあたしも。けど、近くの洞窟から出てきたらしいことはわかってるわ。だから一休みしてから、そこの洞窟を調べてみるつもり」

 なんだ、こいつも結構しっかり勇者してるな。それにしても、こいつは魔法特化型か。アルディオとは正反対の勇者だね。

 ともかくも、私達は生き残った住人達を助けて回った。ガリーナは当然の如く回復魔法を使えるし、ザインも私も使えるから作業は思ったより早く終わった。

「ふう、さすがに疲れたわ。にしても、あんたも回復魔法使えたのね。初めて会った時は、まさに冴えない男って感じだったのに」

 とりあえず宿屋に入り、私達は食堂に腰を落ち着けた。主人の厚意で、ご飯込みで一泊無料にしてくれるらしい。やったね。

「あはは、今でも冴えない奴だとは思ってるよ。でも、リィンに魔法色々教えてもらったし、色々あったから、少しは強くなったかなって思うけどさ」

「うん、そこがちょっと異常っていうか……あんたんとこの妖精、何者よ?さっきも身体千切れた奴普通に治してたんだけど?あんなの、私だって苦戦するわよ?」

 勇者は勇者同士でお話。で、アルディオと違ってガリーナはサポート妖精と仲が良いから、妖精は妖精同士でお話し中。

「久しぶりだな、裸の妖精」

「呼び名ぁぁぁ!!!私には『リィン』って立派な名前があるんだからね!あんたは何だっけ?『ゼイン』だっけ?」

「お前達の名前を混ぜるな。『ゼル』だ」

「そうそう、ゼルだったゼル。で、ゼル。さっき何でサボってたの?みんな回復で忙しかったのに」

「あ、あのな……お前は自分がおかしいことを、少しは自覚しろ!サポート妖精が上級回復魔法使うとか、どう考えても普通じゃないからな!?」

「やーい、ゼルのサボり魔ー!出来ない言い訳てんこ盛りー!サポートできないサポート妖精ー!」

「はっら立つなぁ、お前っ……!」

 うん、とっても仲良くお話しできた。ゼルのこめかみに青筋が浮かんでいるのなんて些細な問題。

 できれば、このまま問題の洞窟に突撃したかったけど、ザインも私もガリーナも、魔力使い過ぎてもうフラフラ。元気なのはゼルだけだね。

 なので、一泊してから向かおうということになったんだけど、宿屋の主人が本当に、本っ当に申し訳なさそうに話しかけてきた。

「あ、あの、勇者様……助けて頂いておきながら、本当に不躾なお願いがあるのですが……その、お召し物が、かなり、その、臭いが……」

「え……そ、そんなに臭います?」

「あたしも正直、鼻ちょっとイカレ気味だから……でも、言われるからには臭いんでしょうね」

 ザインはゾンビと肉弾戦を繰り広げてたから、腐った血肉があっちこっち飛び散っちゃってて大変なことになっているみたい。私も『風刃 かまいたち』とか使ったから、ちょっと臭うかも。

 とにかく、そんなことを言われてしまっては脱がないわけにはいかない。ただ問題は、ザインも私も一張羅だということで……つまり、替えの服、無し!

 日本と違ってあんまり洗濯しないから、替えの必要性を感じなかったんだけど……これはまずい。

「えっと……すみません、何か借りられる服ってあります?」

「あ、では私の物でよろしければ」

 ひとまず、ザインは宿屋の人に服を借りて着ることになった。私は懐かしのザインのハンカチ装備。いやあ、恥ずかしいねこれ!

「あんたはその恰好の方が落ち着くわ」

「いっそ裸にでもなればどうだ?」

「やめてね!二度としないからね、あんな真似!」

 まったくどいつもこいつも!そんなに私の裸が魅力的か!金取るぞ!!!

「けどこの服、どうしよう……臭い、取れないよね?」

「石鹸とかある?私何とかしてみるよ?」

「できる?なら、お願い」

 本音を言うなら、魔力使い過ぎてあんまりやりたくないけど、ここは仕方ない。頑張ろう!

 私は洗濯物をまとめると、上級のアイスウォールを作り出し、中をくり抜いた状態にする。そこに洗濯物をぶっ込み、石鹸をバラバラ入れたら、中級のハイドロストリーム発動!

 水に押されて洗濯物は勢いよく回りだし、途中で水の放出を止めて反対回りにする。これを繰り返して、最後に水を外に捨てればあら不思議!まるで洗ったようにピッカピカ!

 要は魔力版洗濯機だね!全自動とはいかないけど、魔力さえあればどこでも洗濯ができてとっても便利!

 ただぁし!魔力消費えぐいけどな!本気でフラフラだよ!!!

