第48話 世界を壊す勇者
やっとこ書き上げられた……その中には睡魔やいろんな誘惑が……
シュタゲを全話見直して、お話の素晴らしさを取り戻した。さてまた書き始めようと思います。
読んでくれた皆様!
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ありがとうございます(*'ω'*)
どうしたことか。真桜がじっと俺を見てくるんだけど。
「そ、そんな見られると……」
「あ、ごめん!魔法撃ってる姿が格好いいなって」
「っく!」
「そんなこと言われたら…………頑張っちゃうじゃないか」
「わぁー凄い凄い!」
効率重視で適当な魔法撃ってたけど、真桜が喜ぶから色んな属性に切り替えて撃ってみた。それを見た真桜は、綺麗だねって言ってくれたから少し爆発性のある派手な魔法に変えた。
「これはダメな方向に進んでるのが、魔法素人の私でも分かるよ。真桜がいっくんを人に戻すだっけ?どんどん魔王に近づいてる気がしてならないよ?」
「どうしてああなった……それにしても魔族が一向に出てこないのは、シュウが魔法をぶっ放しているからとして。あの歪みは消えないのは何故だろうな」
「何か目的があるのではないかと思います」
「あ、起きたんだ」
「酷い目にあったよ。もう祝の近くにはいきたくない……」
勇志は復活して、そそくさと俺から離れていった。また魔法を撃つたび気絶されたら邪魔だし、そうして貰った方が助か……る?
「なんか変だな」
「何が?」
「あの歪みって言うのか?なんで閉じないんだろう」
「シュウも気になったか」
調子に乗ってバンバン魔法を撃っていたが、違和感を覚えて魔法を止めた。するとナギが近づいてきた。どうやらナギもこの現象に疑問を持っているのかもしれない。
「魔族は来なくなったな。きっと何か問題があったんだろう……その何かは分かるがな」
「俺は向かってきたから叩き落としただけだ」
「別にそれを責めてる訳じゃない。ただあの歪みが消えないのが気になってな」
「少し待てば何か起こると思うけど。あれどうにかして閉じれたりしないのか?神様だろう?」
「出来ていればやっている。あの手の魔法は間違えば歪みが広がり、最悪……どうなるか知らん」
「神様が知らないって、リスク半端ないな」
俺の魔法で壊れたり広がってないのを見るに、力ずくで破壊は出来ないんだろう。あれには何かあるんだろうけど、ナギに出来ないのであればお手上げだ。
「ん?何か来るぞ……今度は馬鹿でかい魔力の塊が!?」
ウォーブが何かを察知したか、大声で空の歪みを指さす。ナギに視線を送ったが、ただ首を振るだけ。
また先手で魔法を撃ち込むことを考えたが、それでは状況は何も変わらない。ウォーブが言うに馬鹿でかい魔力の塊がって言っていたし、威力あげた魔法ってなるとそれこそどうなるか分からない。
「今回は様子を見るぞ。何が来るか分かんないから、全員戦闘準備だけしておけ。そして桐花とファイブは下がれよ。絶対に突っ込むなよ」
「了解師匠!」
「俺がそんな馬鹿みたいに突っ込むか。なぁウォーブ?」
「…………そうだといいな」
「なんだその間と言葉は。俺が突っ込むやつみたいじゃないか」
「あーうん。そう言うやつだろ?」
「ウォーブ。ファイブを羽交締めにしてろ。決して話すなよ?」
「りょうか…………え?」
「ほら。祝君がくれたチャンスだよ。この機会を何もがしちゃダメなんだよ」
別にそんなつもりはなかったんだけど。結果的に合法的に抱きつけるってやつ。しかしいつも察しがいい方ではない真桜も、こと他人の恋愛には敏感なのなは謎だな。
「うわぁぁ!?」
「あれは……」
「伊邪那美!!」
歪みから1人の女の子が叫びながら落ちてくる。誰かよく分からないが、ナギはすぐさま判別して飛び出していった。
「ナギはあんな小さいのよく見えるよな」
「声とか伊邪那ちゃんだったよ?」
「そうだったか?まぁナギが走っていったんだから、そっちはなんとかなるとして。次に誰か来ないか警戒を……」
―カサッ
茂みが動いた気がして、そっちを警戒していると目の前から伊邪那が出てきた。
「お前、ナギはどうした?」
「私を受け止めて下敷きにしちゃってさ。のびてるから、置いてきた」
「お前を助けにいったのに。報われないなナギは……」
「いいのよ。私を助けられたんだし。そんなことより大変なのよ!」
「何があったんだ?」
