第52話 意外に緊張していた勇者
ちょこちょこ書いて、睡魔に負けて寝る。
暑くて夜寝苦しいのか?電車の揺れはいい感じで、冷房も効いてて……(_ _)
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こんなところに突然ドラゴンとかありか?
「あわわ!ドラゴンだよ祝君!」
「そうだな。ご丁寧に家を潰さず降りてくるあたり、何か思惑があるんだろうか」
「れ、冷静だね……ドラゴンだよ?」
「異世界だしな」
「そう言う問題?」
まぁドラゴンなんて異世界定番だし。てか、あれだけ荒らしたのにまだ元気なやつがいたのか。
「あ。なんかこっち見たよ?」
「あーあれはブレス吐くな」
「ブレスって!?大丈夫なの?」
「シャムの結界あるから大丈夫じゃないか?あ、誰か出て来た」
夜で少し見えにくいが、あのシルエットはレトだな。わざわざ出てくるところを見るに、結界だけでどうにかならんのかな?とりあえず窓を開けて様子を見てみよう。
「このトカゲ野郎がぁぁ!!!」
なんかキレてる。いつも温厚なレトが珍しい。
「ちょっとレト!1人じゃ危ないって!私の結界だってドラゴン相手じゃ危ないかもなんだから!」
ふぬ。どうやらあまり結界を信用してはいけないみたいだ。
「祝君!」
「仕方がない。あ。真桜はここにいてな」
「私もいくよ?魔力だって少しは回復したし。それにここに残るより祝君の近くの方が安全でしょ?」
「確かに。じゃ、俺の側を離れるなよ」
「うん!」
さてと。久々にドラゴンと戦う訳だが。武器はどうしようかな〜
「ガァァァァ!!!」
俺達を認識したか、ドラゴンが威嚇してくる。まぁそれだけで怯むような俺では……俺達ではない。
「うっせぇぇ!ぶっ飛ばすぞ!」
「レト落ち着きなって。これだけ煩ければシュウも来るはずだから……」
「もう来てるぞ」
「うわぁ!?びっくりしたー音もなく近寄らないでよ」
「癖みたいなもんだ。慣れてるだろ」
―キィィィ……
こっちに向けて大きな口を開けるドラゴン。口の中に光が集まる。
「レト〜ブレスくるぞ」
「落ち着きすぎでしょう!?私の結界そんな頑丈じゃないんだから」
「大丈夫だろう。もうレトが動いてるし」
「え?」
シャムの隣にいたレトは、ブレスが来ると教えた時に走り出している。この距離なら余裕で間に合うだろう。
「悠長にブレスなんか撃たせてもらうと思うな!」
「!?」
声に驚いたドラゴンがブレスを溜めながら、空へと逃げる。
「あ。コラ!空に行くなんて卑怯だぞ!」
攻撃して止めるつもりだったんだろうが、流石のドラゴンもそこまで馬鹿じゃないらしい。
そして真下にいるレトではなく、俺達がいる方に口が向いている。
「ちょっと!こっち向いてるわよ!」
「そうだな」
慌てるシャムをよそにゆっくりと剣を構える。
「シュウ!家を壊すことはするんじゃないわよ!」
「心配そっちなの?攻撃を防ぐのに、家が壊れるなんてことあるの?」
「甘いわね真桜。シュウよ?剣を振れば家の一つや二つ吹き飛ばすわ」
「俺をなんだと思ってるんだ?」
「破壊神?」
酷い言われようだ〜
「真桜もいるからな。危ないことはしない」
「本当に?」
「まぁ見てなって」
剣先を相手に向ける。後ろに剣を引いて……
「撃ち出す!」
―ビュゥゥゥン!ゴォォォォ……
「きゃ!」
「わぁ!?」
剣を投げた時に出た風で2人がよろめく。真桜をしっかり抱き抱え、転ばないようにする。
「ギャァァァ!?」
―ドゴォォォォン!!!
