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魔王守護者のハーレム★ちょっとまってね勇者さん☆  作者: マルポ02
魔王さまに呼ばれて
11/12

光芒の祝福

 空は厚い雲に覆われ大雨に見舞われた天気の中、わたしは勝利の余韻を味わうように大きな水溜まりをつくる路面の上でクルクルと回る。


 自分でも抑えられないほどに心が震えて体を動かさずにはいられず、抑えきれない心の叫びを発散するように体が勝手に躍りだして歓喜の様を表現する。


 降り注ぐ雨をものともしないその姿は端から見れば気狂いの類いに見えるか、雨を喜び小躍りする雨の精に見えるだろうか。

 その正体は自らの感情のままに人を呑み込み、人を殺めるに留まらず食らうことまでしてしまい人としての一線を完全に越えてしまった顔の良い女。そう、わたしこと黒兼白子くろがねしろこ


 体が空気のように透明になっていく不安感から完全に解放されたわたしは、この上ない解放感と、この体の可能性、力の拡張性に感謝して。そしてさらには自分の体を維持するためのジェネレータとなってくれた勇者さんが、自らのこのことやって来てくれたことに感謝した。


 ありがとう勇者さん。わたしの糧になるためにわざわざ来てくれて。本当に悪趣味なものまで見せられて心底苛つきはしたけれど、かえってそれがわたしの心に明かりを灯したのだ。コイツはどうなってもいい、と背中を押してもらえた気分だ。


 事実あのまま自分の体が消えることを受け入れていれば、今こうして雨のなかを踊ることも愛しい魔王さまへの想いで自らの罪悪感を押し殺すこともなかった。


 吐き気を覚えるほどのドロリとした感触の記憶が体の中に何度も流れ込んでくる。人が体の中で溶けて自分と一体になっていく、この上なく不快な感覚で身を震わす。

 わたし自らの意思と行いの結果であり、一人の命を食らった自分が背負うべき十字架である以上、この気持ちの悪さを払うには体を動かし少しでも発散するしかなかった。



「なにをしているのだ、こんな雨の中・・・」



 不意に魔王さまの声が聞こえ、雨音で近づいて来ることにさて気付かず踊っていたことが少し恥ずかしく、わたしは魔王さまに背を向けるように止まって返事を返した。



「・・・魔王さまこそ、こんな雨の中出てきたら濡れて風邪ひいてしまいますよ」


「我はいい。だが、貴様はどうしたというのだ?外に出たと思えば雨の中クルクルクルクルと。体が薄くなったと騒いでいたし気でも触れたかと思ったら、これはどういうことなんだ」



 わたしは肩越しに魔王さまを見ると、雨に全身を濡らして雨に濡れた前髪がベットリと顔に貼り付き、髪の間から覗くその表情は酷く驚いた顔をしていた。



「・・・なんでお前の中に・・・勇者が居るのだ」



 何故そんなことが分かるのかはわからなかったが、魔王さまはわたしが勇者さんを体に取り込んだことを見破っていたらしい。


 隠す理由もないものだからとわたしはいつものように、勇者さんを倒した報告を腹をさすりながらする。



「ああ・・・これのことですか。これは侵入してきた勇者さんを倒すついでに、わたしの体が魔力切れになりそうだったみたいなので、わたしの栄養になってもらうために・・・食べちゃいました」



 わたしは出来るだけ平静を保ちつつ魔王さまに話したが、かえって魔王さまは悲しそうな表情をしながら近づいて来てわたしの両肩に手を置いた。



「なぜそんなことを・・・我はたしかに、確かにいつも貴様に勇者を討てと命じていた。だが、食らうなど、そこまでしてくれなど命じてない・・・!そうだろう、違うか?」


「それは・・・・・・それだって、魔王さまが望む勇者さんを殺すことじゃないですか。手段が普段と違うだけで、なにも別に・・・」


「貴様にそこまでしてほしくはない!」



 魔王さまの目が見開きわたしの肩を揺らし、突然の大声にわたしはバクリと胸が跳ねるようだった。



「我は我の目的のために貴様を呼び出し、他者の命を奪うことを強いた。だが、貴様がするように、殺す以外の方法で勇者を負かせられれば、それに越したことはない。

 しかし、人が人を食らうようなことまでしてほしくは・・・貴様にはそんな一線、越えさせたくはなかった・・・」



 目から大粒の涙を流し、悲壮に満ちたその表情にわたしの心は強く打たれて後退りしてしまう。



「なにを・・・そんなの、あまりにも勝手じゃないですか。わたしは魔王さまに召喚されて、魔王さまのために戦って来たのに・・・どうして今さらそんなことを言うんですか!!」



 思いがけない魔王さまの反応に身動ぎしたわたしはつい強く魔王さまに反発してしまう。

 それもそのはず。彼女の言い分は我が儘だ。まるで身勝手だ。殺しを強いて食人を否定されるとは思わなんだ。



「あなたのために勇者さんを殺した!あなたのために勇者さんを隷属させた!あなたのためと思って・・・戦う怖さも、死んだことの悲しみも全部我慢した・・・。

 そうして力を使い続けて消えそうになったから、わたしは勇者さんを、食べて・・・あなたのために、これからもあなたのために戦うために!・・・あなたの隣に、居続けるために・・・わたしは・・・」