「こっちと向こうを繋げようとしたんだけど、それが失敗しちゃって。連れてこようとした援軍が全滅して。先行隊の生き残りが言ってたけど、眩しい光に潰されたって」
考えてみる必要もないくらい原因がはっきり分かる。だって俺が魔法をぶっ放した訳だし。ビームつもりだったけど、見た人からすると光に潰されるって表現になるんだな。
「って事で、行くわよシュウ」
「俺の了承を得る前に引っ張るなよ」
「あんなとんでもない事態に対応出来るのは、シュウしかいないでしょう」
「いやーすっげー言いにくいんだけど……原因は俺な訳だし。そんな急ぐ必要はないんじゃないか」
「何言ってるのよ。そう言ってただ行きたくないだけでしょう?前はあんなに戻りたいって言ってたのに」
戻りたい。言われてみれば俺は異世界に戻ることを前提に動いていたはず。それがいつからか変わっていた。まぁ理由は一つしかないけどな。
「どうしたの?」
「いや。なんでもないよ真桜」
「……そうか!ならこうしよう!」
俺を引っ張るのを諦めた伊邪那は、隣にいた真桜を抱き抱えて……
「「え?」」
「行くぞ!時間がない!」
「は?え?」
あまりの出来事に一瞬フリーズした。伊邪那が真桜を抱えて走り出した。
「いっくん!」
陽の声に事態を把握する。行くってきっと異世界だろう。魔王である本人が行くのはまずいだろう。
「ウォーブ!皆を守ってくれ」
「なんで俺が……」
「任せろ勇者!桐花とその友は守ってやる」
「おい、ファイブ……俺達の目的は魔王を倒すことだろう?」
「違うぞ?強い相手を探してるんだぞ。そして俺は出会ったんだ。桐花と言う好敵手をな」
「僕は守られるだけじゃないからね。逆に僕が守ってあげるよ」
「言ってろ!」
―ガシッ
2人が熱い握手で睨み合う。仲が良いことで。
「いっくん。行きなさい。こっちはなんとかするわ」
「いつもすまん!頼んだ陽!」
「…………いってらっしゃい」
こっちの世界にはナギもいるだろうし。ファイブとウォーブがいるなら、万が一に魔族が入れ違いに来てしまってもなんとかなるだろう。
少し出遅れたが、伊邪那に追いつくくらい大したことはない……はず?
「っく。なんだあの脚力は?人1人を抱えて俺が追いつけない?」
伊邪那ってあんなに速かったか?そう言えばいつも俺が前にいたな。こうやって追いかけることなんて、一度もなかったからか?
「待て!伊邪那!」
「時間がないんだ!あれを維持してるのももう限界だ!」
「わわわ!速いぃぃぃ!」
「跳ぶぞ真桜。喋ると舌を噛むぞ!」
「あ!コラ待ちやがれ!!」
―ブゥゥン……
目の前で真桜と伊邪那が空間の歪みに消えていった。どうする?いや、考える時間すら勿体無い。
「いいぜ……行ってやるよ異世界」
俺は目の前にある歪みに飛び込むため、地面を思い切り脚を踏み込んだ。
「ぐふぅ!?」
何か踏んづけたかもしれない。まぁ今は気にしている場合ではない。
―ブゥゥ……
何かを通った。
そんな感覚はあるが、何も見えない。
暗いから?異世界を移動するってこんな感覚だったか?そう言えば意識がある状態で飛ぶなんて経験したことなかったかも。前に飛ばされた時は気を失ってたし。起きたら元の世界……
「おわっ!?俺寝てた!」
意識を持っていかれてた。俺は何分寝てた?そしてここは……
地面を見れば何か砕けた瓦礫の山。緑いっぱいの公園ではない。と言うことは、ここは異世界なのか?
辺りを見回しても何もない。
「そうだ……真桜と伊邪那が先に行っているはずだが」
立ち上がり辺りを歩いてみる。
「おーい!誰かいないのかー…………」
誰もいない。人の気配とか感じるのは苦手だけど。誰かがいる感覚はない。
「……ふむ。どこか高いところに登ってみるか」
周りは瓦礫の山ではあるが、無事な建物もある。俺は跳んで近くの建物の屋上に立つ。
「なんだよ……これ?」
高さからして三階建てのマンションみたいな高さ。しかしそこから見えるのは、見知った公園でも旅をした異世界とも違う。
「んーこれはどう状況か。右を見ても左を見ても同じ建物。違うと言えば……」
同じ建物が一定の距離で並ぶ中。それは人気は目立つ。
「中心には謎の塔って、もうあそこを目指す以外ないじゃん」
俺は屋根を伝って中心に建つ謎の塔に向かって移動する。途中誰かいないかと思ったけど、人どころか音すらしない。誰かが住むような場所なのに住んでない?
