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生きたい魔王と逝きたい勇者  作者: みけな
第2章 向き合う2人の道
47/52

第47話 慣れてしまってる魔王

ゴールデンウィーク!世の中は29日から間に2日休めば……大型連休!?

私は29日から4連勤だったけどね!

羨ましくなんてないんだから(`・ω・´)


読んでくれた皆様!

ブックマーク、評価、いいね。くれた方々も。

ありがとうございます(*'ω'*)

 治癒が出来るようになってからも訓練は続いていた。そして私の訓練はと言うと……


「それでね。祝君は……何かありました?」

「いや。器用なもんだと思ってな。魔力付与しながら普通に会話が出来るなんてと」

「そうですか?どれくらい魔力があるか感じていれば、あとは減ったら補充するだけですよね?」

「そのだけが出来ない奴がいるんだが」

「ん?俺のことか?」

「他に誰がいる。真桜よ、何かコツとかあれば教えてやって欲しい」


 祝君は魔力を調整できない訳じゃないはず。あの魔法は慣れてないと言うか、体に馴染んでない感じ。子供の頃から魔力に触れてきた私と違うのは、仕方がないことだと思う。でもそれをナギ様に言う訳にもいかないから。


「コツがあればいいんですけど。魔法って結構感覚でやってしまうので」

「水で良ければ俺が教えよう」

「え?いいのか?」

「あぁ。ファイブの怪我を治してもらった借りを返すだけだ」


 本当は私が教えたかったのに……


「これは魔王様から教わったんだが、勇者はウォーターボールは使えるか?」

「初級魔法だろ?それくらい使えるよ」

「では一つ作ってみてくれ」

「ほい」


 ―キュィィィ……ギュルン!


 手を上に伸ばして魔力が集まる感じがしたと思ったら、中心に水が吸い込まれるように集まる。


「今、水が出す音じゃないよね?なんでギュルンとかするの?」

「魔王も気がついたか。おい勇者。何をした?」

「何って水を集めただけだけど?」

「軽く言っているが、なんでそんなデカくする必要がある」

「ウォーターボールだろ?間違ってないと思うけど」

「……魔王。ウォーターボールやってみてくれ」

「え?うん。ウォーターボール」


 ―チャプン……ブクッ


 よく分からないけど。私が知っているウォーターボールを出してみた。


「そうそれだ。ってか魔王だから出来て当然か」


 そう言えば魔王様から教えてもらったって言ってたけど。私はウォーブは知らない。そうなるとお母さんかお父さんに聞いたのかな?私なら出来て当然って言われても、魔法の訓練なんてしてもらったことない。


