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千の線  作者: 七海トモマル
120/151

罪悪感

ネネは思う。

ハヤトは朝凪の町を知っているのかもしれないと。

バーバのことも知っているのかもしれないと。

でも、確たるものがあるわけでない。

夢の中を思い出すような作業なのかもしれない。

あんまり細かくは、きっと覚えていないだろう。

まぁ、ハヤトが本当に朝凪の町にいるかはわからない。

ネネは朝凪の町でハヤトにあったことはない。

偽者がいた気がするが、

多分ネネは、ハヤトにあっていない。

「覚えていないんじゃ仕方ないよね」

ネネはつぶやく。

ハヤトはうなずく。

ネネはコーヒーをすする。

名案が浮かぶわけでもないが、

ネネは熱めのコーヒーをすする。

ハヤトが朝凪の町に来ていたとしたら?

危険だということを伝えたい。

占い師を教祖とした集団があることを伝えたい。

教えによっては平気で人を殺す集団があること。

そして、どうしようか。

何でハヤトに、朝凪の町が危険だと教えなくちゃならないだろうか。

ネネはコーヒーを見つめる。

黒い液体にネネがうつる。

「友井」

不意にハヤトが声をかけてくる。

ネネは顔を上げる。

「なに?」

「友井はずっと友井か?」

「なにそれ」

「話すようになってからだから、ここ数日だけど」

「うん?」

「記憶の奥で友井が引っかかってる」

「夢で助けたとかいうんじゃなくて?」

「おぼろげだけど、友井がいる気がする」

「なんだろうね」

「わからない、けど、友井だと思うんだ」

「そうなんだ」

ハヤトが何か考える。

「俺はその友井に対して、何か悪いことをした気がする」

「悪いこと?」

「思い出せないけれど、罪悪感ばかり残ってるんだ」

ハヤトがうつむく。

罪悪感が本当なのかもしれない。

ネネはかける言葉を探す。

「大丈夫だよ」

根拠のない言葉。

ネネは、われながら軽い言葉だと思う。

「ハヤトが悪いことしても、あたしは元気だもん」

「そうなのか?」

「罪悪感があるなら、形になったらあたしが聞くよ」

「形に」

「そう、なんだかわからないけど、悪いとかじゃなくてさ」

「ふむ」

「俺はこんなことをしたから悪いと思ってるって、形にね」

「思い出せないんだよなぁ」

「そのうちでいいよ。そうでなければ忘れちゃえばいいよ」

「そうもいかない」

ハヤトはボソッと言う。

「友井に何か悪いことした気分で、友井を描きたくない」

「じゃあ早く思い出さないと」

「思い出せない」

「堂々巡りじゃないの」

「そうなんだよなぁ」

ハヤトはコーヒーをすする。

「朝凪の町とか言うところを覚えていれば、多分違うんだろうけどな」

「ハヤトはぼんやりしか思い出せないわけだ」

「何か大事なことの気がする」

「大事なのかなぁ」

ハヤトはため息をつく。

ネネもコーヒーをすする。

「少なくとも、ハヤトはバーバに反応したし」

「うん、聞いた気がする」

「似たようなイメージのところに行っているようなそんな感じかな」

「同じ夢を見ているような…か?」

「そんなとこかな」

ネネは曖昧に返す。

夢なら夢でそれでいい。

ハヤトが朝凪の町の記憶の断片があるのは不思議だが、

それを問い詰めても何が出るわけでもない。

「罪悪感の元がわかればなぁ」

ハヤトがつぶやく。

言われてもネネは、ハヤトの罪悪感の元なんてわからない。

「何か友井に悪いことをした気がするんだ」

「気がするだけでしょ」

「でも、思い出せないのが歯がゆい」

「いろいろ忘れてるんだね」

「多分そうなんだ」

ハヤトはぐいっとコーヒーを飲み干す。

「町のことも、友井に何かしたことも思い出せなくて、もやもやしてる」

「電話のことも思い出せない?」

「内容が思い出せない」

「ハヤトは何をしたんだろうね」

ネネもコーヒーを飲み干す。苦い。

心の中がもやもやする。

「勇者とかいう人の噂とか聞かない?」

「勇者」

ハヤトの動きがぴたっと止まった。

頭の中で何かをとらえたように。

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