3:A.パーティーの危機だから
登場人物が多いと、個性が被らないようにするのが大変だけど面白い。
「・・・バ、バイオレットさんは大丈夫なんですか?!」
「ああ。今は気絶しちまってるけど、命に別状はないと思うぜ」
タイガーとの戦闘を全員が生き残ることができたパーティーだったが、その代償は決して小さくはなかった。
「僕のせいだ・・・」
ミツルギの顔が青ざめる。
「ミツルギくんは悪くないですよ。だって、ミツルギくんがワイルドタイガーの挟み撃ちに気づかなかったら、もっと危険だったと思うよ」
「違う!僕のせいだ!!」
メリッサが優しい声で心配するも、彼はそれを大きな声で振り払う。
「・・・」
「僕がもっとしっかりしていれば、バイオレットに怖い思いをさせずに済んだんだ・・・」
「おい、ミツルギ」
「?」
「歯ァくいしばれ!!」
クレアがミツルギの顔面に向かって全力の頭突きをする。
ゴッ!、という鈍い音が響く。
「「痛ってぇ~?!」」
ミツルギは衝撃で尻もちをついてしまう。
そして、お互いに頭を痛める。そんな光景を見ていた星水は、
(クレア・・・バイオレットを背負った状態でよく頭突きできるな。器用なのかな?)
と、マイペースなことを思っていた。
「なんでもかんでも自分の責任にしようとすんじゃねえ!」
「! 違う、僕はパーティーのリーダーだ!みんなを守る義務がある!」
「・・・たしかに、ミツルギはパーティーのリーダーで、アタシ達に指示もだす」
「なら・・・!」
「でもな、お前の指示にOKしたのは自分だ。自分の責任で決めたことだ。それが原因で死んじまったとしても「それは仕方のないことだ」って、割り切る覚悟でオレはこのパーティーにいる」
クレアの目には「覚悟」があった。
それは、いつ死んでもおかしくない人生を、悔いのないように生きるための彼女なりの信念だった。
「・・・」
クレアの強い決意の眼差しと真剣な声で、ミツルギは言葉が出なくなる。
「それにバイオレットも・・・・・・いや、バイオレットは死ねない理由があるって言ってたけどよ。少なくとも今回のことで、ミツルギに責任があるなんて思ってねえよ。多分な♪」
にッ!と白い歯を見せながら、クレアは何事もなかったかのような、いつもの陽気な笑顔に戻った。
「そうですよ~、1人だけで頑張ろうとしないで、もっとみんなと一緒に頑張ろう?」
メリッサも、いつもと変わらない優しい雰囲気で話す。
「なあ、別に俺はミツルギが責任を感じてることを悪いと思わないし、みんなだって思ってるはずだ。責任を感じてるってことは、それだけ真面目だってことだと思うから」
「星水・・・」
「なら、その真面目さを自分を責めるために使うんじゃなくて、反省して次に活かすように考えることに使ったほうがいい」
「・・・うん、そうだね」
「むしろ、俺みたいに責任を感じない人間になると、毎日の寝坊が当たり前になるほどのダメ人間になるからな!アハハ!」
「・・・アハハ、それもそうかもね」
思いつめていたミツルギの表情は暗いままだったが、先ほどよりも柔らかくなっていた。
そして彼は尻もちをついていた状態から立ち上がる。物理的にも、精神的にも。
「で、でしたら!ギルドに戻って反省会をしましょう!」
「お、いいなそれ!オレも作戦とか連携の見直しときたいぜ!」
♢ ♢ ♢
ここで「ダンジョン」についての軽い説明だ。
ダンジョンに入れる場所は1つしかない。
ゆえに入口でもあり出口でもある「扉」には国の正式な警備員がおり、ダンジョンから出てくるパーティーが採取した資源やクリスタルを、規定以上の量を採取してないかの検査をしている。
なぜか?それはダンジョンのルールに関係がある。
"国が規定した「量」までしか採取してはいけない"
ちなみにダンジョン内でのルールはこれだけで、後は自由である。
「なあ、クレア」
「ん?珍しいな、そっちから話しかけてくるなんて」
ダンジョン1層の木々が生い茂っている「ジャングル地帯」の帰路を歩いてる最中、星水がクレアに話しかける。
「ミツルギを立ち直らせてくれて、ありがとう。おかげで助かった」
「お、おう。まあ、仲間だから当然だろ。っていうか、なんで星水が感謝するんだよ?」
「そりゃバイオレットが戦闘不能になって、ただでさえ戦力が落ちたのに、ミツルギまで戦えない状態で襲われたらヤバイだろ」
「あ、たしかに」
もうすぐ家に帰れる。
この命がけの探索から解放される安心感から、他愛のない話をしてしまう。
「みんな、とまって・・・!」
だが、その空気はミツルギの低い声で一掃される。
「どうしたの?」
「分からない・・・でも、なんだか嫌な予感がするんだ」
幸か不幸か、仲間が危険な目にあったというトラウマのせいで、ミツルギの危機察知能力は限界まで引き上げられていた。
「へっ!バレちまったぜグレ兄さん!」
「おい、なにやってんだレグ!まだ向こうは疑ってる段階だっただろうが」
木の影から2人の大男が現れる。
「あれ、もしかしてフラグ立てちゃった俺の責任?」
星水は少しだけ冷や汗が出てきた。
この先、少しグロ展開があるので注意です。
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