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魔王守護者のハーレム★ちょっとまってね勇者さん☆  作者: マルポ02
魔王さまに呼ばれて
1/12

魔王の味方になったけどわたしは元気です

 はじめまして、わたしの名前は黒兼白子くろがねしろこ。花の17歳でした。

 突然ではありますが、今しがた年齢を過去形に伝えましたように、わたくし実は死んでしまいました。



 それはある日のこと。学校の帰り道をいつもの通学路通りに帰ろうとしたところ通行止めになっていまして。回り道してみればその先も、またまたその先も様々な理由で帰ることが出来ず途方に暮れていました。

 突如、空から紫色の稲妻がわたしへ一直線に降り注ぎ、直撃したわたしビリビリと感電。気付けば神様の目の前に居ました。



「おやおやお嬢さん、死んでしまうとはかわいそうに」


「はぁ、わたしは本当に死んでしまったのですか。こんな運命にした神を呪いたいです。さ、許しますから何かください」


「なんと肝の座った少女か。しかも顔がワシ好み」


「神をセクハラで訴える先Isどこ」



 わたしは死んで早々に神なるイケオジにセクハラを受けてしまいます。ああこれも全て神に愛されたこの顔面のせい。わたしは死後、このイケオジの神に手篭めにされてしまうのか。



 しかしここから急展開。神とわたしの間に割って入る第三者が現れた。

 それは稲妻のような轟雷と共に現れた漆黒の長髪をツインテールに靡かせ雪のような白い肌に鬼灯より紅い瞳を宿した超絶美少女。あっ身長ちょっと高い。

 線の細い肌を赤黒いフリフリのゴスロリに身を包みまるでお人形のよう。



「待て神よ。この女は我がスカウトした魂だ。勝手に貴様の汚れた手でふれるでない」


「これで何度目だ魔王よ。貴様は既に12回も異世界人をスカウトして全員ワシの元に送り返しているではないか。もうワシのでいいじゃん」


「良いわけあるか色魔め。女神は13度目に微笑むのよ。今度こそ我は生き残って見せるぞ」



 当の本人そうわたし。わたしを置いてけぼりに自称神と魔王のバチギスを目の前に、凡人たるわたしはただ呆ける、いいや、惚けるのみ。

 この魔王ちゃんめっちゃ可愛いぞ。というか顔が神より神。今すぐ抱きたい。



「神よ。我は今度こそ憎き勇者の侵略を耐え抜き、我の理想郷を築きあげてみせる。この女で我はヤツの野望に打ち勝ってみせるのだ!」



 拳を突き上げるとキラキラと黒い光を煌びやかに体の回りに纏わせ、それに引きずりこまれるようにわたしの視界も真っ黒に染め上げられていく。

 体の自由は一切きかない、足も着かない、どこに向いてるのかもわからない闇のなかに放り投げられたみたいで、わたしは溺れたようにバタバタと手足を振り回した。

 一瞬、何かにゴツンとぶつかる感覚と共にわたしの世界は色を取り戻した。



 クッソ趣味の悪い装飾だらけの魔王城に。





★時は進み☆






 命を失って死んだはずのわたしは今なぜか魔王城の金ピカの装飾に赤いクッション付きの椅子に座る魔王ちゃんと対面しています。

 彼女の表情はニッと笑いキメ顔。既に自分のなかで勝ちを確信しているご様子なのだが、何に対して勝ち誇っているのか、わたしはここに連れてこられて何をさせられるのかナニするのかな?