 ―ポーン、ポーン……


「一つじゃなぁ……3つは出来るかな」


 ―ポーン、ポーン、ポーン。


 昔、誰も遊んでくれなかった時のことを思い出す。お手玉って遊びを何かで知って、買ってって言えなくて水のボールでこうして遊んでたなぁ……


「さすがだな」

「ん〜?何が?」

「それだよ。俺が教えようとしてる訓練は」

「え?これただのお手玉って遊びだよ?」

「それが難しいの分かってないのか?」

「どこが?あー初めは2つの方がいいかもね」

「数の問題じゃない」


 これって難しいのかな?最初の方はすぐ落としてたりしてたけど。そう言えば私もいつのまにかできるようになってたなぁ。


「話が逸れたが、勇者よ。これがウォーターボールの完成形。初心を忘れたのなら魔王を見習え」

「俺は初めからウォーターボールはこうだったけど?俺に教えたやつも概ね間違ってないって言ってたし」

「シュウ。それを教えたのはもしやイザナミか?」

「そうだぞ。水を丸めればウォーターボール。簡単だろう?って」

「いや、まぁそうなんだが……そうじゃないんだよ」


 教えたのは伊邪那ちゃんかな。大雑把な感じが凄く分かる感じだね。


「真桜はどうしてるんだ?」

「どうって言われてもなぁ。そんな気にしたことないんだけど」

「聞き方を変えてみればどうだシュウ。真桜から見てあのウォーターボールはどうだ?」

「あれか……」


 私の頭上には人が1人くらい余裕で入れそうなウォーターボール。改めて見るけど、ただでかいだけじゃないんだよね。これをなんて伝えればいいのか……


「ただ大きいだけじゃないんだよねあれ。流れが激しいと言うか渦巻いてる。それでいて魔力の圧縮もされてるから……なんて言うか重い感じかな?」

「あー言われて納得だ。しかしそれが本当なら、あれは見た目以上にやばいな」

「結局どうすればいいんだ?」


 魔法の癖は人それぞれだから、どんな感覚でやってるかなんて使う本人にしか分からない。全員が同じ感覚で出来ることなにかないかな……


 あ。あれならいけるかも。


「多分だけど。祝君は魔法の維持の仕方が違うのかも」

「魔法の維持の仕方?」

「例えばだけど。ホットケーキを上からヘラで潰す。そうなると大きくなると思うんだよね」

「そうだな。面積は広くなるだろうな」

「形は崩れないだろうけど、固くてふわふわ感がない感じ」

「あーそれは酷い」


 なんか分かってくれそう。やっぱり甘いものなら想像しやすいのかな。


「私のはふわふわにしたいから潰したりしない。丁度いい焼き目で固めるって言うのかな?この例えは厳しかったかも……」

「いや、分かるよ。外はカリッで中はふわの精神だな。それなら出来るかも。しかしこのウォーターボールどうしようかな……」

「おい。ここで爆破するなよ」

「爆破ってなんだよ。水魔法だぞ?とりあえず空に放てばいいか」

「ちょ!ま……」


 ―ゴォォォォ……


 ウォーターボールってあんな音で飛んでいくんだね。ナギさんが止めてたけど、祝君は話を聞く前に放ってしまった。


 ―ビキッ……


「おかしな魔力が近づいている……」

「おかしな魔力って?俺の放ったやつか?」

「方角はそっちであっているんだが……」


 皆で飛んでいった魔法を見上げる。すると空が黒くなって…………


 ―バリィィン!!!


 割れた。


 割れた空から何かが出てき……


 ―ドゴォォォン!!!


「え?空割っちゃったのか!?」

「違う。世界の壁を破って来たのは違う原因だ」

「なんだ。俺じゃないならいっか」

「そんな他人事のように言うなよ」

「狙って打ったのかってくらいのクリティカルヒットだな」

「あわわ!なんで皆そんな冷静なの!何か来てるんだよ!?」

「落ち着きなさい真桜。私は何もできないけど。世の中でここが1番安全な場所であることは間違いないわ」


 諏訪さんまでも冷静!私は魔法が使えるんだし、諏訪さん達を落ち着かせなきゃいけないのに……


「おぉ!いよいよ来るのか!魔界からの侵略が!」

「喜ぶことか?」

「これから世界の戦いが始まるんだぞ?これがじっとしていられるか」

「まぁ勇志は戦う側だからな。恐れず迎え撃つ精神は嫌いじゃない」

「…………マジか。俺も戦うの?」

「そうだろう。日本国民で全線で戦えるのは、ここにいるメンツと軍隊くらいだろう」

「突如のボス戦って、チュートリアルとかないのかよ」

「ここは現実だ。ゲームみたいに優しい訳がないだろう」

「見えている光景は現実と思えないけどな……」


 ―ポツ……ポツ……ザァァァ


 上から雨粒が落ちて来たかと思ったら、突然の大雨になった。


「あーもう少し違う方向に飛ばせばよかった。雨で皆濡れちゃうな」

「軽く言ってるけど!これ!ゲリラ豪雨クラスだから!」

「真桜に教えてもらう前だったからな!水は詰め込んで押し込めたからな!すまん!」


 雨の音で聞こえずらいけど、これは祝君の魔法が起こしたみたい。木があるからまだ雨宿り出来るけど、足元はぐちゃぐちゃだ。あー靴濡れて気持ち悪いなぁ〜


「のわぁ!雨のせいで炎がうまく発動しないのだ!?」

「僕らに魔法は不要ってことだよ!」

「っふ。そうだな!語ろうか拳で!」

「お姉さん!魔法を解除で!」

「あ。はい」


 まだ戦ってたんだ。2人は周りが騒がしくなっても気が付かないんだろうか?まぁ……いっか。なんて。


「どうした真桜?雨が寒かったりするか?それなら今すぐ止めるけど」

「おいおい。雨を止められるなら止めろよ」

「おい!そんなこと言ってら……」


 水を扱うウォーブさんでもこの雨は嫌なんだなぁ。でも祝君は雨を止めらてくれるからよかった……


「ほいっと」


 ―キュィィィ……


 え?祝君が空に手を挙げると一言だけ。


「皆、耳塞げー煩いぞ」


 言われてすぐ反応したのは、私と諏訪さん、そして予想してたであろうナギさん。


「名前……なんでもいっか。いってこい」


 ―キィィィン!!!