「一体ここはなんなんだろうな。しかし困ったな……塔に近づけないんだけど」
何度か試したけど塔と俺の距離は縮まらない。別に方角を間違って進んでいる訳じゃない。蜃気楼みたいなのとも違うし、認識が阻害されてる訳でもない。
「そこにあるのに、そこにない。やっぱり認識阻害か?どうしたもんか……」
下に降りて人を探すか?でも誰かがいるような感じはしない。下を見たら壊れた瓦礫がある。そうなればやることは一つか。
「ウォーターボール」
―ゴボゴボ……
真桜に魔法を教えてもらったけど、今回は人も何もない場所だから遠慮しないで魔法を作ってみた。
「狙うのは下の建物か?いや、あの塔でいっか。どうせ当たらんだろう。よいしょ」
上空に作ったウォーターボール。そして掲げた手を振り下ろす。俺はゆっくりと塔へ向かう魔法を眺めている。
「さて消えるかかな?それとも決壊みたいのに阻まれるか……ん?それにしてもどんどん小さくなっていくような〜」
―ドゴォォォ…………
塔に無事?当たってしまった魔法は、大きな音を立てて爆発した。魔法は当たんのか。なんて冷静に見てた俺。
しかし事態は思いもしなかった事態に発展する。
「あーあれ?やべーかも」
手を前に出して角度はやや上に……
「認識阻害にしては中途半端でリアルすぎんだろ!?」
魔法が当たった場所はぽっかりと大きな穴が空いていた。高い建物の真ん中がなくなったらどうなる?そんなの簡単だ。
「俺の方に倒れてくる!?仕方がない!なるようになれだ!」
―キィィィ…………ズガァァァァァン!!!
「ふははは!やったるぜ!吹き飛べーーー!!!」
……。
結果。俺は生きている。多分きっと。
目の前にあった塔は半分くらいなくなった。塔だったものはチリとなったか、俺の後ろに山積みになった瓦礫だけ。
「だが、得るものはあった。俺は歪みだよな」
空を見れば公園で見た歪みが見える。このままここにいても状況は何も変わらないと思った俺はその歪みに飛び込むことにした。
「どっちの世界に行くのかな〜なんかこう言うのワクワクするよな。っしゃ!」
気合い十分。俺は歪みへと跳び、足元がなくなる感覚と目の前が真っ白になる。
程なくして、冷たい空気を感じる。目を開けているはずだけど、景色が見えない……いや、少しずつ分かるようになってきた。
ここは……
「雲ひとつない快晴な空。そして大きな平原に遠くに見えるのは街と城。間違いないここは俺がいた異世界だ」
一つ誤算があるとすると、俺は今いる場所である。
「落ちてるなぁ〜空に飛び込んだんだから、出口が空なのも当たり前なのか?えっとあの杖どこ言ったかな……なんか秘密道具探すあの人の気持ちがよく分かるわ〜」
まぁそのまま着地しても死なないとは思うけど。世界の地面が耐えられないよな。そうなると色々と面倒だし。
あ、あったあった。これで無事に着地出来そうだ。
―フワッ、スタ。
「んー無事着地」
「んー無事着地。じゃないっしょ!平原抉れてるんですけど!?」
「おー久しぶり。元気してたか?そんな事態でもないか?」
「あぁ。お前がいなくなって、世界はだいぶ平和だったぞ」
「そうか。魔族が暴れて大へ……ん?俺?」
「そりゃそうだろう。お前以外に誰が王都への道を吹き飛ばすんだ?これ、整備すんの大変なんだからな?」
俺の思ってたのと違うな。こいつの反応はいつも通りだけど。
「まぁ気にするな騎士団長!懐の深いところを見せてくれ」
「お前のおかげで今月の給料がなくなりそうで、懐が浅くなりそうだ」
とりあえず俺は異世界に戻ってきた。
そして騎士団長に出会うことも出来た。幸先はいいんじゃないかな?
さてこれからどうするか。俺は見慣れた空を見上げて考えをまとめることにする。
シュウ「しかし平原のど真ん中にこんなクレーターが?」
騎士団長「お前のせいだろう」
シュウ「そんなバカな。魔法を使って、そっと降りて来たのに」
騎士団長「そこじゃない。もの凄い光が空から落ちて来たと報告があり。たまたま門の近くにいた俺が馬を走らせると……お前が降ってきた」
シュウ「ふむ。俺、関係な……」
騎士団長「お前の大好きな魔法だったな。なんだっけかな?ソーラーレイ?スターライトだっけか?」
シュウ「あれに名前なんぞない。ただの魔法だ。なんだその恥ずかしいネーミングセンスは?」
騎士団長「お前がやったんじゃないか!」
シュウ「ふむ。あの威力を受け止めるとか。異世界の大地も凄いな」
騎士団長「そこは感謝だな。危うく勇者に世界を壊されるところだったよ」