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魔法を鍛えよう!

 おはよう、良い朝だね!なんか起きたら上半身裸だったけど!

 ザインに聞いてみたら『月光浴したいから脱がせてって言われた』とのことだったけど、そんなこと言ったっけな?でも言いそうではある。実際、だいぶ月光浴できたみたいで、魔力はほぼ戻ってるし。

 それにしても、胸にハンカチ置いて隠してくれるとか、ザインは紳士的だなあ!この年代の男子だったら、好き放題見たりとか触ったりとかしそうなもんなのにね!

 そんな紳士と、今日も今日とて旅に出る。町から町へ。魔王の住処を目指してゴーゴー。

 道中、当然のように魔物に襲われるけど、今日のザインは絶好調。シャベルもだいぶ使いやすいみたいで、斬ったり突いたり叩いたりと、色んなやり方で虐殺を試している。一応、結論としては相変わらず掘るのが最強らしい。

「これ、もう武器だよね完全に。坑夫の人とかに売れるんじゃない?」

「さあさあ皆さんお立合い!私がこちらに取り出したるは、その名もなんとバトルシャベル!これさえあれば鉱山の、魔物も壁も等しく掘れる!お値段たったの銀貨10枚!買わなきゃ損だよ持ってけドロボー!って感じで売ってくる?」

「この一瞬でそこまで売り文句が出る辺りは素直に尊敬するよ」

 ガマの油売りとか、ちょっと好きだったからね!コツさえ掴めば勝手に口が回ってくれるもんだよ!勇者には必要ないと思うけど!

 すっかりシャベルの勇者になったザインだけど、実はザインの力はそれだけに留まらない。この子、結構色々と試しているようで、毎回少しずつ新しい技を披露してくれる。

「悪しき者に負けぬ力を!死神の鎌に抗う力を!風の如き速さを!筋力、守備力、速力強化!」

 まだまだ簡易詠唱付きながら、強化魔法まで使えるようになっている。うーん、本当に、本っ当に器用。誰だ、能力がパッとしないとか言ってた奴は。

 ほんのちょっと前まで、ゴブリン相手にMOBトレインしてたとは思えないような成長度合い。今は近接戦闘もできるし、攻撃魔法も使うし、補助魔法も回復魔法も使う、まさにオールラウンダーになっている。

 もっとも、私から魔法を習っているせいか、若干魔法寄りの戦い方ではあるけど、それでもシャベル術も結構なものだ。ザインはきっと、このまま剣とか槍とか使わないまま行くんだろうな。薙刀系ならギリ使えそうだけど、使う理由もないしね。

 何にしろ、おかげで私も結構安心して見ていられる。最初の頃は、マジでちょっと目を離したら死にかねない不安定さがあったけど、最近は……特に悪魔と戦って以降は、ものすごく安定した戦いをするようになった。きっと自信もついたんだろうなあ。

 で、そうなると私は暇になるかっていうと、案外そうでもない。

「それでさ、中級魔法とかってどうやったら使える?」

「ん、初級と基本は一緒だよ!ただ、もっと魔力をうわーっと使うイメージにして、実際うわーっと使って、規模を大きくすればいいだけ!」

 この知識欲の塊は、ちょっとでも時間ができると私に魔法の使い方を聞いてくる。私はザイン専用家庭教師として……いや、ここ家庭じゃないな。なんだ?野外教師?野生の教師?まあ教師だ。

「既存の魔法で言えば、アイス系統がやりやすいかな!アイスニードル、アロー、ランス、ハープーンと規模が大きくなってくだけだから、わかりやすいし使いやすいと思うよ!」

