第47話 慣れてしまってる魔王
ゴールデンウィーク!世の中は29日から間に2日休めば……大型連休!?
私は29日から4連勤だったけどね!
羨ましくなんてないんだから(`・ω・´)
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ありがとうございます(*'ω'*)
治癒が出来るようになってからも訓練は続いていた。そして私の訓練はと言うと……
「それでね。祝君は……何かありました?」
「いや。器用なもんだと思ってな。魔力付与しながら普通に会話が出来るなんてと」
「そうですか?どれくらい魔力があるか感じていれば、あとは減ったら補充するだけですよね?」
「そのだけが出来ない奴がいるんだが」
「ん?俺のことか?」
「他に誰がいる。真桜よ、何かコツとかあれば教えてやって欲しい」
祝君は魔力を調整できない訳じゃないはず。あの魔法は慣れてないと言うか、体に馴染んでない感じ。子供の頃から魔力に触れてきた私と違うのは、仕方がないことだと思う。でもそれをナギ様に言う訳にもいかないから。
「コツがあればいいんですけど。魔法って結構感覚でやってしまうので」
「水で良ければ俺が教えよう」
「え?いいのか?」
「あぁ。ファイブの怪我を治してもらった借りを返すだけだ」
本当は私が教えたかったのに……
「これは魔王様から教わったんだが、勇者はウォーターボールは使えるか?」
「初級魔法だろ?それくらい使えるよ」
「では一つ作ってみてくれ」
「ほい」
―キュィィィ……ギュルン!
手を上に伸ばして魔力が集まる感じがしたと思ったら、中心に水が吸い込まれるように集まる。
「今、水が出す音じゃないよね?なんでギュルンとかするの?」
「魔王も気がついたか。おい勇者。何をした?」
「何って水を集めただけだけど?」
「軽く言っているが、なんでそんなデカくする必要がある」
「ウォーターボールだろ?間違ってないと思うけど」
「……魔王。ウォーターボールやってみてくれ」
「え?うん。ウォーターボール」
―チャプン……ブクッ
よく分からないけど。私が知っているウォーターボールを出してみた。
「そうそれだ。ってか魔王だから出来て当然か」
そう言えば魔王様から教えてもらったって言ってたけど。私はウォーブは知らない。そうなるとお母さんかお父さんに聞いたのかな?私なら出来て当然って言われても、魔法の訓練なんてしてもらったことない。
―ポーン、ポーン……
「一つじゃなぁ……3つは出来るかな」
―ポーン、ポーン、ポーン。
昔、誰も遊んでくれなかった時のことを思い出す。お手玉って遊びを何かで知って、買ってって言えなくて水のボールでこうして遊んでたなぁ……
「さすがだな」
「ん〜?何が?」
「それだよ。俺が教えようとしてる訓練は」
「え?これただのお手玉って遊びだよ?」
「それが難しいの分かってないのか?」
「どこが?あー初めは2つの方がいいかもね」
「数の問題じゃない」
これって難しいのかな?最初の方はすぐ落としてたりしてたけど。そう言えば私もいつのまにかできるようになってたなぁ。
「話が逸れたが、勇者よ。これがウォーターボールの完成形。初心を忘れたのなら魔王を見習え」
「俺は初めからウォーターボールはこうだったけど?俺に教えたやつも概ね間違ってないって言ってたし」
「シュウ。それを教えたのはもしやイザナミか?」
「そうだぞ。水を丸めればウォーターボール。簡単だろう?って」
「いや、まぁそうなんだが……そうじゃないんだよ」
教えたのは伊邪那ちゃんかな。大雑把な感じが凄く分かる感じだね。
「真桜はどうしてるんだ?」
「どうって言われてもなぁ。そんな気にしたことないんだけど」
「聞き方を変えてみればどうだシュウ。真桜から見てあのウォーターボールはどうだ?」
「あれか……」
私の頭上には人が1人くらい余裕で入れそうなウォーターボール。改めて見るけど、ただでかいだけじゃないんだよね。これをなんて伝えればいいのか……
「ただ大きいだけじゃないんだよねあれ。流れが激しいと言うか渦巻いてる。それでいて魔力の圧縮もされてるから……なんて言うか重い感じかな?」
「あー言われて納得だ。しかしそれが本当なら、あれは見た目以上にやばいな」
「結局どうすればいいんだ?」
魔法の癖は人それぞれだから、どんな感覚でやってるかなんて使う本人にしか分からない。全員が同じ感覚で出来ることなにかないかな……
あ。あれならいけるかも。
「多分だけど。祝君は魔法の維持の仕方が違うのかも」
「魔法の維持の仕方?」
「例えばだけど。ホットケーキを上からヘラで潰す。そうなると大きくなると思うんだよね」
「そうだな。面積は広くなるだろうな」
「形は崩れないだろうけど、固くてふわふわ感がない感じ」
「あーそれは酷い」
なんか分かってくれそう。やっぱり甘いものなら想像しやすいのかな。
「私のはふわふわにしたいから潰したりしない。丁度いい焼き目で固めるって言うのかな?この例えは厳しかったかも……」
「いや、分かるよ。外はカリッで中はふわの精神だな。それなら出来るかも。しかしこのウォーターボールどうしようかな……」
「おい。ここで爆破するなよ」
「爆破ってなんだよ。水魔法だぞ?とりあえず空に放てばいいか」
「ちょ!ま……」
―ゴォォォォ……
ウォーターボールってあんな音で飛んでいくんだね。ナギさんが止めてたけど、祝君は話を聞く前に放ってしまった。
―ビキッ……
「おかしな魔力が近づいている……」
「おかしな魔力って?俺の放ったやつか?」
「方角はそっちであっているんだが……」
皆で飛んでいった魔法を見上げる。すると空が黒くなって…………
―バリィィン!!!
