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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
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第6話 面倒見がいい勇者

円安でもiPhone好きな人は並ぶんだなぁ〜

新色のディープパープルはカッコいいな……買えないけど(*´-`)


読んでくれてありがとうございます(*'ω'*)

 春休みもあっという間に終わった。と言っても異世界で勇者をしていたから、学校に通うって言うのはすごく久し振りな気がするけどな。


「あー学生か……懐かしい」

「春休みそんな長くなかっただろう」

「そうなんだが」

「休みは余程濃ゆい生活でもしてたのか」

「ん〜ゲームやったり、甘い物巡りかな」

「あーまた妹ちゃんとか?」

「勿論だ」

「相変わらずのシスコンなんだな」


 友達になんと言われようと、妹とのデートだけはやめられん。可愛いものは可愛い!


「妹ちゃんも中3だっけ?受験とか大変じゃないのか?」

「どうだろうな。うちの高校に来るとか言ってたから、勉強しなくてもいけるだろう」

「可愛い上に賢いのか。そりゃ男も放っておかないだろう」

「……なんだ狙ってるのか?」

「マジトーンやめろし。中学生は狙わないって」

「そうか。俺は友を殺めなくて済むんだな」

「……妹ちゃんが不憫に思うよ」


 改めて考えると心配だ。容姿は問題なく可愛くて、勉強も出来る上にバスケ部のキャプテン。人望も厚く兄に冷たいが、基本は人助けをする優しい子である。


「完璧か!?」

「はいはい」

「心配だな……今度中学校訪問してこようかな」

「絶対やめとけ。嫌われるぞ?」

「それは大丈夫じゃないか?」

「どこからその自信が出てくるんだよ」


 妹に嫌われる未来なんてある訳がない。そんな未来があるなら全力でぶち壊してやる。


 ―ガラガラ


「はーい。学活始めますよ」

「先生来たか。戻るな」

「おう。また〜」


 先生が入ってくると、喋っていたクラスメイト達は自分の席に戻って行く。

 今日は始業式だから、これが終われば家に帰れる。今日はどこに寄り道しようかな。


「ねーいっくん」

「なんだ?」

「不思議だと思わない?」

「不思議?先生はいつも通り小さいぞ?」

「先生じゃなくて。隣よ」


 隣?特に何もない。あるのは机と椅子だけだ。


「別に何もないじゃないか?」

「何もないのが不思議なのよ」

「誰か欠席でもしてるんじゃないのか?」

「いやいや、クラス全員いるでしょう」

「俺はいちいちクラス全員の把握はしてないからな」

「久しぶりの登校なんだから、皆元気かな?とか気にならないの?」

「ならないな〜仲良いの諏訪と新くらいだし」

「私と渡辺君だけって……寂しいね」


 何その憐れんだ目は?いいんだよ。そこそこ話せるし、別にクラスメイトと仲が悪い訳じゃないし。


「私だって神社の手伝いで遊べない時あるし。渡辺君だって部活で遊べない日があるでしょ?そうなったら1人じゃない」

「そうなれば諏訪神社でお茶菓子を貰いに行く」

「うちは駄菓子屋じゃないんだけど?」

「え!飴とお餅と甘酒があるじゃないか」

「いつも用意してる訳じゃないから」

「そうだな。カステラや団子もあったな」

「よく私のおやつ奪ってたね」

「何を言う。おばさんがくれるんだ。俺は奪ってはいない」


 諏訪神社の一人娘である諏訪とは、小学校からずっと同じクラス。家の手伝いで遊びに行けないと悲しそうに言うから、一緒に帰るってあげると言ったのが始まり。その時に余り物だと和菓子を出してくれた。その後も当初の寂しがらせないと言う目的が、甘いものを食べに行く変わったのはいつからだろうか。


 ―ガラガラ!


