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千の線  作者: 七海トモマル
146/151

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音がなくなる。


ネネは意識が動いていることに気がつく。

時間が止まっている?

ネネの身体は動かない。

ハヤトに向けて差し出された手が、

そのまま空中で動けない。

『ネネ』

ネネの頭の中で、鈴を転がすような声がする。

「ドライブ」

『ネネはこれでいいですか?』

ドライブは問いかける。

『ネネは線を操れます』

幾度となく聞いた言葉だ。

ネネはそんな実感はない。

『選んでください、ネネ』

「選ぶ?」

『このまま落ちるか、それとも』

「それとも?」

『理を越えて、線をいじってしまうか』

「理を越えて?」

『そう、理の器も関与できないところに関与します』

「そんなこと」

『一つをいじれば、連鎖的に、いろいろ変わってしまう危険を持っています』

ネネは考える。

そんなことをしたら、世界が変わってしまうかもしれない。

でも、こんな世界は嫌だ。

ネネが死んでしまうのではない。

ネネが落下して死んでもいいけれど、

ハヤトや、タミを救いたい。

『線をいじることは危険ですけれど』

「うん」

『この世界を変えることもできます』

ドライブは多分、ネネの考えを読んでいる。

その上で多分問いかけている。

「答えはわかっているでしょ」

『わかっています。でも、ネネからそれを聞きたいです』

ネネは目を閉じた感じをする。

ようやく微笑めたタミ、

約束をしたハヤト。

彼らを失うのはとても嫌だ。


ネネは目を開けた感じになる。

止まっている世界、

目の前にドライブの小さな身体。

薄ぼんやりと光っている。

『ネネは気がついていましたか?』

「わかんない、そうかもしれないとは、なんとなく思ってた」

ドライブがうなずく。

『私が、線を切り替える装置です』

ドライブは宣言する。

『運命も何もかもが、私の前では無力です』

ネネは、そうだろうなと思う。

線を切り替える力の前には無力だろう。

『でも、一度しか線を変えられません』

「だろうね」

『一度切り替えると、私は死にます』

「うん…」

ネネは、なんとなく予感していた。

ドライブに何かがあるだろうということ、

ドライブとはこれっきりのような予感。

「ドライブ」

『はい』

「あたしはいい飼い主だった?」

『角砂糖がとてもおいしかったのです』

「うん…」

『寝床もとても暖かかったのです』

「うん…」

『ネネはとてもいい飼い主でした。そして、いい友人でした。親友かもしれません』

視界が涙でめちゃめちゃになる。

何でみんな、そうやって幸せになろうとしないのだろう。

『幸せですよ』

ネネの前でドライブが小首をかしげる。

『今も、幸せです』

「ドライブ」

『名前をありがとう、居場所をありがとう』

「うん…」

『ネネのそばは、とても居心地がよかったのです』

視界が歪んだ中で、ドライブがたずねる。

『願い事はなんですか?』

それをかなえれば、ドライブは、死ぬ。

ドライブを生きさせると、みんな死ぬ。

それでもネネは願ってしまう。

「ドライブ」

『はい』


「落ちている彼らを救って」

ネネは願う。彼らの未来を。


『望みはそれでいいですか』

「うん」

『ネネが救われなくても?』

「十分だよ」

ドライブはネネの頭の中でため息をつく。

「ドライブ?」

『連鎖して世界が変わるかもしれません』

「それでも願うよ」

『わかりました』


ドライブが輝きだす。

ネネはまぶしさに目を閉じる。

ネネのまぶたの裏で、ドライブが小さな手を振る。

『バイバイ、ネネ』

「ドライブ」

言いかけたそこで、ネネの周りが動き出した。

また、落下だ。

ネネは目を開ける。

ハヤトが落ちている。

ネネはせめて手を取れないかと、もがく。

タミもハヤトも失ってはいけない。

ネネは空中であがく。

ネネの上で、光が放たれた。

ネネは感じる。

あれはドライブの光だ。

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