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千の線  作者: 七海トモマル
130/151

迷子の迷子

ネネは画面を見すぎて、ちょっと目が疲れてきた。

『疲れましたか?』

察したのか、ドライブが声をかけてくる。

「しぱしぱする」

『目薬はありますか?』

「ない。こんなに長時間ずっと見てるなんてないから」

『あらら、そうですか』

「とりあえず電源落とすね」

『はいなのです』

ネネは無駄箱一号の電源を落とす。

そして、目頭を押さえたまま、背もたれをギイギイといわせる。

ドライブが肩にいる感覚がする。

『よしよしなのです』

ドライブがぺちぺちと何かしている。

「こんなときに疲れ目になるとは思ってなかった」

『少し寝るといいですよ』

「うん、そうする」

ネネは目覚ましを1時間後にかけると、

眼鏡を外してベッドにもぐった。

ドライブも一緒にもぐりこんだ。

「つぶすかもしれないよ」

『つぶれませんですよ』

「そっか」

『そうなのです』

ドライブがおかしそうに笑った。

頭の中でころころと笑い声がする。

いろいろなことがあった昼までを思い出し、

ネネはなんだか疲れて眠った。


暗闇に響く大型車の音。

ネネは動けない。

どこから大型車の音が聞こえるのかわからない。

どこにもよけられない。

四方八方から聞こえる気がする。

誰もいない暗闇。

ネネは瞬間に感じたあの恐怖が、

引き伸ばされているのを感じる。

誰も止めてくれない恐怖。

力ないものが消されるような感じ。

大型車の音がする。

ネネはうずくまって目を閉じる。

いやだいやだいやだ。

あんな思いはしたくない。

耳をふさぎ、小さくなる。

耳をふさいでも耳の中で音がうずまいている。

ネネは泣きたくなった。

「友井」

声が響く。ボソッと。

「最高の友井を描きたいんだ」

ぼそぼそした声が宣言する。

ネネの周りから、重圧をともなった音が消える。

大型車の音が遠ざかる。

夢の中のネネは立ち上がる。

耳をふさいでいた手を下ろす。

人が立っている。

ネネはその人を知っている。

「また助けてくれた?」

ネネは語りかける。

「泣かれているのは苦手だ」

ぼそぼそした声が答える。

照れくさそうに。

でも、まっすぐに。

「ありがとう」

ネネもまっすぐに伝える。

ネネの空間の中から気配が消える。

きっと帰ったのだろうと夢の中のネネは思う。


ジリリリリ

目覚ましがなる。

ネネは目を覚まし、もぞもぞと目覚ましを止めた。

夕方頃の時間。

晩御飯が出来たり、夕方のニュース番組がある時間。

ネネはもぞもぞと動く。

『起きたのです』

ドライブが頭に語りかけてくる。

「おはよう」

『おはようなのです』

ドライブは答える。

『ネネの夢の中に誰か来ていましたか?』

「うん、多分来ていた」

ネネは答える。

多分ドライブは覗くこともできる。

「夢の中の恐怖も取り除いてくれたよ」

『それはよかったのです』

ネネは思う。

どこか深いところで、

あのぼそぼそ声の男とは繋がっているのだ。

高校でたまたま一緒のクラスになったりしているだけでなく、

もっとどこか深いところ。

ネネは起き上がりながら考える。

あの男が言っていた、罪悪感がそれだろうか。

ネネは思い当たることはないけれど、

何かそこで繋がっているのだろうか。

『久我川ハヤト』

ドライブがぽつりと言う。

そう、ハヤトとは何かで繋がっているのかもしれない。

ネネの忘れているような何か。

でも、決して消えない何か。

『ネネの深くに何かあるのですよ。きっと』

「すぐにはわからないね」

『深くまで全てわかる人間はいないのです』

ドライブは断言する。

『みんな道に迷っているようなものなのです』

「そっか…そうだね」

ネネは迷子だ。

いろんなところをさまよう迷子だ。

線があるから辿っているようだが、

はたから見ればただの迷子だ。


ネネはベッドを降りる。

晩御飯がそろそろのはずだ。

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