「それでも同族を食らうまでなど・・・!」


「じゃあどうしろって言うんですか!あのままだったら遅かれ早かれわたしは消えてました。やっと見付けられた居場所だったのに・・・やっと、わたしを必要としてくれる人に出会えたのに・・・!わたしに消えろって言いたいんでーーーー」


 

 わたしが口を滑らせた途端、魔王さまはわたしを抱き寄せて強く締め付けた。

 その時までわたしは気付きもしなかった。魔王さまの体も震え心臓の鼓動が高鳴って、本気でわたしのことを想い涙を流していることを。



「ーーーすまなかった・・・!気付いてやれなかった。貴様の体の異変にもっと真剣に向き合っていれば、貴様にこんな思いをさせずにすんだのにっ。

 ずっと我のことを想い尽くしてくれていたのに、我は貴様になにも返せていなかった。貴様の望んだ褒美さえ与えず、あまつさえ死に追いやって・・・我は、ああぁ・・・!」



 魔王さまの頬を流れる雫がわたしの肩も濡らす。

 雨と涙の区別さえつかないはずなのにその肩を濡らした涙はとても温かく感じ、そんな魔王さまを拒絶した自分の言葉が嫌で、そんな言葉を吐き捨ててしまおうとした自分が嫌でどうしようもなく、それを振り払おうとした言葉全てを差し置いてわたしの口からは子供のような泣き声が出てきた。


 魔王さまはわたしのことで涙を流してくれた。わたしを抱き締めてくれた。そんなことしてくれた人が久しく居なかったわたしは、この心の中から溢れる嬉しい気持ちを制御しようがなく、どうしようもくて泣き出してしまった。


 わたしのことを考えてくれていた人に酷いことを言ってしまった。キツく当たってしまった。それなのにこんなわたしを受け止めて抱き締めてくれた。こんなに幸せなことが他にあるだろうか。


 溢れ出る感情の波が収まるまで魔王さまはわたしを抱く手を離さず強く抱き寄せて、子供をあやすようにわたしの頭を優しく撫でてくれて、わたしは子供のように魔王さまの胸の中でひとしきり泣きじゃくった。




 いつのまにか雨音は遠ざかり、曇天の空を割くように青空が覗き光を差し込ませていた。


 ようやく泣き終えて落ち着いたわたしはまだ魔王さまに抱かれていた。


 今まではただ、わたしを必要としてくれた顔の良いわたし好みの女性でしかなかった魔王さまが本気でわたしを想ってくれたことを受けて、わたしは改めて魔王さまに心惹かれて愛おしい大切な人だと思いはじめた。



「・・・ごめんなさい魔王さま。わたし、ひどいこと言いました」


「なにを言う。貴様のことをもっと真剣に考えるべきだったのは我の方だ。つらいことをさせたな・・・すまない」



 まだ頭を撫でてくれる魔王さまにわたしの心はときめき、彼女に顔を合わせられない。


 そんななかで魔王さまが小さく口を開く。



「・・・貴様の中の勇者の力は強大だな。ややもするとその心を蝕み奪われるかもしれない」


「それでも、魔王さまといられるなら・・・」



 だから、と魔王さまは言葉を切った。



「そうならないように、我が貴様に焼き付ける。これは我のものだという証をな」


「へっーーーー」



 呆気にとられてわたしは間抜けな声をあげながら魔王さまの顔を見た瞬間、わたしは魔王さまに唇を奪われた。



 目の前には視界いっぱいの目を瞑る魔王さまの顔。鼻をくすぐるのは彼女の甘く心地よい香り。

 繋がった唇をこじ開けるようにして入ってくる魔王さまの舌は甘露のように甘く、わたしの舌に絡み付いてくる。

 はじめてキスというものをしたわたしは、体の力を抜いて魔王さまに身を任せた。


 息継ぎすら許さないその濃厚な大人のキスはわたしの脳をとろかし、体は熱く息も荒くなり、魔王さまが唇を離しても口のなかには余韻が残り、わたしははじめての刺激に心を囚われてしまった。



「・・・ふっ、これで改めて、貴様は我のモノだ」



 魔王さまが絡ませた舌がまだ感触を覚えてて熱を帯びる。あまりの熱さにわたしはチロリと舌を出して指先で触れた。するとなにか舌の上で熱を発するような感じがあった。


 何をしたのか魔王さまの瞳を覗き込むと、魔王さまの紅い瞳の中に写る自分の舌に光る刻印のようなものがあった。


 あれ・・・まさかこれ・・・。



「我の魔力を注ぎ込める刻印を刻んだ。これでその勇者に魂を支配されることもなかろう」



 わたしがリタやノートにしたのと同じヤツー!!!まさかわたしがされるなんて!い、嫌じゃないけれど!嫌じゃないけど、自分がされるとめちゃくちゃ恥ずかしい!!



「それと、褒美をずっと忘れていたな」



 魔王さまはわたしの顎を引いてグイッと顔を近付けて、今にも再び濃厚なキッスをしてしまいそうな距離まで近付けると、その美しい顔を微笑ませながら言うのだった。



「我の女になれ、マイハニー」



 空が祝福するように雲の切れ間から光のカーテンが差し込み、光芒がスポットライトのようにわたしと魔王さまを照らす中で彼女の言葉を受けたわたしは少し間を置き、小さく頷いて答えた。



「・・・ずっと、わたしを愛してください、マイハニー」




★終劇☆


ここまで読んでいただきありがとうございます!


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