表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら没落貴族だったので、【呪言】を極めて家族を救います  作者: メソポ・たみあ
第4章 偽物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/55

第52話 霊幻道士VSエルフ教師①


《クーデルカ・リリヤーノ視点(Side)


「このっ――逃がしませんよ!」


 私はグレガーの後を追って、バルコニーから外へと飛び出します。


 そして上空へと飛び上がり、屋敷の屋根へと着地。


 グレガーも薄気味悪いくらい身軽な足取りで、トンッと屋根の上に立った。


「やれやれ、しつこいですなぁ。男に執着する女は嫌われますよ?」


「嫌われて結構。私は私にとって魅力ある人以外に好かれる気はありませんから」


「ほう。魅力ある人というのは――例えばあの【呪言使い】とか?」


 微笑を浮べて聞いてくるグレガー。


 ……本っ当に気に入りませんねぇ。

 この人をおちょくるような態度といい発言といい……。


「……そうですね、リッドは魅力的な少年――いえ、魅力的で立派な〝貴族〟です。成長すれば、きっと偉大な人物になれるでしょう」


「ふぅむ……本当にそうですかな?」


 クスクスと笑うグレガー。


 そんな彼の笑い声に、私の神経は少しずつ逆撫でされていきます。


「ああ、そうだそうだ。こんな言葉をご存知ですかねぇ――〝昔神童・今畜生〟」


 ――ピキッ


「崇高な志を持てば持つほど、いずれ手段と目的が、権益と倫理が逆転する。聖人君主はいとも簡単に道を踏み外し、ゴミクズ(・・・・)となる……。いつかは彼も――」


「黙りなさい」


 カツンッ!と私は杖尻で屋根を叩く。


「リッドは、あの子はそんな風になったりしません。私は彼を信じます」


 ああ――割と久しぶりかもしれませんね、この感覚。


 私、今かなり怒ってます。


 こういう感情に晒された時のことを、人間はこんな風に表現するんでしたっけ?


 〝(はらわた)が煮えくり返る〟って。


零点(・・)です。人様の大事な教え子を言い腐すなんて、零点も零点。不愉快です、最悪です、反吐が出ます」


 そう言って杖を構え直し――切っ先をグレガーへと向ける。


「貴方のような下衆は、徹底的に教育し直して差し上げます。覚悟なさい」


「ククク……それはそれは、楽しそうだ」


「容赦なんてする気はありませんから――口が利ける内に、もう一度だけ聞いておいてあげます。貴方の目的はなんですか?」


「……」


 私が尋ねると、彼は口の両端を吊り上げたまま沈黙する。


「グレガー、貴方〝霊幻道士(シャーマン)〟の術を使っていますよね。『グラスヘイム王国』の中でそんな特殊な魔術を扱える人物なんて、そうそういるモノじゃありません」


「……流石は【呪言使い】の教育係、〝霊幻道士(シャーマン)〟のことをご存知とは」


「素直に『魔術協会』へ登録すれば、一定以上の地位や名声は容易に手に入るはず。それなのに、ボリヴィオ伯爵のくだらない野望に加担した意味がわからない」


「……聞きたいですか? どうして彼に協力したのか」


「ええ、できれば」


「それは――――教えません♪」


 プツンッ


 そんな音が頭の中で木霊する。


 グレガーの舐め切った発言を聞いた瞬間、私の堪忍袋の緒はプッツリと切れた。


「へ……へぇ……そうですか……。では――とっととやられて(・・・・)ください!」


 人を舐めるのも大概にしろ!

 と私は激怒し、杖をグレガーへと向ける。


「魔力を意思ある風に、その身に刃をまとう旋風となりて、我が呼び声に応えたまえ――出でよ〔ピクシー〕!」


 詠唱、そして同時に羽の生えた小さな妖精〔ピクシー〕が現れる。


「ほう――召喚術ですか」


「〔ピクシー〕! 殺さない程度に痛めつけてあげて!」


『♪』


 風をまとい、ヒラリと舞いながらグレガーへ向かっていく〔ピクシー〕。


 ――なにを企んでいるのかを吐かせるためには、死なせちゃいけませんよね。


 だから適度に痛めつけて捕縛しないと。


 でも――この男は危険だ。

 私の予想が正しければ、かなり厄介な魔術師のはず。


 おまけに【呪物】まであるワケですからね。


 長丁場になればなるほど、こちらが不利になる可能性は濃厚。


 だから、速攻でカタを付けます――!


「……テレジア、【〝出ろ〟】」


 グレガーが呟く。


 すると――〔ピクシー〕が彼へと接近した瞬間、指輪の宝石から〝呪詛〟が飛び出る。


 それは腕の形となって、〔ピクシー〕を弾き飛ばした。


『……!』


「! 〔ピクシー〕!?」


 風の妖精たる〔ピクシー〕の速さ(・・)が見切られた……!?

 そんな……!


 私が驚きで目を見開いたのも束の間――続けて、指輪からズルリと紫色の影が這い出くる。


『……ウフ……フ……』


 ――【呪霊】。


 恐るべき〝呪詛〟の塊。

 禍々しき怨嗟が具現化した存在。


 それもこの膨大な魔力――間違いない、特級だ。


「如何ですか、私の醜く可愛いペット(・・・)は? 実におぞましい姿をした化物(バケモノ)でしょう?」


「……なるほど、それが〝霊幻道士(シャーマン)〟の術というワケですね」


「まさしく! これこそ【呪霊】を完全に支配して操る、極東の秘術! こんな化物(バケモノ)を意のままに操れるなんて、素敵だとは思いませんか!?」


 アハハハハ!と高笑いを上げるグレガー。


 ええ……本当に悪趣味な魔術ですね。


 ……いざこうして【呪霊】と立ち会うと、私でも冷や汗が出ますよ。


 本当に凄まじいプレッシャーです。

 恐ろしい、なんてモノじゃない。


 けれど……リッドは三年前にこれほどの脅威と相対し、そして自分一人の力で乗り越えて見せた。


 ならば師匠として、先生として、臆して退くワケにはいきません。


「今からこの【呪霊】に貴女を襲わせます。精々抗ってくださいね」


「……いいでしょう。ならばこちらも、とっておき(・・・・・)を出させてもらいます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『転生したら没落貴族だったので、【呪言】を極めて家族を救います』✨️
『転生したら没落貴族だったので、【呪言】を極めて家族を救います』1巻書影
ご予約は こちらから!
― 新着の感想 ―
『聖人君主』と言う言葉は存在しません。 『聖人君子』です。 お気を付け下さい。 他のお話は更新しておられるのにこちらはこのままなんでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