(転生しました)6
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とても感謝しております。
ジョニーは悩んだ。
母や父、執事夫妻を含めた四人の様子がおかしいのだ。
生まれた弟のトムが原因なのだろうか。
それとも別に何かあるのだろうか。
はて。
ジョニーはまだ六才児。
尋ねても子供が相手では取り合ってくれないだろう。
そこで屋敷内の噂を収集した。
ところが、結果は完敗。
使用人達は四人の様子に気付いても、あえて尋ねようとはしない。
分限を超える者がいないのだ。
さて、どうしたものか。
六才になって散歩の範囲も広がった。
居住する区画に隣接する街だけでなく、
少し先まで足を延ばす事を許された。
普通の平民の居住街、商工街。
そう、母に許された。
ただし、母の工房は不許可だった。
「子供は駄目よ」とあっさり切り捨てられた。
ジョニーは甘えた。
「おかあさま、おねがい」必殺、上目遣い。
「もう・・・、この子は。
駄目と言ったら駄目なの。
聞き分けなさい、いいわねジョニー」
領都、ジブチの南はランバート大樹海に接していた。
大樹海は、魔物の巣窟とも表現される地。
様々な魔物が蠢いていた。
それが時として北上を企てた。
所謂、魔物の大暴走、スタンピート。
それを阻止する為に建てられたのがジブチ。
高い外壁と深い水堀で魔物の大群を跳ね返した。
辺境伯家の騎士団も機を見て出撃し、撃退した。
それでも完全な勝利とはならず、追い返すのが精々。
勇猛果敢な騎士団でも入るのを躊躇う大樹海。
懸命にも深入りを避けた。
普通の平民の居住区は外壁に沿っていた。
その高い外壁が一部解放されていた。
勿論、予約制で有料。
世知辛いが、無料だと有象無象で外壁が溢れるからだ。
外壁へ上がる階段が目の前にあった。
階段下には衛士の詰め所。
仮父がジョニーとソフィアに言う。
「ここでちょっと待っててくれ」
アレックスは無造作に衛士の詰め所に入った。
そして直ぐに出て来た。
「さあ上に行くぞ」
予約はしてない筈だが。
ソフィアも同じ思いらしい。
首を傾げた。
アレックスは二人に親指を立ててサムズアップ。
「ソフィア、ジョニーが転げないように手を引いて」
ソフィアは余計なことは聞かない。
頷いてジョニーと手を繋いだ。
アレックスに続いて階段を上がった。
「ジョニーは初めてだが、ソフィアはどうだ」
「私も初めてです」
ジョニーにとって10メートルの高さの階段は初めてだった。
ソフィアも同じだったらしい。
ジョニーに向かってぼやいた。
「断頭台に通じそうな階段よね」
前を行くアレックスが振り返った。
「ソフィアはいつ断頭台に上ったんだ。
首を斬られたようには見えんが」
「言葉の綾ですよ、綾。
嫌ですねお父さんは、ねえジョニー」
「だよね、あや、あや。
で、ねえさん、だんとうだいにはいつあがるの」
繋いでいた手に爪が喰い込んだ。
ソフィアが良い笑顔でジョニーを振り向いた。
「何か言った、弟のジョニー君」
「いいえなにも」
外壁の上は通路になっていた。
そこには、チラホラと見物客がいた。
熱心に外を見ていた。
当然、見張りの衛士達もいた。
彼等は交代で外を監視していた。
通路には魔道具の【魔導砲】もあった。
小回りを利かせられるように、二輪台車に載せられていた。
ジョニーは矢狭間から大樹海を覗いた。
大樹海を隠すように濃い靄が辺りがかかっていた。
その靄から、高い木々の梢が突き出て、存在を誇示していた。
よく目を凝らすと、飛ぶ鳥達が見えた。
靄を自在に出入りし、飛び遊んでいた。
外壁の高さと幅は10×5。
水堀の深さと幅は5×10。
並みの魔物は水堀で溺れる。
外壁に辿り着いた強者も、大半は外壁の高さに屈してしまう。
それでも一部は侵入を果たした。
唯一の例外は飛ぶ魔物。
外壁も水堀も関係ない。
楽々空から領都に侵入した。
これに対抗したのが練度の高い衛士団。
剛弓で落とし、槍で仕留めた。
それで街中に被害が出るのは仕方のないことだった。
それも、もうかつての話。
今は違う。
対抗手段ができた。
魔道具の【魔導砲】だ。
対空兵器の出現で、飛ぶ魔物を屠るのが容易になった。
大樹海は西に大河、シンシンコ川が流れて、
その方面の出入りは遮られていた。
西へ出られない魔物達は自然、北を目指した。
そこがジブチ。
ジブチで遮られると迂回路を選択するのは当然の理。
ジブチの東の草原、セレンゲへ向かった。
そのセレンゲで迎え撃つのが辺境伯家の騎士団。
馬の種から枝分かれした魔物、ダイナホースに騎乗しての出撃。
当然、力技だけではない。
緻密な戦略に基づいた迎撃戦。
幸いにもこれまで負け知らず。
しかし、騎士団も衛士団も深追いはしない。
大樹海には一歩も踏み込まない。
そうアレックスが説明してくれた。
ジョニーは外壁から水堀を見下ろした。
「それでも、このたかさをのぼってくる、まものがいるんだね」
「それはいるとも。
猿系の魔物は巧みに上がって来る。
それに泳ぐのも上手い」
魔物には無意識で身体強化スキルを起動する類がいるそうだ。
猿系の魔物もそう。
どういう仕組みか解き明かされていないが、外壁を上って来るそうで、
大きな脅威となっていた。
ジョニーは東を見ながら尋ねた。
「ここからそうげんは、みられないんだね」
「こちら以外は解放されていないんだ」
「そうなんだ、ざんねん」
見物客の会話が聞こえて来た。
「東の辺境伯家も大変だな」
我が国には東西南北に四つの辺境伯家があった。
このアミン辺境伯家は、西の辺境伯家と呼ばれた。
「隣国の軍が侵犯して来た話か」
「そうそう、国境線を間違っての侵犯じゃないそうだ」