「やぁ諸君。進級おめでとう。留年した友はいないようで私も安心だ」

「理事長先生?どうしたんですか?」

「今日は転校生がいるからね。私が自ら案内してきた訳さ」

「え?」

「え?」

「「「えぇぇぇ!?」」」


 いつも理事長は突然来て爆弾を投下していく気がする。手ぶらで遊びに来る事もあるが、今日は転校生を連れて来たらしい。


「あ。それで俺の横の席が空いてんのか。不思議は解消されたな」

「そうだけど。私、何も聞いてないよ」

「安心しろ。先生も聞いていないみたいだ」


 て言うか。クラスの担任に秘密にする必要はないだろう。理事長がこのタイミングで来なければ、解散して誰もいないとか考えなかったのだろうか。


「あ。女の子だ」

「そのようだな」


 理事長が黒板に何かを書く。名前なんだろう。しかしあんなデカデカと書かなくてもいいだろう。


「しんえんのしんさくら?」

「そんな名前な訳ないでしょ」


 漢字だけだとそう読んでもおかしくないだろう。深淵ってあんまり聞いた事ない苗字だし。


「えっと……あの!深淵 真桜と申します!皆様、よろしくお願い……します!」


 ふかぶちまおって読むのか。しんえんまおでもカッコいいのに。

 そんな事を考えているとクラスの雰囲気がピリつく。どこかの馬鹿が胸が揺れた事を口に出して、女子に反感を食らっている。

 む。あの子が涙目に?挨拶してこの雰囲気じゃ仕方がないか。仕方がないな……あまり目立つ事はしたくないが。


 ―パチパチ


 俺は拍手で場の空気を変える。すると諏訪がそれについてくると、周りも合わせて拍手をする。ピリついた空気は一気に歓迎モードになる。


「さすがいっくん。場の空気を変えたね」

「言うな。俺はあまり目立ちたくない」

「そう言っても人を助けちゃうのがいっくんだよね」


 諏訪が始めに拍手をした俺に気づき声をかけてくる。俺は彼女が泣きそうだからやっただけで、助けようとかそんな事は考えていない。


「え?なんっすか?」


 全員が俺を見てくる。どうやらあの転校生が俺の事を知っているらしい。


「どうしてあの理事長は厄介事を俺に押し付けるんだ……学級委員は2人いるじゃないか」

「私は神社の手伝いあるし。もう1人はあの子の隣を歩いてて守ってあげられないよ?」

「委員長聞いたら泣くぞ?」

「大丈夫。彼は自分をよく分かっているわ」


 指おさすと男の学級委員が俺に敬礼している。あいつ……後で覚えてろよ。


「あの時はありがとうございました」

「あの時がいつかは分からないけど。よろしく」

「はい!よろしくお願いします!」


 あの時とはいつだろうか。転校してくるって事は幼少期にこの地域に住んでたとか?それともどこかに行った際に何かあったか。ダメだな。かけらも覚えがない。

 隣の子を改めて見てみる。真っ直ぐ黒板を見ている目は真剣で、椅子に座る姿勢も本に載っているような座り方。長い黒髪は簡単に後ろで束ねてあって、清潔感もある。よく見るとまつ毛長いな最近の子は化粧もするらしいし、真面目そうに見えるが猫を被っているだけなのだろうか?


「…………」


 観察していると耳が赤くなっている。顔もどことなく赤いか?


「熱でもあるのか?体が怠いとかあるなら保健室行くか?」

「ひゃ!?ひえ。らいじょうぶれす」


 ひゃって……呂律回ってないし。もしかして突然声かけて驚かせたのかもしれないな。


「あ。すまない深淵さん。突然話しかけて驚かせた」

「いえ!すぅ〜はぁ〜大丈夫です」

「少し顔が赤く見えたから体調でも悪いのかと」

「大丈夫です。少しだけ視線が恥ずかしかっただけです」

「視線?あー転校生って皆に注目されるからな」

「「「(いやいや。ガン見してたのはお前だけだ)」」」


 何か今度はクラスの視線を感じる。そして目の前の席の諏訪と目が合う。


「いっくん自覚してる?」

「何がだ?」

「鏡で自分を見た事ある?」

「え?俺何か放送できない顔してたか?」

「そうじゃなくて〜容姿の事」

「おいおい。そりゃイケメンではないが、醜いと言うほどでも……」

「もう大丈夫です〜」


 そう言うと諏訪は前を向いてしまう。俺はただディスられただけか?なんだクラスメイトからの視線が刺さるぞ?


