2:A.今はパーティーを組んでるから
恋愛小説なのか、冒険小説なのか・・・
ダンジョンの第1層、通称『ジャングル地帯』。
そこは大きな木がたくさん生えている場所で、なんだか自然が元気いっぱい、って感じです。
そういえば、ご主人様は以前この場所のことを
”なんか南米のアマゾンみたいだな・・・・・海外、行ったことないけど”
と言ってたけど、アマゾンって聞いたことのない国のような?
「ふう、規定されてる量まで、あと少しだね」
「ああ。みんなも別に大きな怪我とかしてないし、今日はギリギリまで探索していいと思う」
「だね」
パーティーの行動指針は基本的に、ご主人様とミツルギさんで決めています。
どうやら方針が決まったみたいです。
「星水さん、このまま探索するんですか?」
「ああ。エルは、このまま探索しても大丈夫そうか?」
「はい、バッチリですよ!・・・ご主人様♪」
エルミーヤは星水の耳へ本人以外には聞こえないように、こっそりと耳うちをした。
「バ・・・!だ、誰にも聞こえてない・・・・・な」
「えへへ、なんかドキドキしますね」
「か、かんべんしてくれませんか・・・・・」
そう。私は、ご主人様と2人きりでない時は「星水さん」と呼ぶように言われているのです。
どうしてなのかと、前に聞いてみたのですが、
”恥ずかしいからだけど!?”
「むう、そんなに恥ずかしいことなんですか?」
”そうだよ?!てか俺って、そんな風に呼ばれる資格ないからね!”
「そんなことありません!ご主人様は立派な人です!!」
”あ、ありがとう・・・・・じゃなくて!いや、嬉しいけどね?!いや、もう、2人きりの時は俺のことを何て呼んでもいいです!でも周りに人がいる時は勘弁してくれませんか!!”
フフ、あの時のご主人様、子供みたいに分かりやすく慌てて可愛かったな。
それに、2人きりの時だけってのも、それはそれでロマンチックな感じで私はいいんですけどね。
♢ ♢ ♢
第1層『ジャングル地帯』。
ここは国の人から「探索者が振るいにかけられる場所」と言われている。
「!、みんな、静かに。ワイルドタイガーがいる」
ジャングルを探索するミツルギ達の前方に、1頭のトラがいる。
「やるのか、ミツルギ」
「うん。星水は周囲を警戒して」
「了解」
「バイオレットとクレアは、タイガーの背後に回って」
「任せて」
「おう!」
「メリッサとエルは、そのまま僕の後ろで援護を」
「は~い」
「わ、分かりました・・・!」
ジャングル地帯は巨大な木が密集している地形が特徴だ。
そのためモンスターは単体、もしくは2~3体で活動していることが多い。
そのため、パーティーは木に隠れながら奇襲をすれば戦闘を優位に進めることができる。
なので、初心者のパーティーは、この1層で活動するのが基本的であるとされている。
だが、慢心してはいけない。こちらが奇襲しやすいということは・・・・・
(?、バイオレットとクレアの場所にだけ、木の葉が落ちてきている・・・まさか!)「2人とも、上だ!!」
ミツルギが大声で叫んだことで、タイガーの背後にまわっていた2人は上からの殺気に気がつくことができた。
「グルルアァアアア!」
地上にいるタイガーとは別の個体が、木の上にある太い枝から2人に向かって飛び降りて奇襲攻撃をしかけてきた。
「くっ!もう1体?!」
「へへっ!こいつは面白くなってきたじゃねえか!」
なんとか奇襲攻撃を避けた2人は、そのまま戦闘に入る。
「フッ!」
クレアが自分の武器である槍で突く。
「ガウっ!」
「くそっ!デカイ図体のくせに避けるのかよ?!」
「グルルアッ!」
「おっと!」
タイガーがカウンターをするが、これをなんとか避ける。
「おりゃあああ!」
「ガウっ?!」
攻撃の隙を見逃さずなかったバイオレットのハンマーが、タイガーの脇腹に打撃を与えた。
「そこだっ!」
「グルッ!?」
ダメージを受け、体がよろけるところを見逃さなかったクレアが、追撃する。
どうやらダメージは通ってるようだ。タイガーの魔力が減っているのが分かる。
「ガアッ!!」
だがタイガーの目は折れてない。
目の前の敵に向かって、その鋭い牙でクレアに噛みついてくる。
「へっ!こっちも負けてたまるかよ!!」
「ガッ・・・!」
だが、タイガーの獰猛な殺気に怯むことなく、クレアはギリギリのところで避けて、鋭い槍の1撃をおみまいする。
タイガーの魔力は残り僅かのように見える。2人は、あと1押しで勝てると確信する。
「よし!このまま・・・」
「!、馬鹿、バイオレット!!!」
2人は『生きるか死ぬか』というギリギリの戦いをしている。
そのストレスは2人に対して、かつてないプレッシャーを与えると同時に、すさまじい集中力を発揮させていた。
だが、そのストレスから解放されるかもしれないという、気のゆるみが出てしまったのは、ある意味では当然のことである。
だが、それを野生の獣は見逃さなかった。
「ガアアアアア!!!」
「え・・・」
タイガーの鋭い牙が、一瞬だけ油断したバイオレットの腕に噛みつくことを許した。
そして、
「ウゥウウウウ!!」
「は、放しなさいよ!?」
タイガーの牙に電流が発生し、それはバイオレットの体に直接、流し込まれる。
「ウゥアアアア!!」
「え、ちょっと・・・や、やめ、」
バイオレットは魔力でガードするも、すさまじい雷の魔力に耐え切れず、そのまま皮膚に電気が流し込まれる。
「あ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?」
もう、声をまともに発することもできない。(このままコイツを喰いちぎれる!)トラは、そう思った。
「テメエ!!!」
だが、怒りに狂ったクレアの一撃がタイガーの腹を貫いた!