「ほい、できたよー」

「……あんたさ……上級魔法と中級魔法を、生活を便利にするために使うわけ!?どんだけ贅沢なのよ!?」

 さすがに魔法使い系だけあり、ガリーナから突っ込みが入った。でもザインみたいなキレはないね。しょうがないね。

「じゃあ洗濯の仕方、教えなくてもいい?」

「いや、教えなさい。アイスウォールくり抜きとハイドロストリームはわかったけど、動きどうやってんの?」

「あ、水が程々になったら放出から操作に切り替えて、右~左~右~左~って回すだけだよ」

「ああ、操作切り替えね。結構高等だけど……なるほど、こうね。へ~、こうすれば魔力だけで洗濯が終わって便利ねえ」

 女の子だからか、洗濯魔法にはすごく興味を惹かれたみたい。まあ、洗い物多くなるもんね。

 しかし、ちょっとの説明で理解度が高いこと。しかも一瞬で真似してるし。これまたザインの能力がパッとしないって言われる理由もわかる。もっとも、ザインは応用とかが得意っていうのはあるけどね。

 これで洗濯はオッケー。臭いも何とかなったし、とにかく今日はご飯を食べて部屋で寝ることにする。あとの町の守備は衛兵さんに任せても、たぶん問題ない。

 で、だ。部屋に来たら、また一つ問題発生。

 まず、私はもう魔力使い過ぎてフラフラ。ザインもかなり来てる。洗濯はしたけど、乾かせてはいない。でも乾くまで火だの風だの出すような魔力は無くはないけど、使いたくない。

 つまり。つまりだ。


 私、ほぼ裸で寝なきゃいけないんですけどっっっ!?


「だ、大丈夫?何か端切れとか探す?紐ならあるけど……」

「やめて!?裸に紐とか痴女以外の何者でもないじゃんか!?見たいの!?見たいなら自分でやってね!?」

「あ、いや、ごめん。見たいってわけじゃ……リィンは小さいから、隠れないことはないなって思っただけで……」

「ううぅぅ……でも、しょうがないね。ちゃんと寝ないと、明日に差し支えるし……」

 仕方なく、私はベッドに上がった。しかしこのベッド、小さいな。ザインが寝るだけでいっぱいいっぱいの大きさだ。


 いやちょっと待って。ほんとにザインが寝るだけで専有面積98パーセントぐらいなんだけど!?私はどこで寝ろと!?床か!?床なのか!?それとも窓際か!?

 いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、待て、落ち着こう。ザインを床で寝かせれば……さ、さすがにそれはダメか。なんか、襲撃の影響か、この部屋隙間風が吹いてて寒いし。

 てか、ほんと寒いぞ!?服着てないせいか!いや着てるけど!いやしかしこれは服じゃないな!

 私が一人でパニクっていると、ザインが優しげな声を出した。

「リィン、悪いけど一緒に寝るんでいい?」

「ふえぇ!?い、一緒にですか!?」

「なんで丁寧語?いやだって、このベッド小さいじゃない?床で寝るのも考えたんだけど、ちょっと隙間風寒いし、本当に疲れたしさ。だったら、一緒に寝ようかなって」

 正直、それしかないのはわかってる。けど、ザインと一緒っていうか、たぶん私ザインの上で寝ることになるんだよね……裸でな!!!!

「そ、その、えと、それ、は……そう、わかってるけど、けどっ……あの、あの、私、それ、えっと、そのぉ……」

「あ、やっぱり恥ずかしいかな。まあ、ほとんど裸だもんねえ」

 わかっていただけましたか。まあわかったからってどうなるもんでもないんだけどな!

 などと思っていたら、ザインは予想の斜め上の行動を始めた。

「じゃあ、僕も上は裸になるよ。これでお揃いだね」

「うおおおぉぉぉい!?なっ、ちょっ!?いや、お揃いじゃねえんですよ!?」

 何してくれてんだこの男!?何求めてんだ!?温もりか!?癒しか!?私に求めるんじゃねえ、エロガキめっっっ!!!!

「あ、そっか。じゃあ、下も脱がなきゃ……」

「待てぇぇぇ!!いいからいいから!!下脱がないでいいから!!!もう上だけでいいから!!さっさと寝よう!!ね!?お休みなさいませ!!!!」

 こいつを放置したら、事態がどこまで悪化するか分かったもんじゃない!もう恥ずかしいとか言ってないで、寝てしまうしかない!

 仕方なく、ザインの胸の辺りにうつ伏せになる。あ、肌が触れて温かい……ザインの体温が直接……うわ、うわぁ!これ、結構やばいかも!

「大丈夫リィン?寒くない?」

「…………だい……じょぶ……」

 いや、全然大丈夫じゃないんだけどね!?うわ、私の胸めっちゃドキドキいってる!ザインに聞こえないかな!?伝わっちゃわないかな!?平気かな!?うわ、なんかすごい!

 でも、よく聞いたらザインも胸めっちゃドキドキしてる!めっちゃバクバクいってる!お揃いっていうのはこういうことだよザイン!てかザインも意識してるんだ!?わぁ、どうしよどうしよ!?めちゃくちゃ恥ずかしくなってきたぁ!!

「……おも、く……ない……?」

「ん、全然平気。大丈夫だから、寝ていいよ」

 うわああぁぁそんなこと言いたかったわけじゃないんだよぉー!でも正直になんて聞けるかぁぁぁ!どうしよう!?どうしていいか全然わかんない!!ああもう、とにかく寝るしかない!!!


 そうして、私とザインは上半身裸でお互いの温もりにめっちゃドキドキしつつ、くだらない一言二言の会話を交わしながらしばらく眠れずにいるのだった。



 今日の成果=アンデッドに襲われてた新たな町にたどり着き、縦ロール勇者ことガリーナと洞窟調査に行くことになった。

 アンデッドは種類によって脅威度が全然違うけど、実体のないレイスとかはかなり厄介な魔物だよ。あと感情が無いから、いくら傷つけたり仲間を殺したりしても全く怯まないよ。

 ゾンビに食われた人がゾンビに、なんてことはないのが救いだね。

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