「そっか、それじゃあそれで練習してみて、やれそうなら他の属性で練習すればいいんだね」

「魔力枯渇には気を付けてね!」

 初級から中級、中級から上級と、ほんとに倍々ゲームで魔力消費が増えるから、初級の感覚で練習するとやらかすんだよね。

 ザインは早速アイスアローの練習を始め、僅か10回程度の練習で使えるようになっていた。さすがザイン、器用さは頭抜けてるね。

「アイスアロー!アイスアロー!アイス……うっ、ふらって来た……!」

「やめ時だね!もう15回ぐらい使ってるから、初級魔法なら30回以上使ったのと同じ感じだよ!」

「話には聞いてたけど、本当に魔力消費すごいね。となると、上級なら7回くらいしか使えないのか……」

「慣れないうちは魔力消費にも無駄があるから、下手すると5回くらいだね!慣れると無駄は減るから、意外と使えたりするよ!」

 ザインは大人しく練習をやめ、普通に歩きだした。前にぶっ倒れてるからね、しっかり失敗から学ぶ男だね。

「それにしてもさ、リィンは月光浴で魔力回復するんだよね?」

「そうだよー。あとは食事でもいけるよ」

「僕の場合は、月光浴で回復できるの?それとも、何か他のやり方が必要なのかな?」

 なるほどなるほど、同じ回復手段が使えないかってことね。お前は自分が妖精のつもりか?早くも40年間童貞を貫いたつもりか?

「人間の場合は、とにかく休息だねー。体力と同じで、寝るのが一番だけど、使わなければじわじわ回復するし、食事してもそれなりには回復できるよ」

「うーん、月光浴は関係ないのかぁ」

「関係ないねー。妖精の中でもね、月光浴で回復できる種類……種類なのかな?まあとにかくそれと、日光浴で回復できるっていうのもいるし、森の中にいると回復っていうのもいたはずだよ」

 私が言うと、ザインは不思議そうに首を傾げた。

「リィンなんか、森林浴で回復できそうな見た目だけどね?」

「あはは、緑が多いからねー。でも、これはただの色の違いで、どんな妖精かっていうのは関係ないんだ。滅茶苦茶大雑把に分けると、光の妖精、闇の妖精、木の……有機物の妖精、無機物の妖精って感じ!」

「となると、リィンは闇の妖精なのか……」

 ザインは私の頭から爪先までじっくりと眺めて、一つ頷いた。

「なるほどね」

「ちょっと待ってなんで納得してるの?」

 私そんなに闇っぽい要素ある!?無いと思うんだけど!?どの辺で納得されたのか納得いかない!

「まあいいじゃない。それで、無機物とか有機物っていうのは?」

 出ました、知識欲ザイン!知らない単語があるとすぐに質問してくるな!ググレカス!でもググれないから仕方ないな!

「んっとね、大雑把に言えば生き物が有機物で、それ以外は無機物だね!木の妖精とか花の妖精は有機物の妖精で、土の妖精とか石の妖精は無機物の妖精ってこと!」

「魚の妖精とかいたら、それも有機物の妖精で合ってる?」

「合ってるよ!今のところ聞いたことないけど!そういえば植物の妖精は見たことあるけど、動物系は見たことないなあ」

 猫の妖精とか、さぞかしあざとい感じなんだろうなあ。猫で妖精だから……ん、なんか聞いたことあるような……?

 神ペディアにアクセスし、情報を探る。妖精妖精……あ、なるほど。猫ならケットシーがそれか!あと犬ならカーシーだかクーシーだかっていうのもいるみたい。

「……調べたら、猫と犬は普通にいるね。ただ、見た目が猫とか犬そのものになってるね」

「いるんだ。サポート妖精がそういう妖精の勇者もいるのかなあ?」

「前に集まった50人の中にはいなかったね。歴代勇者の中でも、なかなかいないんじゃないかなあ」

 ザインは忘れてるっぽいけど、サポート妖精は性的対象に出来る相手ってことだから、つまりそんな人いたら、それはつまり犬とか猫が対象なわけで……いや、いないとは言わないけどね?ただちょっとレベルが高すぎるんじゃなかろうか。

 いやでもなあ、実際そういう人は知ってるし……歴代に一人二人はいたかもなあ。でも少なくとも、魚はいなかったんじゃなかろうかと思う。そこまでいったら、もうレベル高いとかそういう問題じゃない気がする。

「まあ、見つけたら教えてあげるね!」

「うん、楽しみにしてるよ」

 そんな話をしながら、私達は今日も歩く。そして今度は小さな村に辿り着き、宿屋でゆっくりと休むのだった。


 今日の成果=ザインが中級魔法を使えるようになり、ついでに妖精の種類を学んだ。

 神ペディアによると、魚はいないけどイルカの妖精を連れた勇者はいたらしい。あと馬の妖精という勇者もいたみたい。

 ちなみにイルカは雌、馬は雄だったらしいよ……人間の業の深さには驚かされるばかりだね!!!!

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