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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
7/52

第7話 注目される魔王

台風去って一気に寒くなったわ。こんな気温の変化に風邪とか引かないようにせねば(^■^)

それでも半袖半ズボンの人が……元気だな。


ブックマーク、読んでくれた皆様!

ありがとうございます(*'ω'*)


 食堂でホットケーキと言う神の食べ物を食した。カミノさんが盛り付けてくれたホイップも絶品。しかも見た目も美味しいとは、まさにこの事だと思った。


「はぁ〜」

「どうかしました?疲れましたか?」

「あ。違うんです。さっきのホットケーキを思い出しまして……」

「真桜もおばちゃんのホットケーキに目覚めましたね」


 この国のおばちゃんはどこに行っても凄い人ばかり。人族とはあまり関らず、争ってばかりいたけど。あっちの世界でもきっと凄い人がいたんじゃないだろうか?そう考えるともっと交流しておけばよかったと思った。まぁ魔王の私を受け入れてくれるとは限らないけど。


「食堂に移動で行く教室は一通り見たから……あとは体育館くらいか?」


 カミノさんは始め面倒だと言っていた気がしますが、いざ案内が始まれば細かく丁寧に話してくれる。今日は始業式と言う日で、教室に残っている生徒さんは少ない。いつもはもっと賑やかだと教えてくれた。


「そうだ。真桜はバスケに興味はあるか?」

「バスケですか?」


 バスケって何ですか?って言うのは聞かない。さっきもホットケーキを知らないって言ったら驚かれた。きっと私には今、常識と呼ばれる知識が圧倒的に足りない。ここは知らない事がバレないようにバスケは……甘いもの?


「興味があります」

「そっか。それじゃ体育館に行くか。きっと今は新が部活をしている頃だろう」


 アラタさんはワタナベ君と言われていたクラスの人ですね。先程の食堂で一緒に食事をしていましたが、ブカツと言うものに行くと言って別れた。タイイクカンに行けば全て分かるはず。


「あれが例の……」

「みたいだ。隣にいるのは……」


 後ろから何人か着いてきます。それにさっきから上の階からちらちらとこちらを伺う人も。


「あー視線気になるよな?ウザいなら追い払うが?」

「え?いえ!そこまででは」

「そうか?俺は気になるがな。敵意はないから放置してるけど」

「敵意?ここでは戦ったりするんですか?」

「ん?この学園で争いはないと思うけど」

「でも先程の食堂ではアラタさんが悪寒やヘイトとか言ってましたが」

「あー真桜が可愛いから。仲良くしているやつを見て羨ましがっているだけだと思うぞ」

「わ、私が可愛い!?ってうへぇ!?」

「はは。なんだその驚き方」


 そんな男の子人に可愛いなんて!そんなストレートに言われた事は……爺やくらいしか!落ち着くのよ真桜。こう言うのは魔界でも聞いていたじゃない。皆は私が魔王だから気を使って……


「神野さんは私の事……」

「ん?どうかしたか?」


 まさか……魔王だって気がついた!?だから私に気を使って可愛いなどと!

 どこで私は間違ったのでしょうか?バレるような素振りもミスも……まさか!ホットケーキを知らない事でバレた!もしくはバスケ対しての回答を間違えた?


「あ。そうか。女の子に簡単に可愛いと言ってはいけないんだったな」

「へ?」

「前に諏訪に言われてな。女の子に対して可愛いは人によって気にするって。もしかして真桜も気にしたか?」

「へ?あ、いえ。純粋に嬉しいですよ?」

「そっか。なら良かった」


 どう言う事でしょう?可愛いと言ってはいけない。スワさんは先程の女の人ですよね。可愛いと言われて気にする人がいる?


「なんて言ってたか……容姿は人によってコンプレックスだったか」

「容姿で私は気にしている事は……」


 いや、あるわ。母に似たこの胸は唯一気になる。同族の者を見ても私は大きい気がする。魔界でも挨拶に来た男は、初めに私の胸を見る者が多かった。この世界の教室でもそんな視線は感じていた。


