表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千の線  作者: 七海トモマル
68/151

交差する

心の奥に小さなネネがいる。

ネネのずっと心の奥。

泣いている。

勇者になれないから。

今のネネが、小さなネネを覗き込んでいる。

覗き込んで、途方にくれている。

どうしたら泣きやむだろうか。

勇者になれればいいのだろうか。

男だけが勇者になれるといわれているし、

小さなネネが、いきなり勇者だといわれて、

納得できるはずがない。

ネネの心の奥で、泣き続けている小さなネネ。

レディは、ネネが泣き止めば花が咲くという。

どういうことだろうか。


『ネネ』

ドライブが話しかけて来る。

『小さなネネも、きっと泣き止みますよ』

ドライブは時折ネネの考えを読む。

「ドライブが泣きやめさせてくれる?」

『それはだめですよ。ネネ自身が泣き止んでくれないと』

「そりゃ困った」

ネネはおどけて言ったつもりだが、

心の奥では泣き声が響いている。

悲しいと思う。

認められないということに繋がっているのかもしれない。

小さなネネは途方にくれて泣いている。

その気持ちがあるから、今のネネも途方にくれる。


『ネネ』

「うん?」

『時間です』

「時間、ああ…」

野暮な腕時計のような端末を見ると、

何か赤い表示が出ている。

「あ、戻らないとだめなんだね」

レディが表示を見て、声をかけて来る。

「どうよ、使い勝手は」

「すこぶるいいです」

ネネが答えると、レディは心から笑った。

「そりゃよかった」

ネネも自然と笑顔になる。

「それじゃ行こうか」

『はいなのです』

ネネは端末をいじる。

そして、エンターキーを押す。

端末に光の粒子が集まり、端末から放たれる。

そこには光の扉。

見慣れた光の扉。

「それじゃ行きます」

「またね」

レディが手を振る。

ネネはうなずいた。


ネネは扉の取っ手を持つ、そんな感覚を持つ。

音なき音で、扉が開いた感覚を持つ。

ネネは扉をくぐった感じがした。


何かが交わっている感じがする。

ネネは漠然とそう思った。

光の扉を開いたら、いつもはベッドにいるじゃないかと。

ネネは目を慣らす。

真っ白い空間の中にいる。

ネネは耳をすます。

泣き声が聞こえる。

聞き覚えのある泣き声。

小さなネネの声だ。

ネネは泣き声のもとを探す。

渡り靴の足音も聞こえない。

ネネはおかしな空間を走る。

なんだかネネの心の奥の場所と、

どこかが繋がっているような気がする。

光の扉を開いた先だから、

ネネの心と似たところが繋がっているのかもしれない。

何かが交わっている感覚は、そこからかもしれない。


ネネは小さなネネを見つける。

勇者になれないといわれた、小さなネネ。

今のネネが歩み寄ろうとする。

そこへ、金属の音がした。

小さなネネのもとに、重たげな鎧をつけた勇者が現れた。

勇者だ。

あの鎧の姿は、朝凪の町の勇者だ。

ガシャン、ガシャンの鎧の音がする。

小さなネネも、今のネネも、あっけにとられる。

「泣かないでください」

くぐもった声がネネに向けられる。

視線がわからないが、多分小さなネネにあてられたものだろう。

「勇者は大変ですから、勇者をちょっと助けるくらいでいいんですよ」

「ゆうしゃになりたい」

小さなネネは譲らない。

「勇者はいろんなものを壊すのです」

「壊すのは、やだ」

「だったら、勇者が壊したものを、直してください」

「あたしはそんなことできないもん」

「ネネなら出来ます」

くぐもった声で、勇者が語りかける。

「ネネは花が好きですから、勇者の壊したところに花を咲かせてください」

「そんなことできない」

「できます」

勇者がガントレットでネネの頭をなでる。

「未来のネネも知っています。花が好きだって」

「未来のネネ」

「たまたま扉が重なって、小さなネネに逢えました」

「とびら?」

小さなネネと今のネネが問いかける。

「いつかわかる日が来ます。また逢えたらいいですね」


勇者の声が遠ざかり、

ネネの視界はふっと暗くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