第20話 僕たちも一緒に
「ゲオルク殿、なにか忘れておいででは?」
「な、なにかって……?」
「こ・こ・に! 超有能なエルフ魔術教師と、特級の魔法使いが、いるじゃありませんか!」
「! まさか――!」
「遠慮はいりませんから。どうぞ私たちもお連れ下さい」
「クーちゃん先生……!」
「フフ、どうせ貴方も同じ考えなんじゃありませんか、リッド?」
彼女は僕にウインクして見せる。
そんなの――当然じゃないか。
僕だって父の役に立ちたい。
フォレストエンド領の役に立ちたい。
僕はゲオルク・スプリングフィールドの息子なんだから。
僕は――リッド・スプリングフィールドなんだから!
「――うん! 僕も一緒に行く!」
「なっ……! リッド、なにを言って――!」
「ゲオルク殿、彼はもうほとんど〝呪言〟の扱いを心得ていますよ」
「なに……?」
「必ず戦力になるはずです。信じてあげてください」
あまりにも自信と信頼に満ちた目。
彼女はそんなにも僕のことを……。
「私がちゃんとリッドの傍におりますから。ご安心を」
「む……う……」
「というか、特級モンスター相手にゲオルク殿たちだけでどう戦うんです? なにか策はあるんですか?」
「それは……」
「あるんですか?」
「わ、わかった! 降参だ!」
根負けした父は両手を上げ、「はぁ~」と大きく息を吐いた。
「リッドは俺の宝だ。もし俺が死んだりしても、息子だけは必ず連れ帰ってくれ。いいな?」
「わかりました。お約束します」
「……いいだろう。二人も討伐隊に加わってもらう。よろしく頼むぞ」
「! やったぁ!」
僕は喜びのあまり、思わず椅子の上でピョンと跳ねる。
初めて父の、この領地の役に立てる!
初めて【呪言使い】としての能力を発揮できる瞬間が来たんだ!
それは僕にとって、喜び以外の何者でもなかった。
「こらリッド、遊びに行くんじゃないんだぞ?」
「わかってるよ! でも、父様のお役に立てるのが嬉しいんだ!」
「まあ、リッドったら……」
喜びを露わにする僕の姿に、なんだか緊張が解れた様子の父と母。
しかしクーデルカだけは少し違った。
「こーら、喜ぶのは早過ぎますよ」
「ふみゅっ」
彼女は僕の頭をポスンと手で押さえてくる。
「相手はあくまで特級モンスター、しかも【呪霊】なんですからね。それに封印石を壊した犯人も潜んでいるかもしれないんですから」
「油断大敵です」と言って、彼女は僕から手を離す。
ああ、そうだった。
封印石を壊した犯人も捕まえなきゃなんだよな。
でも――誰が、一体なんの目的でやったんだろう?





