表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千の線  作者: 七海トモマル
73/151

学校でハヤトと別れ、

ネネはバスに乗って帰ってくる。

ぼんやり考え事もするが、

バスに揺られて、もやみたいに、わけがわからなくなった。

(お腹がすいてるのかな)

ネネは思う。

とにかく家に帰ろう。

バスの外でパトカーが走っていく。

事件だろうか。

ネネは考えずにバスに揺られた。


いつものバス停に下りて、

ネネは帰ってくる。

玄関のドアを開いて、

「ただいま」

と、ボソッと。

「あらあらおかえり」

ミハルが台所から顔を出す。

「すぐご飯になるわよ」

「わかった」

やっぱりネネはボソッと答える。

「今日はスパゲティよ」

「ミートソース?」

「ほうれん草とベーコン。あっさりしてておいしいわよ」

「へぇ」

ネネは感嘆の声を漏らす。

ミハルは、ふふんと笑った。

「ランチで食べてね、自分でも再現できないかなってね」

「そうなんだ」

「おいしいご飯を作ってもらいたいなら、おいしいところを食べさせることよ」

ミハルはにんまり笑う。

ネネは、見えないけれど、

なんとなくマモルが困った顔をしてるなと思った。

「それじゃ、鞄置いて来る」

ネネはそっと渡り靴も持っていく。

咎めはないが、不思議だとは思っているだろうなと思う。

まぁいい、言われたらそのときだとネネは思った。


二階へ上がり、自室に入ると鞄を置く。

テキストが入っていて重い。

どさっと言う音を聞くと、自分の中のものも何か放り投げた気がした。

渡り靴も部屋に置く。

そして、ネネはそっと呼びかける。

「ドライブ」

無駄箱一号の陰で、ちりりんと音がする。

ネネはそっと歩み寄る。

「ドライブ」

『はいなのです』

頭に語りかけてくる、鈴を転がすような声。

無駄箱一号の陰から、いつもの螺子ネズミが現れる。

頭に丸いアンテナが耳のかわりに。

身体はネズミで、尻尾が螺子になっている。

つぶらな瞳がネネを見ている。

「母さんが蜂蜜買ってきてくれたみたいなんだ」

『蜂蜜ですか』

「角砂糖とどっちがいい?」

『たまには蜂蜜もいいですね』

「ん、それじゃあとで持ってくるよ」

『他に変わったことはありましたか?』

ドライブが問いかける。

ネネは考える。

そして、話しだす。

「占い師かな、同じクラスの佐川タミって子」

『ふむ』

「信者が増えてるような気がして、怖かったかな」

『信者』

「うん、そんな感じがした。佐川様って」

『ふぅむ…』

ドライブは考え込む。

小さな腕を組んでいるらしい。

『人の鎧ですか』

「うん?」

『占い師は自分の身を守るため、人の鎧を作るものがいるそうです』

「ハヤトも言ってたな、そんなこと」

『自分を守る駒であり、武器であり、鎧であると聞きます』

「そうだね、人は使いようによってはなんにでもなるね」

『信仰があるならば、本当に何にでもなるでしょう』

「怖いね」

『怖いです。その占い師が何を狙っているのか…』

「わかんない。けど、テストの解答でみんなの心をつかんでた」

『ネネはテストはどうでしたか?』

「やれることやったよ。後は採点待ちだよ」

『それはよかったのです』


「ネネー」

階下で母が呼んでいる。

「いまいくー」

ネネは大声で答える。

「それじゃ、あとで蜂蜜もってくるね」

『はいなのです』

ネネはばたばたと部屋を出て階段を下りる。

台所で母が、もう一度呼ぼうかとしている。

「ごめん、テストのこと調べてた」

「あらそう、出来栄えはどうだった?」

「わかんない。けどやるだけやったよ」

「なら大丈夫よ」

ミハルは笑う。

「努力する人が報われる。そういう世界であってほしいな」

ミハルは鼻歌を歌いながら、スパゲティを盛り付ける。

「また近くじゃないか」

テレビのある居間から、マモルの声がする。

「なぁに?」

「事故だよ」

「あらやだ」

「でも、けが人は一人だけらしい」

「あらあら」

「なんでも、事前にそこをよけろと、言った学生がいたらしい」

「なにかしらねぇ…」

ネネの頭にタミがよぎる。

きっと学校だけではないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