「あー気にしている事は言わなくていいぞ。そう言うのは察しろって妹にも言われているし。とりあえずふと出た可愛いは悪かった。つい本音が出た」

「いえ。それは別に…………」


 これは魔王だからどうとかではない。それはよく分かった。私はミスをしていない。いないんだけど……


「本音とか……照れます」

「照れる事はないだろう。嫌ではないみたいだから言うが、誰がどう見ても可愛いと思うぞ」

「あの!カミノさん!それ以上は!!!」

「はは。赤くなって。可愛いな」


 この世界の男の方はこんなに可愛いを連発するんでしょうか?お世辞や気を使っていないと言われた言葉は、どう受け取ればいいのか分かりません。


「ここの扉が体育館に繋がっているんだ。体育の時は更衣室から向かうけど、そこは諏訪に聞いてくれるか?」

「ひゃい!」

「はは。ひゃいって。真桜は面し……楽し……言葉選びむずいな」


 変な声が出てしまいました。カミノさんは笑ってくれてますが、私は恥ずかしくてさらに顔が赤くなってしまう。


 ―ガラガラ


「おーい。新〜邪魔するぞ」

「ん?祝か。どうした?」

「体育館案内ついでにバスケに興味があるらしいから連れて来た」

「深淵さんもいらっしゃいって、顔赤いけど大丈夫?」

「はい。問題ございません」

「そう?」


 こほん。せっかく善意で案内してくれているのですから。いつまでも照れて顔を背けていてはいけません。


「新が言ってた例の転校生か……」

「バスケに興味が……」

「新のクラスにこんな……」


 中に入ったら、男の人がたくさんいます。オレンジ色の丸い何かを持ってます。それとやっぱり私の胸に視線も。


「今日は練習日じゃないのか?」

「今日は自主練日だ。先生も会議があるからな」

「ふーん。それなら少し遊んでいってもいいか?」

「部長に聞いてくるよ」

「って訳で。ちょっと待ってな」

「あ、はい」


 興味があると言ったからか、カミノさんがアラタさんに何か確認していた。


「祝〜いいってよ。今日はバレー部もいないから、空いてるコート使っていいって」

「さんきゅ。それじゃあっちのゴールに行こうか。一応そこに雑巾あるから、靴底だけ拭いといて」

「はい。雑巾……」


 これは知ってます。お掃除する時の万能布。水で何度も洗えば使える画期的な発明と爺やが言っていました。

 使い方は……カミノさんがそのまま雑巾に乗って、足を前後に器用に拭いているのを真似た。


「それじゃ行こうか真桜。新も一緒に来い」

「俺もか?まぁいいけど」


 どうやら使い方は間違っていなかったみたいです。特に何も言われませんでした。


 ―ダーン、ダーン、ダーン。


 あのオレンジ色の丸い物を床に投げて、片手で何度か投げる事で連続して跳ね返す。これがバスケと言うものなんですね。理解しました。


「制服だしな。あまり派手には動けんな。シュートだけやってみる?」

「え?はい」


 そう言うとカミノさんは私にオレンジ色に丸い物を差し出して来た。先程の動きは見ました。これを床に何度か投げて……


 ―ゲシ


 足に当たって転がっていってしまいました。


「ドリブルって難しいよな。俺もよく蹴飛ばしてたよ」

「だな。上履きだし多少滑るし。ボールは拾うから、深淵さんはそこにいて」


 アラタさんが私の蹴ったオレンジ色の丸い物。ボールと呼ばれたそれをとって来てくれる。


「俺も久しぶりだからな……よっと!」


 ―ッシュ……


 カミノさんはその場でボールを頭の上に構えると、その場で飛びボールを投げた。


 ―パシュッ


 何やら網のついた丸いところに綺麗にボールが吸い込まれていった。


「綺麗ですね」

「そうか?まぁ妹の練習に付き合ったりして、何度もやってたからな」

「はー何度もやってたからって、3ポイントラインで軽々決めるなよなー」

「まぁ天才だから?」

「恥ずかしくて顔隠すなら言うなよ」


 カミノさんのを見てバスケとは、あれにボールを入れるだけみたい。私にも出来そうだな。


「ほら。深淵さん」

「ありがとうございます。頭の上に持っていって……ほ!」


 ―ッシュ……


「あ」

「俺は見ていないぞ」

「そう言うって事は……」

「ん?」


 ―ドーン、ドーン、コロコロ……


「全然届きません!?」

「そ、そうだな」

「フォームは綺麗だったよ。でも……その」


 振り向いて届かなかった報告をすると、2人は何故か目を逸らします。周りで見ていた人達の視線も何故かなくなりました。


「それじゃ。俺達はそろそろ行くわ」

「え?もっとやってみたいんですが」

「ぶ、部活の練習もそろそろ始まるだろ新?」

「そ、そうですね!次やる時はジャージを着てからやり……」

「っば!えっとその!運動する機会は授業でもあるだろうから。今日はこれくらいにしようって事で」

「それは仕方がないですね」


 体育館を出る時に他の方が拝んでました。これはこの世界の挨拶だったんでしょうか?




