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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第1章 出会う2人の道
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第5話 緊張する魔王

アニメが終わると季節の変わり目だな〜って感じる。まだ暑い日があるから夏なのか秋なのか微妙な環境ですけど(・x・)


読んでくれてありがとうございます(*'ω'*)

 今日はこの世界に来てから1番大変な日になるだろう。それはと言うと……


「似合うじゃないか真桜ちゃん」

「そう?変なとこないかな?おばちゃん」

「どこからどう見ても素敵な女子高生だよ。少しスカートが長いかね……どれ」


 そう言うとグイッとスカートを上げる。ちょっとこれは短くないですか?下着見えちゃうんじゃ?


「まぁ初日だからね。あまり短くしすぎてもしょうがないかね。でも最近の子はこれくらい当たり前だよ」

「そうなんだ。これ見えないかな?」

「突風でも吹かない限り大丈夫だよ」


 足元スースーする。でも周りがこのくらいなら、それに合わせる方が良いよね?


「真桜さん。素敵です」

「ありがとう爺や。でも泣くまでしなくて良いから」

「忘れ物はないかい?」

「手帳と筆入は持ってます」

「鏡とか櫛は持ってるかい?」

「え?それもいるの?でもお手紙には何も書いてなかったよ?」


 そんなの持ち物に書いてなかった。どうしよう。今から買い揃える時間はないよ。


「それは乙女の必需品だよ。ないなら明日までに私が用意しとくよ」

「そうなんだ。ありがとうおばちゃん!」

「真桜ちゃんはピュアなんだね〜任せな!私が一人前の女子高生にしてあげるわ!」

「よろしくお願いします」


 よく分からないけど。おばちゃんに任せればきっと大丈夫よね。この国の情勢にも詳しいし。


「それではいってきます!」

「あいよ。気をつけてね」

「あー緊張します……」

「なんで爺やが緊張するのよ。通うのは私なんだけど」


 おばちゃんに見送られて、私と爺やは高校へ向かう。今日は始業式と簡単なホームルームだけみたいだけど。初日って事もあって、保護者である爺やも一緒に行く事になっている。


 高校はおばちゃんのアパートから、徒歩で行けるところにある。もっと遠い所だと電車とかバスで通う人もいるみたい。

 電車はこの前の休みに1度乗っただけだから、1人で乗るのはまだ怖い。降りる駅を間違うと遠い所まで運ばれてしまうって、おばちゃんに教えてもらった。


「それにしてもこの国の樹々は綺麗よね」

「これは桜と言う木みたいです」

「私の名前に入ってる植物ね。ピンク色で可愛い植物で良かったわ」


 魔界には動き出す奇妙な樹々が多い。それらは決まって黒かったり、うねっていたりと可愛くない。木によっては人を食べるものもあった。


「あ。あれじゃないですか?」


 桜を眺めながら歩いていると目的地である高校が見えて来た。1度下見で歩いてみたから間違いない。


「ん?始業式まで時間がないぞ。急げー」


 校門の前に立っている男性に声をかけられた。


「すみません。本日からお世話になります深淵と申します」

「あー転校生の。話は聞いてます。迷うと大変なんで、案内しますよ」


 そう言うと男性は近くにいた同じ制服の人に声をかけている。


「あの。お勤めは大丈夫なんでしょうか?」

「はは、勤めって。まぁ風紀委員に任せれば大丈夫ですよ」

「そうでしたか。それではよろしくお願いします」

「若いのにしっかりしたお嬢さんですね」

「お褒め頂き感謝致します」

「ふむ。きっとお父さんの教育がいいんでしょうね」


 男性は爺やを見てそう答える。


 お父さんはもう居ないけど。爺やはもう1人のお父さんって感じ。口うるさい時はあるけど、私のためと色々と教えてくれる。


「そうです。お父さんは凄いんですよ」

「はは。娘さんにそう言ってもらえるなんて、羨ましい限りですね」

「はは。娘ですか……本当に嬉しく思います」


 爺やはどこか悲しそうであるけど。でも嬉しそうにしている。




 そして案内されたのは理事長室。


 ―コンコン


「理事長。転校生をお連れしました」

「どうぞ〜」


 ―ガチャ、ギィ……


 扉の中は日差しが差し込み、大きな机の前に1人の女性。そして机の上にはさまざまな書籍が並べてある?


「またこんなに散らかして……校長に怒られますよ」

「いいんだよ。これは後で読むから」


 並べている訳ではなく、ただ片付けていないだけだった。見れば本棚にある本も乱雑に入れてある。これじゃ読みたい時大変じゃないのかな?


