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ザイン視点 浮かれポンチ、からの気付き

 天にも昇る気持ちというものがどういうものなのか、僕はやっとわかった。

 リィンの柔らかい唇の感触。頬をくすぐる吐息。それらすべてが気持ちよかった。

 当のリィンはもんのすごく恥ずかしかったみたいで、訳の分からない言葉を叫びながら布団の中で転げ回った後、失神したように眠って……いや、正しく失神していた。この子、一体何を考えたんだろうか。

 とりあえず、僕は心を落ち着けるため、部屋を出て外を散歩でもすることにした。リィンはこのまま寝かせてあげた方が良いだろうし。

 そっと部屋のドアを開け、身体を滑り込ませてから、そっと閉める。よし、音はほとんど出なかった。僕頑張った。


 さて


 うおおおぉぉぉ!!!唇めっちゃ柔らかかった!!胸も軟らかかったけど唇もめっちゃすごかった!!!ふにってした!!ふにって!!

 ほっぺでもチューすごい!!唇で触っただけなのにめっちゃすごい!!唇同士でしたい!!うわああああ想像するだけでやばい!!!

 リィン可愛かった!!!めっちゃくちゃ可愛かった!!!顔真っ赤で緊張してそれでも勢いじゃなくてちゃんとしてくれるとかすごく優しい!!!普段あれだけどめっちゃいい子!!!

 ていうか変って言われるの気にしてたんだ知らなかった!!構わず我が道行ってると思ってたけど!!でもそんなリィンが恥ずかしさでじたばたしてるのすごく可愛かった!!!

 うおおおお眠れるかこんなん!!!でもお尻触った時とかとはちょっと違うのが不思議!!!エッチな気分もない訳じゃないけど、どっちかっていうと嬉しい!!すごく変な気持ち!!


 そんな感じで頭の中ぐるぐるのまま、僕は宿屋をふらふら歩く。その途中、階段で他の冒険者の人にぶつかりかけてしまった。

「あっと、申し訳ないですー」

 正直、上の空のまま謝って、そのまま出入口に向かう。

「お、おいお前!んなふざけた態度でっ……!」

「あ、おいちょっと待てよ。そいつたぶんあれだよ、あれ」

「あれって何だよ?」

「あんなニヤニヤして、ふらふらしてっつったら、一つしかないだろ?」

「……あ~、あーあーあー、初娼館帰りなー」

「そっとしといてやろうぜ。初めての余韻にぐらい、ゆっくり浸らせてやろう」

 そんな話をしてるとは全く知らないまま、僕は夜の町へ出て行った。 

 夜風に当たっていると、少しずつ冷静さが戻ってくる。それでもまだまだ心も胸もざわざわしてるけど。

 さすがにほとんどの店は閉まってるし、民家も明かりが消えてるところがほとんどだ。衛兵さんにだけ迷惑かけないように気を付けないとね。

 それにしても、やばい、やっぱり嬉しい。顔が自然ににやけてくる。女の子にチューしてもらったなんて初めてだもんなあ。人間じゃないとか、めちゃくちゃ小さいとか、そういう違いはあるけど、女の子には違いない。

 次も何かすごいことできたら、チューしてくれるかな。次はほっぺじゃなくて別のところになるのかな。おでことかかな。それはそれで。でもいつかは唇同士で――。

 そこまで考えて、ふと気づく。

 そういえば、僕はリィンに色々ご褒美貰ってるけど、リィンは誰にもご褒美貰ってなくない?

 お仕置きはちょくちょくしてるけど、ゴブリンの群れから助けてもらった時も、シャベルを直し……強化してもらった時も、ミノタウロスとの戦いで手助けしてもらった時も。

 どれも、何かお礼されてしかるべき活躍だったはずだ。なのに、リィンは僕が口でお礼を言っただけで、何にもしてあげてない。

 ずぅんと、一気に心が重くなった。

 僕は馬鹿だ。リィンが何かしてくれるのは当たり前で、僕が何かできた時にリィンが褒めてくれて、ご褒美くれるのだって当たり前だと思ってた。

 だけど、そうじゃない。そんなわけがない。リィンは僕なんかよりずっとずっと頑張ってて、ずっとずっと活躍してる。

 そんなリィンが何にも報われないなんて、そんなことあっていいはずがない。

 まあ、リクエストに応えてお肉食べたりとか、魚食べたりとか、そういうことはしてるけど。何かこう、もうちょっと僕がしてもらったことのような……。

 となると、リィンにチューするか?

 僕が?

 リィンに?

 ……やばいな!出来る気がしない!正直、最初にリィンが出来なかった時『それぐらい頑張ってよぉぉぉ!!!』とか思ってたけど、やる方大変だこれ!

 想像するだけでやばいし無理!いや、これでしてくれたってリィンすごいな!?ちょっと尊敬するぐらいだよ!いや魔法術とかその辺は本気で尊敬してるけど!

 でも……もし、僕がしたとして、リィンは喜んでくれるかな?そこが一番の問題。

 仮に、僕がチューをして、リィン実は嫌がってて、その場で泣かれたりしたら……う、うわぁ、考えるだけで最悪な気分……絶対凹む。

 いや、でもきっと大丈夫。さっきうっかり口が滑った時、少なくとも嫌そうではなかった!だからきっと、嫌がられるまではいってないはず!

 なら、決まりだ。いつか、リィンが何か僕にしてくれた時に、今度は僕がリィンにチューをしてあげよう。

 そう決めると、心も既に落ち着いていたため、僕は宿屋へと戻ることにした。

 出入口を潜ると、近くのテーブルで酒盛りをしていた冒険者の人達が、妙に優しげな笑顔で挨拶をしてくれた。何だかわかんないけど、気の良い人が多いのはいいよね。

 リィンは相変わらず失神中。そんなリィンを潰さないように横に避けてから、僕も布団を被って眠りにつくのだった。


 ちなみに、リィンにチューしてもらうのを夢にも見た。きっと随分ニヤニヤした寝顔だったことだろう。

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