投げた剣が顎に刺さり、溜めてたブレスが暴発。予想通り爆散するドラゴン。
「硬いなぁー。少し手加減したからとは言え首くらい落とせるかと思ったけど。寸前で顔振って避けたんだな。腐ってもドラゴンってところか……それなりに知能もあるんだな」
「ちょっと私も支えなさいよ!」
「あーすまん。気が回らなかった」
「破壊神とか言ったの根に持ってるのか!小さいぞ勇者!」
「黙れ聖女。俺のモーションから予測して結界でも張るんだな」
「シュウの攻撃を防ぐ結界なんか、一瞬でできる訳ないでしょう!」
「まだまだだな」
「あーむかつくー!久々だからこそ尚のこと!」
俺の攻撃にふらつき転んだくらいで大袈裟だな。それに全力じゃないんだから、シャムなら結界張れるはず。どうも自分の魔法に自信がないのは昔からか。
「祝君。ドラゴン放っておいていいの?」
「ん?地上に落としたからな。あとは任せて平気だろう」
「それってどう言う?」
土煙で状況が見えていない真桜の為に、軽く剣を振り風で視界を確保する。
「うひゃ!?」
ついでにシャムも巻き込んだが、許せこれは事故である。ガミガミ何か言っているが、ここは指だけ刺して注意を逸らす。俺の指した先を2人で見る。
「うらぁ!こんなもんじゃないぞドラゴン!」
「ギャァァァ!!!」
現れたレトは剣を振り回している。本来なら両手で持つような剣を片手で振り回すんだから、筋肉に恋をしていると言われても仕方がないと思う。
「なんかドラゴンさん虐められてる?」
「まぁ絵としては一方的に斬りつけてるしな」
「レトってそんなに強いの?」
「あれだけ一緒に居たのに知らんのか?」
「だって強敵って言われる人は、シュウが瞬殺するし。私を守ってくれたりはしてたけど……あれ?そう言えば苦戦とかしてるの見たことないわ」
そう。いつもは優しくて距離感のおかしい男だが。戦闘で後ろを安心して任せられたのは、レトがいたからと言っても過言ではない。
「でも優勢ではない?あんまり効いてないように見える」
「ドラゴンだからなぁ。軽く投げた俺の剣ですら刺さるで終わってるし。レトの剣じゃ限界があるよな」
「そんなこと言ってないでなんとかしなさいよ。貴方一応勇者でしょう?」
「そうだな……こうして……これでよしっと。おーいレト!その剣書き換えたから使ってもいいぞ」
「おう!借りぃ……!?重い!」
ドラゴンの顎に刺さった剣を抜き、両手で担ぎ上げるレト。
「何したの?」
「魔法を書き換えた。俺の武器って使い方間違うと、街一つ消せるらしいから。イザナミに習って、帰投魔法かけてあるんだ」
「そんな物騒な物を投げたの?」
「だから手加減したって。本気で投げたらこの先にあるかも知れない街がなくなるだろう」
「…………え?よく私の別荘無事だったわね」
「凄いだろう?力を後ろにいかないように、分散したり大変なんだからな」
真桜が居るからこそ、そんな面倒なことをしてる訳だけど。誰もいないなら助走に踏み込みまでしておきたいところだ。
「今、頭で考えたことを実行するんじゃないわよ」
「別に俺は何も考えてない」
「どうせいつか本気で投げてみようとか思ってるんでしょう?シュウ、この世界を壊す気?」
「はっはっは。シャムは大袈裟だな。俺の全力にこの世界が負けるわけないだろう」
「人生で本気出したことある?まぁあったら……」
「あるぞ。しかもこの前」
「え?」
今思えばあのでっかい建物しかない場所はよかった。人の気配もないし、それなりに力を入れても壊れにくかった。全力か?って言われると少し抑えた気がしなくもない。けど生きてきてあそこまで頑張ったのは、あの時くらいだろうと思っている。
「祝君、何があったの?」
「それがさーこっちの世界に来る時に、白い建物ばかりで人がいない場所に行ったんだよ。屋根伝って走っても同じところをぐるぐる回るし」
「屋根伝って走る……」
「そこで何かされてると感じた俺は、遠くに見える塔が怪しいと思ったんだ。だからちょっと本気で魔法をぶっ放した」
「気づいてから結論までがぶっ飛んでるわね」
「そうか?誰もいないしいいかって撃ったら塔が折れて、落ちてくる塔を粉砕してたら空間が歪んでて。それに飛び込んで気がついたら魔王城の空って訳さ」
「それであの時、屋根壊して入ってきたんだね」
「…………また壊したんだ」