「はい。と言う訳で今日は解散!深淵さんは神野君に学校を案内してもらって」

「ちょ!?」

「良いんですか!?」

「あー……はい」


 そんなキラキラした目で見るなよ。断れないじゃんか。




 そして俺は今学校内を案内する事になった訳だが。時間も時間なので学食に来ている。


「ここが学食!って何ですか?」

「君の前にいた学校にはなかったのか?」

「ないです」


 まぁ学食がない学校だって……あるのか?昼を忘れた奴はどうするんだ?


「何食べようかな」

「俺はやっぱりカツ丼かな」

「ってか。ナチュラルにいるけど。俺がここにいる必要あるのか?」

「私は午後から委員会あるし〜」

「俺も午後から部活だし〜」

「……え?午後も案内するの?」

「え?逆に聞くけど学食案内して終わりにしないよね?」

「そうだそうだ。転校生が可哀想だろう」

「ぐぬぬ」


 午後は甘いものをリサーチする為に街に出るつもりだったのに。


「あ。ご用事があるのでしたら、私は帰りますから」


 そんな悲しい顔で笑うなよ。俺が悪者みたいじゃないか。


「そんな顔するな。案内はちゃんとするから。用事と言う程の事はないから」

「いっくん優しい〜」

「さすがいっくん!」

「お前がいっくん言うな」


 俺らのやりとりについていけてない深淵さん。不安そうな顔だってから、頭を撫でて落ち着かせる。


「きゃ!なでなで!」

「し!そこは見守らないと諏訪さん」

「いっくんはナチュラルにあんなこと出来るんだよなぁ」


 外野が何か言っているが気にしない。不安だったり機嫌が悪い妹はこれが1番有効だからやったまでだ。


「2人は放っておいて。何か食べたいものはあるか?と言っても始業式だからメニューはだいぶ少ないが」

「え?えっと……」


 本日のメニューと書いてある紙には、サンドイッチと牛丼とカレーの3種類。カツ丼がなくて嘆いてたやつがいたが。始業式に作ってくれるだけ感謝しろ。


 しかし……


「カツ丼ないけど牛丼でいいか」

「私はサンドイッチかな」

「「こ、これは……」」

「なぜ甘いものがないんだ……」

「どれも350円?」

「うちの学食は安いんだよ。大盛りとかは50円プラスだけど」

「昼食に350円!?」


 転校生は何にそんな驚いているのか。350円って安さ……


「そんな大金持ってないわ」

「小学生かよ!」

「へぇ!?」

「すまん。ついツッコミが」


 財布らしき小銭入れの中に入っていたのは、小銭で150円程だった。それじゃ飲み物買えるくらいだが。にしても高校2年生が150円って。


「板チョコ帰りに買おうとして、それしか貰ってない」

「……いっくんみたいだね」

「馬鹿をいえ。俺だって帰りにフラペチーノ飲むくらい入れている」

「遠足のおやつレベルなのは変わらんな」

「甘いな新。ベンティサイズだから700円も入っている」

「あーそうですか」


 なんだその反応は!最近の甘いものは、遠足のおやつレベルでは買えないんだぞ!


「深淵さんは今日奢ってあげるよ。帰りに買う板チョコ分は残しておきなよ」

「奢り!?でも初めて会った人にそんな……」

「大丈夫だよ。家のお手伝いでバイト代貰ってるし」

「すまないな諏訪。俺はサンドイッチでいいから」

「700円あるなら買えるでしょ?」

「そんな!350円じゃエスプレッソすら飲めないんだぞ!」

「コンビニでカフェオレでも買いなよ」

「ばっ!?いや、あれもあれで完成された美味さはあるんだが」


 そうなんだが!そうじゃないんだ!