「グぁアアア?!」
「コイツも!くらえ!!」
完全なトドメを刺すためにクレアが魔力を練ると、その魔力は大きな鉄の塊へと変化する。
そして、その鉄はタイガーの背中の上に浮かぶと、そのまま重力によって落下。背中を押し潰す。
「グルッ・・・!・・・・・・」
タイガーは、意識を天国に送ることになった。
「ハァッ!ハアッ!・・・バイオレット?!大丈夫か!」
今度こそ戦闘に勝利したことで、クレアには強敵を倒したことによる達成感と万能感を感じたが、すぐにバイオレットの安否が気になった。
「フゥーッ・・・!フゥーッ・・・!」
結果だけを言えば、バイオレットの命には別状がなかった。
だが、彼女の腕には、ワイルドタイガーの歯が突き刺さっていた。
肉を食うための鋭利な牙は、彼女の腕を貫通し、歯先は血で染まっている。
「・・・わりい、バイオレット!抜くぞ、いいか?!」
「フゥーッ!フゥーッ!!!」
彼女の顔は苦痛で歪んでいて、とてもじゃないが話せる様子でもなかった。
だが、このままにしておくわけにもいかない。
クレアは意を決してタイガーの口を開こうとする。
「か、かってぇ・・・!?」
だが、タイガーの口は鉄の扉のように、重く、硬く、動かせなった。
おかしい、もう死んでいるはずなのに、まだワイルドタイガーは獲物を離さないようにしてるようだった。
そこにクレアは野生の執念を感じた。
「あぁあああああっっっ!!」
「ぐっ!バイオレット、落ち着け!くっそ!うおおおおお!!」
傷口をえぐられる、という今までの人生で経験しなかったような痛みがバイオレットを襲う。
彼女は叫び声をあげながら無事な方の手足を、バタバタ、と暴れさせる。
その姿にクレアは心を痛ませるが、それでも彼女はワイルドタイガーの顎を、こじ開けた。
「あっ・・・・・・」
そして、バイオレットの腕に突き刺さっていた歯は抜けた。
しかし、彼女の腕には多数の穴が空いてるのは必然であり、その穴から血が噴き出るのも必然だ。
自分の腕から見たこともないほどの大量の血が、水のようにドバドバと出てくる光景を見た彼女は正気を失い、静かに気絶する。
「バイオレット?!おい、しっかりしろ!」
クレアが回復薬を飲ませる。バイオレットの魔力は回復していく。
しかし・・・・・・それでも彼女の腕の傷の修復は遅く、血が止まらない。
「・・・」
「あー!もう!!しかたねえ!」
クレアは回復薬を自分の口に入れる。
そこに回復薬に自分の魔力を流し込むことにより、効力を増幅させることができる。
そのまま、バイオレットに口うつしをする。
まさか人生で初めてのファーストキスが女だったなんて思いもしなかった、と思いながらも、人命救助のためだと割り切った。
「ん・・・」
充分な魔力が流し込まれたバイオレットの腕の傷が、すごい速さで直っていく。
どうやら彼女の体は完全に修復できたようだ。
「ふぅ~・・・って、やべ!ミツルギ達の方にもいるじゃねえか!」
クレアはバイオレットを背中に抱え、全速力で走る。そして、その先で見たものは・・・・・・
「ハッ!」
「グラァッ?!」
華麗なサマーソルトキックで、タイガーの下顎にクリーンヒットさせたエルミーヤの姿だった。
「え・・・」
「あ、クレアさん!そっちは大丈夫でしたか?!」
「お、おお、なんとかな。てか、お前って前線で戦えたのかよ・・・?!」
「あ、はい。少しは心得があります」
なんか今回の小説を書いてみて、子供のころの、注射がものすごく怖かった時を思い出した。
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