なんかシャムが呆れたような顔をして、俺を睨んでくる。
「まぁ短くまとめるとそう言うことだ」
「全力だったかどうかは分からないけど。何も考えずに楽しんだってことは分かるわ」
「おう。あんなに乱発したことないから楽しかったな」
「乱発……」
「でも折れたって言ってた塔が祝君に落ちてこないでよかったね」
「落ちてきたぞ?まぁ魔法で粉々にしたけど」
「シュウの口からは壊すとか粉砕とか、とにかく物を壊す話しか出てこないのは何故かしら?」
「それは治癒魔法が使えないから。人を救うとか勇者っぽい話はない!基本方針は怪我をさせる前に危険を除去するタイプだからな俺は」
おいおい。その目は何だ?俺は今までもそうやって脅威になりそうなものを潰してきたはず。やってることは昔から変わってないと言うのに。
「もうやめてぇぇぇ!?」
「誰の声だ?レトじゃないよな」
「あれよ」
あれ……あーあれか。攻撃全然こないから、忘れてたわ。
「ごめんなさい!もう許してぇぇぇ!」
「こんなんで許すとでも?俺の大事な時間を邪魔したお前には、生きる価値などない」
「ひぃぃ!?」
「はいはい。終わりだレト」
今まさに振り下ろされる剣を掴んで止める。
「シュウ……」
「喋れるなら色々と聞ける。これは生かしておくべきだ」
「そこの人は理解があるな!我を生かすのは世界にとって必然!」
「…………話を聞くまで生きてるくらい許してやれ」
「え?聞くまで?」
「それなら仕方がない」
「え?ちょっと?」
「素直に吐かない可能性があるから、俺が直々に話を聞くとしよう。あー安心しろ。剣は殺しちゃうからしまう。俺は素手で十分だ」
「ひぃ!?いやぁぁー……がふぅ!?」
ドラゴンがあまりにも偉そうだったから、どちらが上かしっかり教育を施した。
その後は聞いたことをすんなり……喋らなかった。
「話したら殺すじゃないですかぁ!?」
「偉そうだったし」
「もう偉そうにしないから!」
「しないから?」
「い、致しません!」
「もういいじゃない。話が進まないから終わったら帰してあげれば」
「しかしコイツは……」
「今日きりって訳じゃないんだし……ね?」
「あい。分かった」
「懐柔はやー」
シャムの一言にレトが許したらしい。デレ期か?2人はやっぱりそう言う仲なんだろう。まぁ今はそれに対して突っ込むほど空気が読めない訳ではない。
「シャムに感謝しろよトカゲ野郎」
「はい!ありがとうございます!」
「さらに従順になったな。まぁ話は聞きやすいか」
と言っても予想と一緒か確認するだけだけど。
「魔王か?お前に命令したのは」
「はい。魔王は突然龍の郷に来たのが始まりでして……魔王は……」
「その話長いか?真桜も寝かせたいから、ドラゴン事情は省いてくれ」
「酷っ!?少しくらい聞いてくれても……」
「魔王が犯人なら細かい事情とかどうでもいいんだよ」
「どうでもいいって」
「倒せばそれで済む話だ。よし寝るぞ。あードラゴン」
「はい。なんでしょう?」
「俺らが起きるまでこの屋敷を守ってろ。俺らは寝る」
「酷っ!?話を聞いたら帰してくれるって」
「俺は言ってないぞ。一夜ぐらい死ぬ気で守れ、なんか他にもなんか来そうだし。面倒……万全な状態で魔王城へ行きたいじゃないか」
「今面倒って?」
あー聞こえない。これ以上は時間の無駄だと、真桜を抱えて寝室に戻る。シャムはレトが一緒だから、放っておいて大丈夫だろう。
「ちょっと!?我が寝込みを襲う……」
窓から顔を出して、軽く殺気混じりの目で睨む。
「この命に変えてもお守り致します!」
「それでいい。さぁ疲れただろう?寝ようか真桜」
「この状況で寝れる?私はそんなに……」
「布団に入ろうな〜」
「もう子供扱いしないでよ」
今日は色々あったし。きっと疲れているだろう。真桜をベッド寝かして頭を撫でる。くすぐったそうにしてたけど。寝息が聴こえてきたので、俺も隣のベッドに飛び込む。
「あーそう言えば、全然寝てないな。ふぁ……」
その夜、俺は緊張の糸が切れたかのように眠りについた。
真桜「寝たかな?」
祝「すぅ……すぅ……」
真桜「やっぱり疲れてたんだろうね。私のためにいっぱい頑張ってくれてありがとう」
ドラゴン「でやがったな!マスターの安眠は我が守る!ガァァァァ!!!」
真桜「叫ぶのなし!」
ドラゴン「ひゃい!」
真桜「ふぅーこれでゆっくり休めるよね」