その輝きを愛した
[拝啓、愛した貴方様へ]
生まれた時から悪役だった。
正義の味方なんて生ぬるい世界で生きている奴に斬りかかられる。
何でだろう。
生まれた場所がちがうだけで、食べる物が違うだけで、少し見た目が違うだけで……私は悪役、貴方は正義。
恋をすることなんて許されない。
あの真っ直ぐな瞳が私の心に突き刺さる。
海を切り出したかのような瞳。
この感情は心にしまっておくのが正解で、決して表には出してはいけない。
心の奥深くに閉まっていた恋心。
水に沈ませていた恋心。
音を立て上がってくる恋心。
正義と悪が一緒になれることはない。
この世界が変わらない限りは……決して成り立つ事はない恋。
貴方をどれだけ愛しても、誰よりも愛しても、私は報われる事はない。
悪役は辛いけれど、なくてはならない物。
正義は悪役がいるから成り立つ物。
影は光があるから生まれる。
貴方の正義に必要な存在。
ならば全力で演じてみせよう。
貴方に花を持たせるために。
全力で演じてみせよう。
私が世界一の悪役を。
貴方のその瞳に影が落ちぬように。
その輝きを私が、私達が消さぬように。
愛した貴方が消えぬように。
いつか貴方に花束を渡せる日を楽しみに。
読んでくださりありがとうございます。
これで『その輝きを愛した』は終了とさせて頂きます。
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