(転生しました)3
シュッシュッシュッ、と疾走のつもりが、トットットとは悲しい。
オットット、小さな傾斜でばたついた。
そのまま後ろにこけた。
三者三様の声が聞こえた。
「キャー」メイド、ソフィア。
「ジョニー」母、ニコール。
「あっ、あ~あ」侍女、アマリア。
ジョニーはこけた勢いを利用して後ろ回り。
おおおおおっ。
再び、トットット。
またもや、小さな傾斜でばたついた。
オットット、後ろへこけた。
こけた勢いを利用して、後ろ回り、二転、三転。
思わず笑いが漏れた。
「きゃっきゃっきゃ」
追い付いたソフィアの手が伸びてきた。
「ジョニー様、危ないですよ」
ジョニーはそれを掻い潜った。
疾走のつもりで、トットット。
三度の傾斜で、オットット。
意識して後ろ回り、二転、三転、面白い。
身体を反転させて、前回り、これも二転、三転。
四転しようとしたところをソフィアに捕まった。
抱き上げられた。
「痛くはありませんか」
「いや、おろして、ごろごろしたい」
「ゴミを払いますね」
ソフィアがジョニーの衣服に付いたゴミを払った。
パタパタ、パタパタ。
綺麗になったところ、母の手が伸びてきた。
ソフィアからジョニーを受け取った。
「ジョニー、みんな心配したのよ。
どこか痛くはないの」
「ないよ、おろして」
アマリアの感心したような声。
「昔のお嬢様のようですわね」
母が異議を唱えた。
「私はここまでではなかったわよ」
「いいえ、お屋敷のお庭で似たようなことを為さっておられました」
えっ、お屋敷。
母が、お屋敷で何を。
ジョニーは疑問を飲み込んだ。
「おかあさま、おろして。
あそびたい、はしりたい」
アマリアが母からジョニーを受け取った。
抱き上げて、高い高い。
そして言い聞かせた。
「ジョニー様、遊ばれるのは構いませんが、
小石がないかどうか注意なさいませ。
怪我されると皆が悲しみますわよ」
笑顔で芝生にリリースしてくれた。
「アマリア、ありがとう」
皆が見守る中、芝生を駆け回った。
そして手ごろな傾斜を見つけては前回り、後ろ回り。
身体を横にして、コロコロ、ゴロゴロ、コロコロ、ゴロゴロ。
三才児らしさを発揮をしながら、先程の疑問を深堀した。
母はお嬢様と呼ばれ、お屋敷で暮らしていた、らしい。
それは、この屋敷なのだろうか、それとも別のお屋敷なのか。
疑問なのだが、それは当分放置することにした。
しかし、母や執事夫妻の言動からして平民とは思えない。
それに、この屋敷の執事夫妻を含めた古株らしき者達は、
父を旦那様とか、それに類する敬称では決して呼ばない。
常に、「イリア様」。
敬う感じがない。
よそよそしい。
若いメイド達は別だ。
「旦那様」。
ジョニーが居る時は、「お父様」。
この違いは何なのだろう。
もしや、父と母は通い婚。
にしてもこの屋敷はおかしい。
表門、広い前庭、石畳の馬車道、そして本邸。
それで全てではない。
本邸の後ろには幾つもの建物があった。
家族持ちの寮が五棟。
独身者用の男子寮、女子寮。
作業棟二つ、倉庫三棟。
厩舎、馬車用の屋根付き駐車場。
門衛を含めた警備員の事務棟と食堂。
これで平民とは、おかしいだろう。
もし本当に平民だとしたら、臍でお茶が沸かせる。
火傷したくないから沸かさないが。
五才の時、父に抱き上げられた。
「ジョニー、ますます大きくなったな」
頬擦りしてきた。
即座にソフィアが悲鳴を上げた。
「きゃー、旦那様、お止め下さい。
いつも申しているでしょう。
旦那様の髭でジョニー様の頬が削れてしまいます、と」
父は意識して髭を伸ばしてはいない。
ただの無精髭。
十日ほどは剃らないそうだ。
それでも硬質なのか、痛いのだ。
何度も泣かされた。
今日も。
「いたいよ、おとうさま」
その時、脳内で音がした。
ピロロ~ン、ピロロ~ン。
続いて声がした。
「封印を解きます。
【始祖龍の加護】の使用が可能になりました」
お師匠様に告げられた。
さらに追加があった。
「《念話》を取得しました。
【始祖龍の加護】の下に置きます」
ジョニーは真っ先に《並列処理》を起動し、ステータスオープン。
父の相手をしつつ、じっくりとステータスを視た。
名前、ジョニー。
種族、人族。
年齢、五才。
家族、ニコール、イリア、リリー。
生国、ダイキン王国。
職業、なし。
HP、∞。
MP、∞。
スキル、なし。
ユニークスキル、なし。
加護、【始祖龍の加護】。
《サーチ》、《飛翔》、《電撃》、《転移》、《並列処理》、《召喚》、《念話》。
詳細に視たいが、まずは父の職業だろう。
お師匠様に念話で注意された。
『慎重にな』
『了解』
直接相手に魔力を向ける愚は犯さない。
足裏から床を通して相手の足裏にタッチ。
父のステータスを覗き視た。
『ええー』
思わず驚かされた。




