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千の線  作者: 七海トモマル
25/151

人影を追って

ネネは公園をあとにする。

木々がさわさわとなる。

ネネは一度だけ振り返り、木々にうなずいて見せた。

見送ってくれるような、応援か何かをしてくれるような。

木々がネネを受け入れてくれた気がした。


ネネは歩く。

線を辿り。

繁華街からは離れたとおりだ。

入り組んだ路地がある。

ネネは迷路のようだと感じた。

右へ左へ、線は路地を進む。

「浅海の町にも、こんなのがあるのかな」

『わかりません』

「線がなかったら、迷子になるよ」

『そうですね』

ネネは歩く。線を辿り。

前を見据えると、不意に誰かが横切って行った。

誰だろう。

ネネは誰かが横切っていった路地を目指して走り出した。

誰だろうか、

誰かに似ている。

記憶の中だけの誰か。

朝凪の町にはいないはずの誰か。

ネネは走る。

自分の前を歩いていった足跡の話。

ドライブも言っていた。

誰かが朝凪の町に入っているらしい話。

その、誰かだろうか。

ネネは強烈に逢ってみたいと思った。

少し姿が見えただけ。

その姿を追う。


ネネは路地を曲がる。

また路地の先に、人影。

今度こそ捕まえる。

ネネは路地を走る。

誰だろう。

きっとネネの先を行く人。

あの人はどんな世界を見てきたのだろう。

レディにも会っただろうか。

鋏師にも会っただろうか。

そのほかにいっぱいある人とも関わっただろうか。

そして、今目指している器屋とはどんな人だろうか。

ネネは根拠もなく、

先を行く人影が、答えを持っている気がした。


ちりりんちりりん

『ネネ!ネネ!』

ドライブが頭の中で騒いでいる。

かんかんかん!

渡り靴が警報を鳴らしている。

『ネネ!』

ネネはうるさいと思った。

追っているのに。

先を行くあの人影を追っているのに。

『ネネ!何を見ているんですか!』

ネネははっとした。

そして、急に立ち止まった。

そこは坂道だ。

ネネはつんのめって転ぶ。

肩にいたドライブが、拍子で転がる。

ネネはしばらく転がっていた。

アスファルトの道。

家がいくつかある。

ネネは、何を見ていたんだろうかと思う。

ネネはアスファルトでうずくまる。

何かを見失っていた気がする。

ドライブが近くで転がっている。

ネネはドライブを抱き寄せると、アスファルトの上に座った。


『ネネ』

「うん」

『何か見ていたのですか?』

「誰かが先を歩いている気がした」

『うん』

「その誰かに逢えれば、答えがわかる気がした」

『見えなかったのです』

「ドライブには見えなかったんだ」

『そうなのです』

ネネはドライブを抱きしめる。

小さなドライブを、ぎゅっと。

「ごめんね、聞こえなかったよ」

『大丈夫なのです』

ネネはドライブをまた、肩に乗せると、

道を戻ろうとした。

ネネの追っている線は、曲がりくねってここまで遠回りしている。

渡り靴でステップを踏む。

かんかん!

ネネは把握した。警報だ。

ネネはあわててそこから離れようとする。

線を辿って走った。


後方で、大きな音がする。

爆発か何かが壊れるか、

そんな音だった。

遅れて強い風が吹く。

爆風というやつだろうか。

ネネは振り返る。

ネネがうずくまっていたそこは、大きなえぐり跡ができていた。

『通り魔ですね』

「…そう、みたいだね」

『警報に気がつかなかったら、巻き込まれていました』

「うん」

『先を歩く人に、いずれ逢えるはずです』

「うん」

『ネネにはネネの線があります。辿っていきますです』

「うん、わかった」


ネネは線を辿る。

今度こそ道を外れないように。


けれどもネネは思う。

先を歩いていった人は、どんな人だろうか。

ネネに納得行く答えを持っている人だろうか。

世界がどうも嫌いなネネに、

納得いく答えを持っているだろうか。

ネネは、逢ってみたいと思った。

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