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千の線  作者: 七海トモマル
122/151

化け物

駅の広場で膨れ上がる人ごみ。

警察も来ない。

許可を得ているのだろうか。

ネネとハヤトが見ている前で、着実に人が増えている。

「どうする?」

ハヤトが問いかける。

「パンフレットだけでも、もらうかな」

「気にはなるか」

「うん、何をうたい文句にしているかくらいは」

ネネは右の列に並ぶ。

ハヤトも後ろについた。

パンフレットの列はすぐに順番が回ってきて、

ネネはパンフレットをもらうと、

ハヤトとともに、人ごみからちょっと離れた。

「あなたの運命を見定めます」

ネネは一番大きな見出しを読んだ。

その下に、あなたの運命はあなただけのものとか、

運命は人によって違うもの、

あなただけの運命を見定めます、とある。

「あなたの進むべき未来を占います」

ありがちだなぁとネネは思う。

でも、その下、占いますの下に、

但し書きが赤で記されている。

「代価が必要です。何でもいいので用意をしてください」

あなたの思いのこもったものが必要です。

何でも構わないです。生きているものでもいいです。

そんな但し書きが記されている。


「どう思う?」

ハヤトが問いかける。

「代価があることで、余計に信じるのになってるのかも」

「なるほど」

「神様に何かおさめるとか、そういうのに近くなってるんじゃないかな」

「神様かぁ」

ハヤトは人ごみのほうを見る。

拡声器も人ごみもうるさい。

ネネは思い出す。

朝凪の町では教団は人を殺すまでして、機能していた。

殺されたあの人は、勇者に頼るしかないといっていた。

ネネは鋏師から鋏をもらった。

昔いた占い師は千の線になって、教主とリンクしている。

千の線を断ちに、ネネは鋏を持って、昭和島を目指さないといけない。

さっきちらりと見えたタミは、一瞬だったけれど、笑っていた。

この人ごみではもう見えないし、

無理やり近づくことも出来ないだろう。

タミが何か計画していて、その通りに物事が進んでいる。

ネネはそんな印象を持った。


朝凪の町の教主は、神になる。

そんなことを言っていた。

「本当の私を手に入れ、いずれは神になる」

ネネはぼそっとつぶやいた。

ちょっと覚えていた、朝凪の町の教主の宣言だ。

「友井?」

「なんとなく覚えていたことだよ」

「例の、朝凪の町か?」

「うん」

「聞き覚えがある気がする。空から響いた感じじゃなかったか?」

「そう。覚えてる?」

「感じがあったことだけ思い出せた。他はさっぱりだ」

「そうかぁ」

ネネはハヤトが朝凪の町のことを、

思い出すのは、ちょっと無理かなと思う。

「無理に思い出さなくていいよ」

「頭のどこかで覚えている気がするんだ」

「じゃあ、朝凪の町に行ってたのかな」

「思い出せない」

「それじゃ堂々巡りだ」

ネネはパンフレットをしげしげと見る。

佐川タミがよく当たる占いをはじめたのは、

ほんの数日前だ。

ネネが占ってもらったときは、おぼろげな占いでしかなかった。

タミは何か変わった。

パンフレットの中で、印刷のタミが微笑んでいる。

にっこり微笑んでいるのに、

ネネはなんだか恐ろしいものに感じた。


人ごみを散らす警察も来ない。

通報がないのだろうか。

ネネはパンフレットから顔を上げて、人ごみのほうを見る。

瞬間、ネネの目に化け物のようなものがうつった。

線で編まれた化け物のようなもの。

人ごみの中に、そんな大きな化け物がいた気がした。

「友井」

ハヤトがボソッとネネを呼ぶ。

「あ、うん、なに?」

「何か見えたのか?」

「あ、その」

ネネは再び人ごみを見た。

化け物は見えなくなっていた。

「その、なんでもないんだ」

「そうか、それならいいが」

ハヤトはだまる。

ネネは人ごみを見る。

何かの線で、この人ごみを取り込もうとする化け物がいる気がした。

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