「散らかっててすまない。これがうちの理事長です」

「これとはなんだね」

「初めまして。深堀です」

「うん。おばちゃんから話は聞いてるよ」

「おばちゃんと知り合いなんですか?」

「朝ごはんを抜いてふらふら歩いてたら、おばちゃんにお菓子を貰ってね。それ以来学園に通う時にたまに貰うんだ」

「おばちゃんらしいですね」

「そう。あの人は基本親切なんだ」


 おばちゃんは行き倒れそうな私達にもご飯をくれた。きっといつもあのアパートの前で人助けをしているのかも知れない。


「それじゃ。学活まで時間あるから、お茶でも出すよ」

「そんな理事長に出してもらう訳には」

「では私が入れましょう。場所だけ聞いても宜しいでしょうか?」

「本当に?じゃお願いするよ」

「理事長……転校生の保護者に。しかも初対面ですよね?」

「おばちゃんの知り合いなら、私とも知り合いって事で!なんかただならぬ雰囲気を感じるんだよね。きっと入れるお茶も美味しいと思うんだ」

「はぁ……すいません。私が入れます」

「いえいえ。慣れてますから。お任せ下さい」


 爺やは給湯室に案内してくれた先生と行ってしまった。


「まぁ転校って中々しないから、慣れないと思うけど。リラックスしていこう」


 少し緊張してるのを気遣ってくれたのかな?長がつくくらいだからこの学校の偉い人なんだろう。これからお世話になるし、仲良くなっておこう。


 爺やが入れた紅茶を2人で飲み、おばちゃんがくれたらしいクッキーもご馳走になった。


「へー外国から来たんだ。それでおばちゃんに助けられて、ここに来た訳なんだね。本当におばちゃんは皆の救世主だよね」

「救世主!?おばちゃんは勇者だったんですか!?」

「勇者?そんな肩書きの人は漫画やアニメの中だけでしょう。君、面白い事を言うんだね」

「真桜さん……」

「あ。ごめんなさい。変な事言って」

「いいよいいよ。否定はしないよ。きっとどこかに勇者様はいるかもしれないし」

「理事長さんは会った事が?」

「勇者は…………」


 これはこの学校に来て正解だったかも。こんな簡単に勇者の情報が分かるなんて!この理事長の顔は、過去に勇者と一戦交えたような迫力がある。


「色んな勇者を見てきたわ……」

「え!勇者は何人もいるんですか!?」

「ええ。いるわよ」


 そんな……1人でもお母さんが逃すくらいなのに。何人も勇者がいたら生存なんて出来る訳がない。


「幼い頃に父を殺された勇者……花嫁を2択にさせられたのは悩んだわ」

「殺され……でもちゃんと立ち上がったんですね。でも花嫁が2択?」

「それと外せないのがクリスタルに選ばれた勇者ね」


 クリスタル……何か大きな力を感じる。


「あとは傭兵やってからのレジスタンスって言うのも面白いよね。でもやっぱり見習い召喚士の護衛なんてのも有りだったわ」


 傭兵からのレジスタンスって何?って言うか、召喚士なんてこの世界にもいるの!?


「それは困りますね」

「おー深堀さんもいける口?」


 ―キーン、コーン、カーン、コーン


「おや?もう時間だね。この話はまた今度。今は教室に案内するよ」

「はい……今度はもっと対策をしておきます」

「私も時間があったらやっておきます」

「ありがとうございます」

「ありがとうって。自分が満足する為だって。お礼は不要だよ」


 なんと出来た人なんだろう。会って間もない人にここまで出来るなんて。やっぱりおばちゃんが言う通り、この国は助け合いが出来る素晴らしい国なのね。


「爺や。今の話……」

「しっかりメモをとりました。これだけのワードがあれば調べる事も可能でしょう」

「頼んだわよ」


 理事長室を出て、後ろを着いて行きながら爺やと勇者の話を確認する。


「しかし勇者が1人ではないとは……」

「盲点だったわね。戦う事になればやはり仲間は必要よね」

「そう!仲間もいい味出してんだ〜」

「勇者は単独では?」

「甘いねおじ様。単身突撃してくる勇者なんていないよ」


 私達の世界の勇者は単身突撃だと聞いていましたけど。もしやここ世界には情報がないのかな?


「色んなジョブがいて、1人じゃできない事を助け合うんだよ」

「助け合いですか……ここ国らしいですね」

「国?あーそうだね〜どこの国も切磋琢磨してるしね。次のシリーズも待ち遠しいよ」


 シリーズってなんだろう?待ち遠しいって言うって事は、もしかして近々勇者が現れたりするのかしら?


「まぁ私は魔王とかラスボスも好きだけどね」

「魔王も複数いるんですか!?」

「いるよ〜魔王がいるから勇者がいるんだよ」

「その話詳しく!」

「あ。もう着いたから、次の機会にとっておこう。ほらほら、君の初陣だ。しっかりやるんだぞ」

「ちょっと!?私はもっと話を……」


 ―ガラガラ


「やぁ諸君。進級おめでとう。留年した友はいないようで私も安心だ」

「理事長先生?どうしたんですか?」

「今日は転校生がいるからね。私が自ら案内してきた訳さ」

「え?」

「え?」

「「「えぇぇぇ!?」」」


 始めのえ?は担任の先生。そして次は理事長。最後にクラスの人達。どう言う状況?