「魔王さま、わたくしめはいったい何のために連れてこられたのでしょうか」



 魔王さまはキョトンとした顔で返した。



「わかるだろう?」



 いや~~~~顔が可愛いってこと以外わかんないなぁ。



「失礼ですが魔王さま。わたしは突然死んでしまい突然自称神にセクハラされて、そして突然あなた様に拉致られたのでなぁんにもぉ・・・」


「なんと、異世界転移を知らんとな!」



 へぇ~~結構メタな感じ。突っ込んだら脱線しそうだから魔王さま説明続けちゃってください。



「良いか。我はこの世界で勇者との仁義なき戦いを繰り広げているのだ。

その勇者に対抗するため、ちょっと。ちょーーーーっと手を借りようと貴様の世界から人間を召喚しているのだ。我だけではどうにもあの勇者どもに分が悪いのでな。

だから召喚された貴様には我の手となり足となって勇者に対抗してほしいのだ」


「ふぅむ、かなり他力本願なことは理解できました。

しかし魔王さま。ひとつ問題があります」


「何だ、申してみよ」



 魔王さまのお言葉に甘えてわたしは自分の体を指差して伝えた。

 あなたがこの世界にわたしを召喚する際に、わたしに何をしたのか、わたしの体がどうなってしまったのかを。



「わたくし。死んでしまっているようです」





★時は進み☆





「ではさっそく実戦と行こうではないか!」



 あれーわたし史上最大のバッドステータス、スルーされちゃった?もしかして魔王さま、聞こえなかったのかな。



「魔王さまわたし死んでま」

「やることはシンプルだ」

「食い気味ィ!」



 もはやこの際わたしが死んでしまったことは些細な出来事。目から汗が止まらないぜぇ。



「これから攻め込んでくる勇者を足止めするのだ。貴様のやることはただそれだけだ」



 魔王さまはそう言うと玉座からわたしの背面の扉に指を指すと、ゴテゴテと骨の装飾が施された扉に魔王城まえのライブ中継映像がブゥンと写し出された。いや見えにくい!

 


