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千の線  作者: 七海トモマル
116/151

大好きな親

マモルが取り出したチラシを、ネネもミハルも見る。

「あなたも未来を見てみませんか?」

ネネが大きな見出しを読み上げる。

「未来が見えるらしいよ」

マモルが新聞を置いて、食卓につく。

「外で読んでいた限りでは、教主様が未来を見るそうだ」

「教主様」

ネネは聞き覚えがある。

浅海の町でないところで。

「で、教主様が神になられると、国や世界を動かせるらしい」

「すごい単位の話ね」

言いながら、ミハルは卵を焼きに戻る。

「で、手始めにこの町で広めようというチラシらしいよ」

「世界を動かそうというには、小さいところから始めるんだね」

「わからないけど、小さいことからこつこつなんだろう」

ネネはチラシを見る。

教主様はあなたの未来を見ます。

教主様は、やがて神になられます。

このときにあなたも教主様に占ってもらっては?

宗教団体とそんなに変わらない気がするが、

あくまでも教主様の占いがメインらしい。

「ネネ、興味でもあるのか?」

「違うよ。占いしているクラスメイトを思い出しただけ」

「ああ、言ってたなぁ」

「このチラシには出てないけど、クラスメイトかなぁと思っただけ」

「狭い町だけど、そこまで重なることもないだろう」

「だよねぇ」

ネネはそう言うが、心のどこかで彼女を思う。

代価を得て占いをする、彼女。

「卵焼けたわよ」

「そうか、それじゃ朝ごはんにしようか」

チラシはどけられ、いつもの朝ごはんになった。


朝ごはんの後片付けをして、茶を飲んだりする。

「ネネは占いとか信じるの?」

ミハルが声をかけてくる。

「なんでまた?」

「クラスメイトの子を思い出したらしいから」

「気にはなるよ」

ネネは答える。

「いい結果でも悪い結果でも、心のどこかには残ると思う」

「そうねぇ」

「母さんは?」

「あたし?あたしも気になるわねぇ」

ミハルも答える。

世間話の延長のように。

「全部信じるわけじゃないけど、やっぱり何か残る気がするのよ」

「そうなんだ」

「そうなのよ」

ネネは湯飲みを回す。

ぐるぐるした中でネネがうつる。

「父さんは?」

「ん?」

「占いってどう?」

「会社の女の子によく言われるね」

「占いを?」

「そう、生年月日とか、血液型とかな」

「聞くと占いになるの?」

「相性とかがわかるらしくてな」

「何でまた父さんが?」

「きっかけだよ。要は。話しかけやすくするための話題だよ」

マモルは茶をすする。

「話題なのか」

ネネはポツリとつぶやく。

あの彼女は、話題で占いをしているわけじゃない。

代価を食うために占いをしていると、ネネは思う。

生業とも違う。

あの彼女は怖いものだ。

「チラシのは、話題じゃないよね」

ネネはぽつぽつと話す。

「そうだなぁ。新興宗教に近いだろうな」

「幸せのために何か売りつけるのかしら」

親はイメージでものを話す。

ネネも似たようなイメージを持つ。

「教主様かぁ」

「ネネも占ってもらう?」

ミハルが湯飲みに茶を継ぎ足す。

「やだ。何か飲み込まれそうな気がする」

「そうねぇ、ただじゃないでしょうしねぇ」

「だから、やだ」

「賢明ねぇ」

ミハルはころころと笑った。


「今日はどうするんだ?」

「町のほうを少し歩こうかなと」

「テストも終わってるし、遊んできなさい」

「うん」

「でも、遅くならないうちに帰ってきなさい」

マモルがまじめに言う。

「最近は物騒な事件もあるし、新興宗教なんかに関わって…」

「お父さん、言わなくてもネネはわかってるわよ」

「それでも言っておきたい。早く帰ってきて…」

「はいはい、ネネ、準備して行っちゃいなさい」

「話を聞いてくれー!」

マモルがだだっこのように叫ぶ。

ネネは少し笑った。

このいじりがいのある父親は、

きっと会社でも受けているのだろう。

「大丈夫だよ」

ネネはにっこり笑って見せた。

この親が大好きだと思った。

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