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千の線  作者: 七海トモマル
125/151

どうしよう

駅前広場付近は、

日曜日ということ、タミの占いを求める人ごみということもあり、

大騒ぎになった。

ネネとハヤトは人ごみを掻き分け、

静かなほうへと歩く。

ネネはどうも力が入らない。

もしかしたら死んでいたかもしれないと思うと、

ネネの心が冷える。

ハヤトがネネの手を握った。

あたたかいとネネは思う。

身を寄せ合うようにして、ネネとハヤトは静かなほうへと歩いていった。


駅から少し歩いた小さな公園に、

ネネとハヤトは落ち着いた。

ベンチに座り、一息つく。

「大丈夫か?」

ハヤトがそっと声をかける。

「少し落ち着いたよ」

「そうか」

「それでもまだ、ちょっと怖いね」

「そうか」

サイレンが遠くで聞こえる。

もしかしたらマスコミとか言うのも聞きつけているかもしれない。

離れて正解だったのかなぁと、ネネはぼんやり思う。

ネネはハヤトの手を握る。

あたたかいと思う。

「ハヤトの手はあたたかいね」

ネネはつぶやく。

ハヤトがびっくりしたように目を見開いた。

そして、照れくさそうに空いた手で頭をかく。

「油絵の具も使うから、ちょっと荒れてるんだけどな」

「働き者の手だよ」

「…ありがとう」

ハヤトはぼそぼそとつぶやく。

しっかり伝わっている、感謝の言葉。


ネネはどこかで荒れた手のことを感じた気がする。

夢の中だっただろうか。

荒れた、あたたかい手が導いてくれた。

暗闇の中を導いてくれた。

ネネはうっとりと目を閉じる。

居心地がいい。

遠くはやっぱり騒がしい。

ヘリの音まで聞こえる気がする。

一歩間違えば大惨事。

それをタミが止めたらしいと、人ごみには、うつっているかもしれない。

数日のうちにタミは全国に広まるだろうか。

よく当たる占い師から、

ある意味での救世主に。

そして、代価はどんどん増える。

ネネのイメージの中で、線の化け物が代価を食う。

代価を食って膨れる。

ネネはどうすればいいのだろう。

化け物が世に出ないようにするべきか。

でも、その化け物が世界を救うかもしれないとしたらどうなるか。

線を辿るばかりだけれども、

ネネはどうするべきだろう。


ハヤトは握っていたネネの手を、ぎゅっとつかむ。

「不安なのか?」

ぼそっとつぶやかれる声。

「いっぱい不安だよ」

隠すことはない。

ネネはありのままに言う。

「どうすればいいのか、わからないよ」

ネネは半ば泣き言になる、それを言葉にする。

「みんなが幸せになれば、佐川さんもいていいのかもしれない」

「うん」

「でも、佐川さんのいる意味は違うと思う。当たる占いじゃないと思う」

「うん」

「代価を得るために利用されているように見える」

「そうか」

「佐川さんに逆らうべきかな。それても、見守るべきかな」

「俺が思うに」

ハヤトが話し出す。

「佐川には何かが集まってきている気がする」

「なにか?」

「力になるものかもしれないけれど、危険なもの」

「危険」

「そう、集まった何かを一度断ってみる必要があると思う」

ネネは思う。

レッドラムの線みたいなものを、一度断つべきなのかもしれないと。

「なくしてもなお、佐川は必要とされると思うんだ」

「占いとかなくても?」

「佐川に逆らうとか言う意味じゃなくて、一度断つべきだと思うんだ」

「うん…」

ネネは化け物をイメージする。

あの線の化け物。

断ったらタミはどうなるのだろうか。

タミに力がなくなるような気がする。

占いのなくなったタミ。

人ごみはなくなるだろう。

タミが鎧にしていた、人がいなくなる。

何もかもなくしても、タミを必要とするもの。

いるのだろうか。

タミにはそういう人がいるのだろうか。

「佐川さんに家族はいるのかな」

「わからない」

ネネは思う。

家族とは、何もなくても受け入れてくれるものじゃないかと。

いるだけでいいのだと。

いいことがあればともに喜び、

悪いことがあればともに怒り悲しみ、

心が帰る場所。

タミにそういう場所があればいいのにと、ネネは思った。

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