 映っていたのはとても整った顔立ちの控えめに言ってもイケメンと言える金髪碧眼の勇者だった。

 彼は城に向かって何かを叫んでいるようだが映像のみが送られてきているため、残念ながら彼の宣誓は聞き届けてあげられそうにない。



 戦う前から相手の顔が見えてよけいに戦意が上がらないしめっちゃイケメンだし、これとわたし戦うってマジ?と始まる前からガン萎え。

 うーんこれならせめて顔を見ずに戦いたかったなと若干後悔。



 そこでわたしは魔王さまに聞くのだった。



「ところで魔王さまは今まで12回も負けてるみたいですけど、負けるとどうなるのですか?」



 純粋な疑問をなげかけたわたしに魔王さまは一言。



「死ぬ」



 それだけを簡潔に答えた。


 いや、そうだよな。魔王と勇者だからわかってはいたけど、そっか・・・魔王さま、今まで何度も殺されて来たのか・・・。

 何度も異世界から人を呼んで、その度に負けて・・・。



 わたしはチラリと魔王さまの顔をみる。

 その表情は真剣さのなかに、どこか言い知れぬ恐怖のような、怯えたような意思を感じずにはいられなかった。

 胸の前で組まれた腕。ツンとへの字の口。つり上がった眉の端。そのどれもが震えて見えてしまった。

 それを見た以上、わたしは引き下がれなかった。この人を守ってあげたいと、勝たせてあげたいと願ってしまった。



 願ってしまった以上、もう細かいことは全てどうでもよくて、前に進むしかなくなっていた。





★そして魔王城内の廊下☆




 唐突ではありますが、とうとう勇者とエンカウントしてしまいました。


 凛とした精悍な顔立ちに真のある真っ直ぐな瞳。わたしがただの人間ならば彼に恋していたかもしれない程キュッと胸を捕まれる程の美男子。

 スラリと伸びる手足に獅子の装飾を施した鎧で身を堅め、抜き放った剣の反射する光が怪しく光る。

 勇者は剣をわたしに向けるとこちらに交渉をしかけて動揺を誘った。



「魔王に与する少女よ。君がどんな弱みを彼奴に握られたのかはわからない。ヤツに味方するほどの何かを、それを察するに余りある。

しかしもう大丈夫だ。俺が来たからには心配ない。俺が魔王を倒し君の憂いも断とう。俺は君の味方だ!さあ、道を開けてくれ!」



 何とも心地よい言葉だろう。

 異世界に召喚され魔王と勇者の戦いに利用するために日常を奪われた転移者を、敵方であるにも関わらず優しい言葉をかけてその心に寄り添おうとする。まさに勇者の慈愛か。

わたしのことを気遣い味方までしてくれようとするなんて。

 なんて・・・なんて・・・。



「勝手に決め付けてんじゃねーよ顔だけ勇者」



 なんて気に食わないのだろう。

 こちらの心中などお構い無し。こう言ってやれば相手は聞いてくれた気になるだろうと言わんばかりの「俺きみのことわかってるんだぜ」アピール。うーん薄ら寒気さえ覚える。

 だいいちわたしが、いつ、あなたにそんなことを話した?そんなオーラを発した。

 巻き込まれてこんな事になったのは事実だが、勇者の前に立ちはだかったのは紛れもない、魔王さまの願いを叶えたいと想うわたしの選択なのだ。それを無下にされる謂れは無い。



 わたしは返す言葉と共に霊体の体のままスルリと勇者の胸の中に手を突っ込み、やがて温かい感触がするものに手を触れて、



「わたしは魔王さまの味方って決めたから。今回はあなたが死んでね。残念勇者さん」



 グッと握って勇者の心臓をヒエッ冷えにして凍結させてやった。

 これがわたしの異世界初キルである。ほめて魔王さま。





★WINNER 白子☆





 魔王さまの前に戻ったわたしを出迎えたのは、勝利に唇を震えさせて目尻に大粒の涙を溜めた魔王さま。

 玉座から立ち上がっていて、わたしの勝利を見ていてもたってもいられなかったのだろうか、足踏みまでして動揺を隠しきれていない様子。


 いったいいつ以来の勝利なのか、はたまた初の快挙となるのか。口元を押さえて喜びのあまり膝を付いて泣き出してしまった彼女にわたしは近寄り、忠誠を誓う騎士のように膝を付いた。



「魔王さま。わたし、勝ちました。あなたのために勝ってみせました。どうです?すごいでしょう」


「うむ・・・我の見込んだ貴様ならやれると信じていた。本当に・・・ほんとうに、よくやってくれた・・・!」



 ホッコリと幼子のような笑みを浮かべ、思わずこのまま食ってしまいたくなる衝動を抑えてわたしは魔王さまの手を取り、ポロポロとその宝石のような瞳からこぼれ落ちる大粒の涙を手で優しく拭き取る。

 潤んだ目はわたしをしっかりと見つめ、わたし自身もまたその瞳の虜になってしまい目を離せない。

 きっとわたしはこの少女に恋をしてしまったのだ。

 尊大で大胆不敵。それでいて触れれば崩れてしまいそうな繊細なあなた。乱暴に掻き乱してしまえばグチャグチャに元の形を忘れてワタシノカタチになってしまうだろう。

 


 でも、わたしは自分で思っているよりも不遜で、我が儘で、好きになったものを愛でずにはいられない性格のようだ。

 この手で魔王さまを愛して犯して乱して蕩かして狂い合って自分だけのモノにしたい。そんな卑下た浅ましい欲望が心の奥深くから湯水のように沸き上がっていた。



「魔王さま・・・・・・・・勝ったのでご褒美ください。ご褒美です。

無理矢理拉致っていきなり良い感じでって具合で戦わせて、それでも勝ち星を取ったんですから、わたしのおねがい何でも1つ聞くくらいできますよね?

魔王さまほどのお方ならそれくらい余裕で聞いて叶えちゃうんだろうな~?ねっ魔王」


「なあぁぁ?!雰囲気ぶち壊しにも程があろう!!

ぐぬぬ~・・・ああ分かった!分かったからその子犬のような表情はよさんか!!!

言うが良い!貴様が望むものを!何でも叶えてやるわ!!」



 魔王さまの言葉にしめしめとニタリ顔をしたわたしは魔王さまの手を引いて腰に手を回し、突然のことに虚を突かれて目を大きく見開いたその顔を覗き込むようにズイッと顔を、今にもキスしてしまいそうな距離まで近付けて魔王さまに願う。




「じゃあ、わたしの女になってくださいマイハニー」



 その日を境に、魔王城は百合の花を咲かせるのだった。



★終劇☆



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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