「先生!転校生とか聞いてませんよ〜」

「そうですよ。教えてくれても良かったのに」

「せ、先生も聞いてませんよ!」

「「「あーなんだ。理事長のせいか」」」

「おい。お前達!なんだその反応は!」


 私の話はどうやら内緒だったのか。ただの通達ミスなのか。


「細かい事はいいだろう!学年主任には話は通してある!」

「担任の私に情報が来ないって問題ですよ?」

「君なら1人増えても大丈夫だ。素直で良い子だ」

「そう言う問題でもなくてですね」

「席を1つ用意していたはずだが……あるな。おーい、入ってきてくれ」


 あ。呼ばれました!どうしよう!皆様は私が来る事を聞いてないし。招かれざる客ではないのでしょうか!?


「真桜さん。堂々として下さい」

「爺や……」

「いってらっしゃい」


 爺やに背中を押されて教室に足を踏み入れる。


「お!女の子だ」

「細くてモデルさんみたい」

「おいおい。なんだあの……」

「言うな。女子から干されるぞ」


 皆が私を見て何か言っているみたいだけど。緊張して頭真っ白な私は聞こえていない。


 ―カツカツ……カン。


 理事長が黒板に私の名前を書いてくれる。そんなデカデカと書かなくても……


「深淵君。皆に挨拶してくれ。ついでに担任の先生にも」

「私はついでなのですか?」

「えっと……あの!深淵 真桜と申します!皆様、よろしくお願い……します!」


 何を言えばいいか分からないから。とにかく元気いっぱい挨拶して頭を下げた。教室はシーンと静まりかえる。


「揺れた……」

「ばか。今ここでその感想は……」

「男子最低……」


 え?私、何か間違った?なんでこの雰囲気?


 顔を上げると涙が少し溢れそうになる。


 ―パチパチ


 クラスの端っこにいた男の子が、パチパチと拍手をするのが見えた。あの人は……

 するとまばらに拍手の音が増えていき、教室は一気に騒がしくなった。


「ようこそ!2年A組へ!」

「いらっしゃ〜い」


 さっきまでの空気を一気に消すくらいの存在感……は何か薄い気がするけど。でもあの人が最初に拍手をしてくれた。


「あの人……」

「ん?知り合いでもいたかね?」

「知り合いと言う訳では。以前の助けて頂いたことがあって」

「どれ?」


 言われたので、席の後ろにいる男の子を指差す。するとクラス全員が後ろを振り向く。


「え?なんっすか?」

「神野なら確かに何処かで人助けしてそうだな」

「なんだいっくん。いつの間にあんな可愛い子を助けたの?」

「知らない。それに俺は別に人を助けてるつもりはない」

「無自覚だもんな〜」


 教室の雰囲気が柔らかくなるのが感じられる。あの男の子はきっとクラスで人気者なんだろうな。


「それじゃ神野!お前の横をわざわざ開けておいた。助けてやってくれ」

「そんな投げやりな……学級委員でいいじゃないっすか」

「学級委員が他のクラスの男の子達から、嫌がらせをされても困るだろう」

「俺はいいんですか!?」

「お前が世話や案内をしていても、皆は何とも思わんだろう。また助けているんだろうで終わるし。結果的に他の男子が嫉妬に狂う事もない。学園は平和。素敵じゃないか」

「なんでそんな妄想が出来るんですか?皆も話がおかしいと思うよな?」


 ―ブンブン


 クラスで全員が首を横に振る。


「いっくんなら。別に異性に興味持たないし」

「おい。その言い方やめろー。俺はノーマルだ」

「神野君なら安全だし」

「別に俺はガードマンでもないんだが?」

「神野なら暇だし。いいと思うよー」

「おい。そこは否定しないけど」

「では決まりだな。では後は頼むよ先生!私は深淵君の保護者様を案内してくる。さらばだ諸君!」


 軽い感じで教室を後にする理事長。爺やも少しだけ中に入り、クラスにお辞儀だけして出て行った。


「今のおじ様カッコ良くない?」

「ね!清潔感のある素敵な人だったね」


 コソコソ爺やの事を話している女の子がいる。褒められているのを聞くと私も嬉しくなる。目が合ったので、笑顔で返した。


「あー遺伝子は引き継がれてるわ」

「可愛いって内側から溢れるものなのね」


 よく分からない事を言っていたが、手を振って笑顔で返してくれたので印象は悪くないはず。


「突然こんな事になってごめんね。席は神野君の隣でお願いね」

「はい!ありがとうございます!」


 皆様の間を通って、1番後ろの席の男の子の横に座る。


「あの時はありがとうございました」

「あの時がいつかは分からないけど。よろしく」

「はい!よろしくお願いします!」


 緊張していた感情もどこかにいきました。私は今日からこのクラスで頑張っていくと思うと、今度はワクワクして胸が高鳴っている。

真桜「今回は思い出すだけでも吐きそう」

爺や「挨拶も良かったですよ。この姿をお母様にも見せたかったです」

真桜「……辛気くさくしないでよ」

爺や「失礼しました。これを記録出来れば良かったのですが」

真桜「子供じゃないのよ。そんなのしなくていいから」

爺や「仕方がないので私の心に焼き付けておきます」

真桜「爺や……最近お父さんに似てきたよね」

爺や「ほほ。それは身に余る光栄です」

真桜「皮肉なんだけど?」

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