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第37話 夜の街と静かな決意

お待たせしました!

無事に年度始めの激務を乗り切りました!

また読んでいただけると嬉しいですので、よろしくお願いします。

 建国祭の熱気は夜も続いていた。

 あちこちの屋台ではまだ人々が列を成しており、笑い声や笛の音が夜空に溶けていく。

 その一角――石造りの落ち着いた酒場に、鷹也、リリア、フィーネの三人が腰を落ち着けていた。


「お疲れさま、タカヤ」

 そう言ってフィーネが持ち上げたのは、金色の果実酒。琥珀色の液体が灯りに揺れる。


「まさか、本当に勝っちゃうなんて……!」


 リリアはまだ興奮が抜けきらない様子で、手にしたラシア果のジュースを飲みながら鷹也を見つめた。


「ま、当然でしょ? 私の目に狂いはないの」


 フィーネが笑いながら言うと、鷹也は苦笑して肩をすくめた。


「まあ……初戦だからな。運が良かっただけかもな」


「謙遜もほどほどにね」


 フィーネはからかうように鷹也を小突いた。


 そのとき、隣のテーブルにいた客の一人がこちらに顔を向ける。


「おい、兄ちゃん。お前、今日の料理大会に出てた奴だろ? あの料理、うまそうだったぞ!」


「見てたのか」


 鷹也が驚くと、男は笑いながらグラスを掲げた。


「当たり前だ。お前みたいな若ぇ奴が、あんな料理を作るとはな。……次も楽しみにしてるぜ!」


「ありがとう」


 鷹也は素直に礼を言い、再びグラスを手に取った。

 あの炭火の香りと、発酵魚の複雑な風味。自分にできる最善を尽くした料理だった。

 だが、それでも――鷹也は満足していなかった。


(……もっと、やれるはずだ)


 その時、入口の扉が静かに開いた。

 ゆっくりと中に入ってきたのは、ローナだった。


 しわの刻まれた頬に、落ち着いた眼差し。昼間のコックコートとは違った姿が、どこか神聖にも見える。


 ローナは無言のままカウンターで酒を頼み、一口飲んだあと、ふと鷹也の席に目をやった。


「……良い料理だった」


 それだけをぽつりと告げて、彼は鷹也に視線を向ける。


「は……ありがとうございます!」


 鷹也がすぐに頭を下げると、ローナは軽く手を振った。


「頭を上げてくれ。礼を言うのはこちらの方だ。

長く料理をやってきたが、今日は……少し昔を思い出した。自分が変わらなくても、料理は前に進む。お前を見て、そんな気がしたよ」


 その言葉を最後に、ローナは再びグラスを傾け、席を立った。


「明日は観客として見させてもらうぞ」


背中越しのその言葉に、鷹也は深く息を吸った。


――――――――――――――――――――――


 夜も更け、鷹也とリリアは祭りの灯りの中へと歩き出していた。

 屋台からは甘い果実菓子の香りや、香草の匂いが漂い、通りはまだ笑い声で賑やかだ。


「ねえ、あれ見て! あの小さいドラゴンのおもちゃ、可愛い〜」


 リリアが屋台を指さしてはしゃぐ。


 鷹也は隣で微笑みながらも、少しだけ静かに空を見上げていた。


「……明日は、ミーナか。簡単な相手じゃない」


「でも、タカヤなら大丈夫だよ」


 リリアは隣に並んで歩きながら、鷹也を見上げた。


「今日だって、みんな驚いてたもん。あんな美味しそうな料理、私だって食べたかったな」


「はは……今度作ってやるよ」


 一瞬だけ微笑んで、鷹也は再び夜空を見た。


 高く澄んだ空に、いくつもの星が瞬いていた。


「明日は……俺の実力が試される日だ」


「ん?」


「今の自分で、どこまで理想に近づけるか。楽しみでもあり、怖くもあるな」


 リリアは優しく笑った。


「タカヤなら、大丈夫だよ」


 彼女のその一言が、ふわりと夜風に乗って、鷹也の胸に染み込んでいく。

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