 耳を塞いでいても聞こえる空気が裂けるような轟音。空を見ると雲一つない晴れた空が出てきた。


「これでいいかウォーブ?」

「あ?なんだって?聞こえないぞ!」

「あーだから耳を塞げって言ったのに」


 なんか軽いな〜でもちゃんと耳を塞いでって言ってたし。仕方がないかな。


「馬鹿か?あんな小さい声で伝わる訳なかろう。シュウの近くにいるか、馬鹿さ加減を予測できるものしか防ぎようがない」

「私は後者。いっくんなら器用に操るとかじゃなくて、吹き飛ばすだろうなって」

「手っ取り早いだろう。それに落ちてくる雨を止めるなんて、重力を操らない限り…………あ。方法他にもあったな」


 何か思いついたみたいだけど。もう遅い。轟音に巻き込まれた人は頭を抱えている。


「耳がキーンってする」

「大丈夫桐花ちゃん?」

「え?何か言ってますか?」


 あー聞こえないか。耳に指さして顔を傾けてジェスチャーで伝えると、グッと親指を立てて返してくれた。大丈夫ってことかな。

 でも雨が降っても戦いを止めなかったのに、あの轟音では止まるんだね。やっぱり不意打ちではびっくりしちゃうよね。


「おい。勇志。喋りにくいから、皆の聴力を治して……って無理か。仕方がない」


 私の次に近くにいた勇志君は、地面にうつ伏せに倒れている。仕方がないって、原因は祝君だよ?


「それより上を見ろ。まだなんか来るみたいだぞ」


 晴れた空に気を取られてたけど、そう言えば向こうの世界から何かが来ているんだっけ。


「何が来るのかな?」

「シュウが魔法を当てたやつが、跡形も残ってないから何かも分からないな」

「そのうち来るだろう」

「その後の追い討ちで生き残ったやつがいればな」

「しかし狭間があってよかったよ。咄嗟に打ったから真桜に言われたこと出来てなかったんだよな。車線上に惑星とかあったら消えたりしてたかも」

「さらっと凄いこと出来る祝君凄いなぁ〜」

「真桜。そこは褒めないで止めなさい。一つ間違えば、いっくんが魔王になっちゃうわ」


 それは困るかも。もしそんなことになったら祝君に迷惑がかかっちゃう。それに怪我をしたり…………するかな?でも皆を守るって言う大切なことは、きっと忘れないから祝君は大丈夫だと思う。


「うん。きっとそうだ」

「何が?」

「祝君は大丈夫ってこと。ね?」

「よく分からんが大丈夫だ。俺は勇者だからな!」

「うん!頑張って勇者様」

「「へへ」」

「時々、2人が何を考えてるか分からない時があるわ」

「結論は俺が皆を守るってことだ。きっと……そう言う訳で。同じの行くぞ〜耳塞げ〜」

「やってることが勇者っぽくない!?」


 諏訪さんが何か言ってるけど、もう耳を塞いでしまったから聞こえない。桐花ちゃんとファイブちゃんもそれに気づいたか、2人で身を寄せ合い耳を塞ぐ。なんか小動物みたいで微笑ましい。


 私のいた世界から、魔王を倒すために来る魔族。そんな人達から私を守ってくれる勇者様。始めはこの生活が終わっちゃうのかと焦ったりもした。でも祝君は魔王である私を守ると言ってくれた。


 だから……


「ふははは!こんなに魔法を遠慮なく撃つのはいつぶりだ!この世界は誰にも壊させないぞ!」


 って言ってる気がする。耳を塞いでるから、目で見える祝君は楽しそうに魔法を使っている。


 諏訪さんが言ってたけど。魔王になっちゃうってこう言うことなのかな?ニヤリと笑う横顔を見つめ、私は思った。


「やっぱりかっこいいな〜」


 魔法がピタッと止まる。終わったのかと思い耳を塞いでた手を外す。


「そんな上目遣いで……真桜は可愛すぎるな」

「え?」

「あ、耳塞いで……ない!?」

「その……あの……」

「あー……その……」


 視線に気づいて振り返ると、諏訪さんとナギさんがこっちをじっと見ていた。


「アイツは魔王にならんだろうな」

「勇者にもならないでしょうね」

「確かに。アイツは確実にオオカミ……」

「それ以上は口に出してはいけませんよナギ様」


 何かすごく言いたいことがありそうな顔で見られてるけど……まぁいつものことか。


 私と祝君が仲良く話している時に、周りからこんな感じで見られることはある。本当は恥ずかしいけど、慣れてきたのもあるし。そんなことより周りの目を気にして、照れてる祝君を見逃す方が勿体無い。っと私は思うようにしたのです。


 向き直ると祝君と目が合う。


 このまま時間が止まればいいのになぁ〜

陽子「真桜はこっちに気がついたけど。また2人の世界に戻ったわね」

ナギ「あれはあれでいいのかもしれんな」

陽子「いっくんが魔王にって話?」

ナギ「そうだ。隣に彼女がいればシュウは人でいられるはず」

陽子「人でいられるね……あんな生き生きと魔法ぶっ放してるのを人と言えるのなら」

ナギ「……」

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