(引っ越し)6
子豚が、豚足を離して真司に命じた。
『脳内でステータスと念じろ』
言われた通りに念じた。
すると脳内でチンチロリンと音が鳴り響いた。
綺麗な文字列が出現した。
ステータス。
名前、鈴木真司。
種族、人族。
性別、雄。
年齢、・・・。
状態、・・・。
職業、・・・。
HP、∞。
MP、∞。
スキル。
ユニークスキル、【第三の目超級】。
称号、【勇者(身体強化、体術、剣術、盾術、全属性魔法)】。
加護、【御使いの加護(天変地異)】。
こっ、これは。
子豚が教えてくれた。
『【第三の目】を授けた。
だから脳内で文字が見える』
ほうほう。
であるからして噂に聞く異世界転生、
それとも異世界転移なのか。
『飲み込みは早いようだが、違うな。
お前は地球の輪廻転生に戻す』
えっ、地球に勇者が必要なのか。
魔王でも生まれるのか。
『勇者として地球を救ってもらう』
はて、・・・。
『人が増えすぎた。
このままでは百億に達してしまう』
確かに。
それが勇者とどういう関係が。
『昨今の合言葉、プラゴミ減らせは正解ではない。
その前に人減らせ、理解できるか.
・・・。
減らすんは
プラゴミやない
人やんか
血で地を洗う
ガイアの夜明け』
子豚が詠みやがった。
子豚が。
『口が悪いな。
ゴキブリにしてやろうか』
ごめんなさい。
勘弁して下さい。
『地球の資源は無限ではない。
限りがあるのだ。
ところが人口はこのままでは百億に達する。
ようく考えてみろ。
限りある資源でその百億を養えるか。
人とは欲深いものだ。
皆が皆、先進国と同じ生活レベルを欲する。
その先もな。
そうなると足りるか、養えるか。
・・・。
だから勇者の出番だ』
勇者は魔王を倒すのがお仕事だったはず。
その勇者がどうして・・・。
『先代は大洪水で人を減らした。
先々代は大氷河で人を減らした』
歴史教科書に、地球規模の大洪水や大氷河が載っていた。
あれが勇者のお仕事だったなんて。
大量虐殺って、ブラック過ぎるだろう。
『気に病む必要はない。
鳥や豚の殺処分と同じだ。
隕石を降らした勇者もいたし、疫病を流行らせた勇者もいた。
中でも素晴らしかったのは地軸を傾けた勇者だ。
極地の氷河を融かして大陸を丸ごと沈めた。
それでも人は絶滅しなかった。
だから安心して勇者しろ』
人は絶滅しないのか。
でもそれで安心しろと言われても。
『人類のリセットだ』
やり直しか。
スッと腑に落ちた。
でも嫌だ。
私はゲームのヒーローではない。
勇者は魅力だが、殺処分に加担したくない。
例えそれが正しくてもだ。
当事者にはなりたくない。
それに、それにだ、この子豚は何者・・・。
今更だが、疑問が湧いた。
御使いと称しているようだが、神の、それとも悪魔の。
『人には寿命がある。
生まれた先には死がある。
死が約束されている。
死なぬ者も、滅せぬ物も存在しない。
だから何の遠慮も要らない。
それにだ、勇者の手に掛かった者の魂魄は天にも地にも、
欠片すら戻らない。
その魂魄は残った人類の益とされる。
上位互換で地下資源になる。
石油になる、石炭になる、ガスになる。
鉱物にもなる。
余れば消滅した絶滅種の復活に回される』
上位互換・・・。
それにしてもよく喋る子豚だな。
『面白味のない奴だな。
詰まらん、チェンジを要求するとしよう。
あっ、その前に称号と加護を取り消す』
子豚がより小さな豚足を真司の額に当てた。
その瞬間、激しい痛みに襲われた。
真司は気を失った。
ジョニーは目を覚ました。
暗い中にいた。
ここは・・・。
寝かされていた。
ベッドに。
ああそうか、倒れのか。
思い出した。
お師匠様の強制終了を喰らった。
船に乗っていた筈なの、揺れが感じ取れない。
首を左右に動かした。
足下に重みを感じた。
《サーチ》で視た。
専属メイドのソフィアが突っ伏していた。
看病で疲れたのだろう。
無理に起こさず、ジョニーは目を閉じた。
思い出したばかりの前々世の記憶を辿った。




