(転生しました)4
ジョーニーは《サーチ》を起動し、父、イリアのステータスを視た。
名前、イリア。
種族、人族。
年齢、四十四才。
家族、ニコール、ジョニー、リリー。
生国、ダイキン王国。
職業、暗殺者、娼館の館長。
HP、155。
MP、175。
スキル、身体強化特級、短剣術上級、治癒魔法中級、風魔法初級。
ジョニーは迷った。
どこから突っ込んでいいのか。
まずは職業、暗殺者にして娼館の館長。
二つ目にHP155、MP175。
三つ目がスキル、身体強化特級、短剣術上級、治癒魔法中級、
風魔法初級。
配列からすると先に暗殺者、それから娼館の館長。
つまり暗殺者が娼館の館長に成り上がったということ。
暗殺者・・・、娼館の館長・・・。
当人には尋ねられないので、当分保留にした。
HPとMPの数値にしても、スキル数にしても。
一般市民の数値やスキルを知らないので比べようがない。
が、視ただけでうちの父は異常だと分かった。
お師匠様に《並列処理》で学んだことによれば、
怪物クラスではないのか。
幸い近くに母、ニコールがいた。
続けて《サーチ》。
父と比較する為に視比べた。
名前、ニコール。
種族、人族。
年齢、二十八才。
家族、イリア、ジョニー、リリー。
生国、ダイキン王国。
職業、商会の会長。
HP、120。
MP、155。
スキル、水魔法特級、付与魔法上級、火魔法中級、土魔法初級。
母も大概だった。
比較対象にはならないと思う。
にしても、商会の会長って・・・。
あっ、あれか。
我が屋敷には大勢が出入りする部屋があった。
あれが商会関連の部屋なのだろう。
色々と疑問があるのだが、お師匠様からのお告げはない。
そこでジョニーはあえて念話で尋ねた。
『お師匠様、教えてくれないのですか』
『スキル使用は程々にしろ。
身体の生育に支障をきたすぞ。
幼児体形でいいのなら構わないがな』
それで念話が途切れた。
気儘というか、我儘というか、酷過ぎる。
お師匠様に頼ってはいられない。
侍女、違う、自助だ。
ジョニーは使用人達や出入りする者達の噂話にも耳を傾け、
足りない知識を埋めていった。。
この地を治めているのはアミン辺境伯。
その辺境伯は隣接するランバート大樹海の魔物を適切に間引きして、
スタンピードの発生を防いでいた。
それだけではない。
平民である農商工業者を手厚く保護していた。
その手腕は誰もが高く評価するところ。
お陰でジョニー達が居住する領都、ジブチは大いに栄えていた。
噂を漏れ聞いたところ、母はお貴族様の縁者であるらしい。
その母が経営するのは商会はラブラス工房。
魔道具を専門に扱っているのだそうだ。
父の娼館は、領都沿いを流れる大河を廻船だと、僅か一日の距離。
川なので距離は計り知れないが、遠いということだけは分かった。
河口の港湾都市、ジオラールにその娼館があると聞いた。
そして合間合間に擦れ違う者達のステータスも覗き視た。
直接ではなく、踵から土を介し、微細な糸のような魔力を操った。
時には空中の水分をも介して、遊び視た。
勿論、身体の生育を妨げないように細心の注意を払った。
で、結論として、両親のステータスは皆を超えていた。
今のところ、両親を超える存在を視たことはない。
もっとも、この屋敷限定だが。
そんなジョニーに朗報。
母はまずソフィアに告げた。
「ソフィア、明日からはジョニーを連れて街中の散歩をなさい」
それにソフィアは驚いた。
「宜しいのですか。
ジョニー様はまだ五才ですよ」」
「宜しいもなにも。
こんなに元気なんですものね。
屋敷の中はもう飽きたでしょう。
ねえジョニー、貴方はどう思うの」
嬉しいに決まってる。
「ありがとう、おかあさま。
ソフィア、あしたからよろしくおねがい」
そんな訳で、その日は外出着を選ぶことになった。
選ぶと言っても、そこは母。
すでに用意していた。
屋敷の中で着る衣服と少し毛色が変わっていた。
地味なのだ。
母曰く、「ジョニー、目立たないような服装にしたの。
目立って誘拐されたら困るでしょう」とのこと。
誘拐はよくあるらしい。
怖いわ。
屋敷の中では手触りの良い服装が基準であったように思う。
今、目の前にあるのは、手触りがゴワゴワした物。
ソフィア曰く、「まるで下町の子供のように見えます。
これなら目立ちませんね」と笑顔でのたまう。
確かに。
ごわごわでこの柔肌が傷付かぬように頼んますよ、ねえ神様。
服装だけではなかった。
護衛が付けられた。
彼は大柄で、貫禄があった。
うちの警備員で、見知りの一人だ。
「ジョニー様、本日からよろしくお願いします」
「こちらこそだよ」
彼の名前はアレックス。
警備隊の副隊長であった。
そのアレックスが街中散歩のルールを決めた。
「私達はこのお屋敷の使用人です。
警備員家族です。
私が父親役で、ソフィアは娘役、ジョニー様は下の弟役。
この役柄で参りましょう」
「アレックスおとうさん、ソフィアおねえさん、さんぽにいこう」
これに顔を綻ばせたのは二人だけではなかった。
見守っていた執事夫妻、居合わせた面々もだ。
ただ一人、母のみは複雑そうな表情をしていた。
ジョニーが仮とはいえ、他人と家族になったことで原因であろう。
だからって、二人のお給金を減らさないでよね、ねえお母様。