 そして校内を一通り見たので、今日はこれで帰るみたいです。


「あれ?いっくん案内終わったの?」

「諏訪も帰りか?」

「……」

「陽も帰りか?」

「そう。今日は手伝いがあるから家に帰るよ」

「そうか。では俺も行こう」


 お2人はこのまま帰られてしまうみたいです。もう少しお話ししていたかったですが、あまちご迷惑をかけるのも申し訳ありませんし。


「真桜ちゃんはこの後、何かあるの?」

「何もありません!」

「そう?だったら私の家見に来る?」

「行っても良いんですか!」

「う、うん」


 あ。嬉しくてついがっついてしまいました。変に思われてませんでしょうか。


「今日の感想とか聞きたいし。いっくんはちゃんと案内してくれた?」

「はい!とても親切で丁寧に教えて頂きました」

「いっくんはなんだかんだ言っても面倒見がいいからね〜」

「ほっとけ」

「最後にはバスケをさせてもらいました。そこにはアラタさんもいました」

「へ〜バスケね……ん?もしかしてその格好のままやったの?」

「そうですけど」


 ―ッバ!

 ―ッサ!


 その話の後、スワさんがカミノさんを睨んでいます。それの視線をすぐに顔を背けるカミノさん。私と目があったので笑顔で返した。


「俺は見てない」

「その言葉が自白しているんだよ」

「…………」

「黙秘?もしかして知っててやらせたりは……」

「違う!不可抗力だって、あ」

「アウト〜」


 何の話をしているのでしょうか?私に分からない2人のやり取り。


「真桜ちゃん。体を動かす時はジャージを着ようね」

「ジャージですか?」

「今日は始業式だから持って来てないと思うけど」

「あー爺やに聞いてみます」

「そうじゃないと変な目で見られるからね」

「見られるですか?でも皆さん私から目を逸らしてましたよ?」

「それは……罪に耐えられないだけ」

「罪ですか?」


 よく分かりませんけど。罪という事は皆さん悪い事をしたのかな?


「でも最後は皆さんで手を合わせてました」

「……今度新とバスケ部締めてくるわ」

「えぇ?」

「今はこいつだけ……断罪!」

「ぐふぅ!?」


 どういう事ですか!?スワさんはどうして突然カミノさんのお腹にパンチを!?