「おや?シュクちゃんじゃないか」

「おばちゃん。俺はシュクじゃない。祝と書いてイワイだ」

「はは。知ってるよ。そうだ。卵があるからホットケーキくらいなら作れるわよ」

「頂こう。350円で足りますか?」

「サンドイッチの卵に入れた隠し味のホイップがあるんだけど。プラスで用意するなら50円貰わなきゃね」

「この商売上手が!ダブルで頂こう!」

「甘いものには躊躇なくお金を出すのね……」

「当たり前だ。ここのホットケーキは今日この場でしか味わえない。そして俺のためのホイップ……躊躇う余地もなし!」


 今日の俺は運がいい。たまたま来た学食でおばちゃんが当番の日。そして奇跡的にあったホットケーキミックスに、卵とホイップまで。


「ホットケーキ……」

「深淵さんもそれにする?」

「食べた事ないけど。甘いのかな?」

「なん……だと!?」

「え?食べた事ないの?」

「おばちゃんのパンケーキが初とは。真桜は運が良い」

「そ、そうなの?」

「おばちゃん。彼女にもホイップを」

「あいよ。彼女分はサービスしてあげるわ」

「おばちゃん。ありがとう」


 あとはおばちゃんの出来上がりを待つだけ。思わぬ収穫に俺はウキウキが止まらない。


「真桜は甘いものが好きなのか?」

「基本的には何でも好きだけど。甘いものはたまにしか食べれないから。何か特別感があるの」

「だよな!真桜は分かってるな」

「ちょいちょい。いっくん」

「なんだ諏訪?」

「何で転校生にいきなり名前読み?」


 名前読みに何があると言うのか。いきなり諏訪に引っ張られて影でコソコソ話が始まる。


「真桜って2文字じゃん。深淵って4文字な上に呼びづらくない?」

「そうだけど」

「それに名前で言えば俺は新も読んでるぞ」

「渡辺君はいいんだよ。私だけ上の名前……」

「あー仲間外れな感じがすると言うあれか。しかし諏訪場合名前は陽子と3文字だしな」

「昔は読んでくれたのに……」


 小学生の頃は陽ちゃんって読んでたが、いつからかその呼び方をやめたっけな。あれは確か中学の頃で、諏訪が恥ずかしいからと言ってきたような……ちらっと見ると微妙に涙目な諏訪。


「はぁ昔から細かいところでこだわるよな。陽でいいか?ちゃん付けは流石にガキくさい」

「うん!」

「やれやれだ」


 本人がそれでいいなら構わんが。


「渡辺さん。あれはどう言う事なんですか?」

「あれは色々と拗らせた末路だ」

「拗らせたですか。風邪でも引いているんですか?」

「おっと深淵さんもそっちの人か」

「え?」

「大きくなったら分かりますよ」

「むぅ。私はもう大人です」

「はは。そうだ……は!悪寒!待て!俺は何もしてない!いーわーいー!早く戻るんだ!俺へのヘイトが上がりだした」


 新が俺に早く戻るよう声をあげる。何がヘイトが上がるだ。そのまま引き付けてくれてもいいんだぞ。


「本当だ。渡辺君を見る視線が怖いね」

「そのまま俺から逸らしてくれ」

「渡辺君死んじゃうよ?」

「俺は勇者じゃない……今は」

「友達でしょ?」


 なぜ俺にヘイトが集まっても問題ないのか。それは分からないが、安全な学校生活を送る為にはこの世界でもある程度背負って生きていかないとか。


「ホットケーキおまち!ホイップは自分でやってくれ」

「ありがとうおばちゃん!全部いただくぜ」


 このあと真桜のホットケーキにも芸術的なホイップを盛り付けて食べた。美味いと涙を流していた。

 当たり前だ。おばちゃんの味に俺のデコレーション!完璧なコラボ料理と言ってもいいだろう。見た目からすでに食事は始まっているんだ。

 ようこそ甘味の世界へ。あーうまい。

神野「俺もようやく……」

諏訪「私達は登場1話で名前出たわね」

渡辺「これは俺達の時代が来るかもしれないな」

神野「それはない。主人公はこの俺!」

諏訪「でも名前出て来たの前回の……」

渡辺「言うな諏訪。祝が気にする」

神野「俺が……主人公だもん」

諏訪「自分で言うと虚しくならない?」

渡辺「諏訪は抉るな〜あはは」

神野「面白がりやがって……ぐすん」

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