「いいんだ。これは俺の……」

「ふざけてるだけ。なんなら真桜のやったら?」

「私が!?そんな親切に案内して頂いたのに!出来ませんよ」

「真桜ちゃんはピュアね」

「ピュア?」

「心が綺麗って事」

「そうなんでしょうか?」


 今日は皆さんにたくさん褒められて照れます。そして学校であったあれこれをスワさんに話しました。そうしているとあっという間に神社に到着した。


「私は着替えてくるから、その辺でもいっくんが案内しておいて」

「ここでも……まぁいいけど」

「ありがとうございます!」

「それじゃ……ぐるっと歩いてみるか」


 ここは何だか不思議。大きな鳥居と言われるもの。小石が敷き詰められた地面を踏んで歩くだけで心が落ち着く。

 隣で歩くカミノさんはここでも細かく教えてくれる。私はこの神社を知らない。けど気になる事がある。


「(何でここの世界の言葉が読めるんだろう?)」

「それでここにお賽銭を入れて、神様にお祈りをするんだ……ん?話つまらなかったか?」

「え?そんな事はありません!そのここにいると落ち着くと言いますか。つい黙ってしまいました。ごめんなさい」

「あー分かるよ。こう言うのって日本だなって感じ。懐かしくも思う……」


 日本について分からないけど。私のいた世界に似ている雰囲気がここにある気がする。


「あら。祝君じゃない」

「おばさんこんにちは」

「おばさんだなんて他人行儀ね。お義母さんって呼んでもいいのよ?」

「それは……違う意味に聞こえるので」

「そう言う意味で言ってるのよ?神社の経営に興味はないかしら?」

「怖い怖い。それをスカウトしないで下さいよ」

「隣にいる子は見ない子だけど……まさか!」

「違いますからね!そう言う発想やめて下さい」


 この人は誰だろう?魔導士みたいな服を着ているって事は、この世界にも魔導士がいたんだ。


「初めまして。可愛いお嬢さん。陽子の母です」

「陽子……さんのお母さん?」

「諏訪の母親だ。ここの神社の主人だ」

「あらやだ。主人は一応旦那よ」

「実権はおばさんでしょ」

「ふふ。どうでしょうね」

「あ。失礼しました!本日転校してきました。深淵真桜と申します。お母さん?お姉さん?」

「あら。この子良い子ね。お菓子いる?」


 手の中に何かを掴まされる。開くとそこには包装された飴が入っていた。そして下から上までしっかり見られる。


「スタイルも申し分なし。顔なんて整いすぎてて……そしてその束ねた長い黒髪!強敵ね」

「……何が強敵よ」

「あら。陽子もう来ちゃったの?」

「変な事言ってないでしょうね?」

「変な事?言ってないわよね?」

「はい。私は自己紹介しただけです」

「ね?」


 ウィンクでカミノさんに微笑むスワさんのお母さん。スワさんと雰囲気は似ていますが、その容姿は色気のあるお姉さんにしか見えない。本当にお母さん何でしょうか?それはそうとスワさんの格好は……


「スワさん可愛いです!その魔導士みたいな服とっても似合ってます」

「魔導士?」

「真桜ちゃんは外国から日本に来たらしいよ」

「あー巫女服って海外じゃ珍しいのかな?」

「巫女服と言うんですね。とっても可愛いです!」

「魔導士って。真桜……」


 なんだかカミノさんに見られているような?私の服に何かあるのかな?


「そんな訳ないよな。海外じゃ巫女はいないもんな」

「どうしたのいっくん?」

「何でもない。そう言えば陽は……」

「陽!?もしかして!?」

「もう!お母さんは違うところ行ってよ!」

「あらら。それじゃまたね真桜ちゃんと祝君」


 お母さんはスワさんに建物の奥に押し込まれていった。


「行ってしまいましたね」

「そうだな。さて一通り見たけどどうする?」

「どうしましょう」

「そう言えば真桜は門限とかあるのか?」

「門限?」

「何時までに帰って来いとか。親はなんて言ってるんだ?」

「親はいませんけど。爺やには何も言ってませんでした」

「あ。すまない。変な事を聞いた」


 ん?謝られるような事はされてませんけど。変な事?


「特に変な事は聞かれてませんけど?」

「ありがとう……それで爺やさんは教室に来ていた人だよな?」

「はい。一緒に暮らしています。そう言えば爺やはどうしているんでしょう?」

「え?何も言ってなかったのか?携帯で連絡してみなよ」

「ケータイ?」

「持ってないの?」

「持ってません」

「この時代にない人が……まぁ持たなきゃいけない訳じゃないけど」


 そのケータイと言われるものは持ってないとおかしいのかな?今度おばちゃんに聞いてみようかな。


「そうなると爺やさんも心配するよな。今日はもう帰ろうか。今度は遊びに行くって許可を貰ってから、ここに来ればいいだけだし」

「分かりました。私も爺やが心配ですし、今日は帰ります」

「陽には連絡してっと……家まで送るよ。電車とかバスで行く?」

「いえ。それは使いません。あっちに真っ直ぐです」

「そうか。それじゃ帰ろうか」

「よろしくお願いします」


 ここまで初めて来たから、正直どうやって帰ればと思っていました。カミノさんは学校案内も帰り道も教えてくれるし、タピオカ店でも助けてもらいました。こんな優しい人に出会えて私の幸先は中々いいかもしれません。


「どうかしたか?」

「カミノさんのような優しい人に案内されて、幸先が良いなって思っただけです」

「はは。それはどーも。転校生って心細いだろうけど。うちのクラスの奴らは良い奴が多いと思うぞ」

「それは明日からも学校が楽しみです」


 私はまだ知らない。この世界の事、彼や彼女たちのような人族の事。今はただこの帰り道をゆっくり帰りたいと思う。

真桜「この世界にはまだまだ素晴らしいものがありそうです」

神野「真桜って日本好きだよな」

真桜「優しい人ばかりですし、食べ物は美味しいものばかり。でも一つだけ問題が」

神野「なんだ?」

真桜「たくさん食べるためには、お金がかかると言う事です」

神野「確かにな〜学生じゃバイトも限界があるし。勉強もしないとだしな」

真桜「働かざる者食うべからず。まさにこの世界のための言葉ですよね」

神野「……ちょっと重すぎないか?」

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