割れた。
割れた空から何かが出てき……
―ドゴォォォン!!!
「え?空割っちゃったのか!?」
「違う。世界の壁を破って来たのは違う原因だ」
「なんだ。俺じゃないならいっか」
「そんな他人事のように言うなよ」
「狙って打ったのかってくらいのクリティカルヒットだな」
「あわわ!なんで皆そんな冷静なの!何か来てるんだよ!?」
「落ち着きなさい真桜。私は何もできないけど。世の中でここが1番安全な場所であることは間違いないわ」
諏訪さんまでも冷静!私は魔法が使えるんだし、諏訪さん達を落ち着かせなきゃいけないのに……
「おぉ!いよいよ来るのか!魔界からの侵略が!」
「喜ぶことか?」
「これから世界の戦いが始まるんだぞ?これがじっとしていられるか」
「まぁ勇志は戦う側だからな。恐れず迎え撃つ精神は嫌いじゃない」
「…………マジか。俺も戦うの?」
「そうだろう。日本国民で全線で戦えるのは、ここにいるメンツと軍隊くらいだろう」
「突如のボス戦って、チュートリアルとかないのかよ」
「ここは現実だ。ゲームみたいに優しい訳がないだろう」
「見えている光景は現実と思えないけどな……」
―ポツ……ポツ……ザァァァ
上から雨粒が落ちて来たかと思ったら、突然の大雨になった。
「あーもう少し違う方向に飛ばせばよかった。雨で皆濡れちゃうな」
「軽く言ってるけど!これ!ゲリラ豪雨クラスだから!」
「真桜に教えてもらう前だったからな!水は詰め込んで押し込めたからな!すまん!」
雨の音で聞こえずらいけど、これは祝君の魔法が起こしたみたい。木があるからまだ雨宿り出来るけど、足元はぐちゃぐちゃだ。あー靴濡れて気持ち悪いなぁ〜
「のわぁ!雨のせいで炎がうまく発動しないのだ!?」
「僕らに魔法は不要ってことだよ!」
「っふ。そうだな!語ろうか拳で!」
「お姉さん!魔法を解除で!」
「あ。はい」
まだ戦ってたんだ。2人は周りが騒がしくなっても気が付かないんだろうか?まぁ……いっか。なんて。
「どうした真桜?雨が寒かったりするか?それなら今すぐ止めるけど」
「おいおい。雨を止められるなら止めろよ」
「おい!そんなこと言ってら……」
水を扱うウォーブさんでもこの雨は嫌なんだなぁ。でも祝君は雨を止めらてくれるからよかった……
「ほいっと」
―キュィィィ……
え?祝君が空に手を挙げると一言だけ。
「皆、耳塞げー煩いぞ」
言われてすぐ反応したのは、私と諏訪さん、そして予想してたであろうナギさん。
「名前……なんでもいっか。いってこい」
―キィィィン!!!
耳を塞いでいても聞こえる空気が裂けるような轟音。空を見ると雲一つない晴れた空が出てきた。
「これでいいかウォーブ?」
「あ?なんだって?聞こえないぞ!」
「あーだから耳を塞げって言ったのに」
なんか軽いな〜でもちゃんと耳を塞いでって言ってたし。仕方がないかな。
「馬鹿か?あんな小さい声で伝わる訳なかろう。シュウの近くにいるか、馬鹿さ加減を予測できるものしか防ぎようがない」
「私は後者。いっくんなら器用に操るとかじゃなくて、吹き飛ばすだろうなって」
「手っ取り早いだろう。それに落ちてくる雨を止めるなんて、重力を操らない限り…………あ。方法他にもあったな」
何か思いついたみたいだけど。もう遅い。轟音に巻き込まれた人は頭を抱えている。
「耳がキーンってする」
「大丈夫桐花ちゃん?」
「え?何か言ってますか?」
あー聞こえないか。耳に指さして顔を傾けてジェスチャーで伝えると、グッと親指を立てて返してくれた。大丈夫ってことかな。
でも雨が降っても戦いを止めなかったのに、あの轟音では止まるんだね。やっぱり不意打ちではびっくりしちゃうよね。
「おい。勇志。喋りにくいから、皆の聴力を治して……って無理か。仕方がない」
私の次に近くにいた勇志君は、地面にうつ伏せに倒れている。仕方がないって、原因は祝君だよ?
「それより上を見ろ。まだなんか来るみたいだぞ」
晴れた空に気を取られてたけど、そう言えば向こうの世界から何かが来ているんだっけ。
「何が来るのかな?」
「シュウが魔法を当てたやつが、跡形も残ってないから何かも分からないな」
「そのうち来るだろう」
「その後の追い討ちで生き残ったやつがいればな」
「しかし狭間があってよかったよ。咄嗟に打ったから真桜に言われたこと出来てなかったんだよな。車線上に惑星とかあったら消えたりしてたかも」
「さらっと凄いこと出来る祝君凄いなぁ〜」
「真桜。そこは褒めないで止めなさい。一つ間違えば、いっくんが魔王になっちゃうわ」
それは困るかも。もしそんなことになったら祝君に迷惑がかかっちゃう。それに怪我をしたり…………するかな?でも皆を守るって言う大切なことは、きっと忘れないから祝君は大丈夫だと思う。
「うん。きっとそうだ」
「何が?」
「祝君は大丈夫ってこと。ね?」
「よく分からんが大丈夫だ。俺は勇者だからな!」
「うん!頑張って勇者様」
「「へへ」」
「時々、2人が何を考えてるか分からない時があるわ」
「結論は俺が皆を守るってことだ。きっと……そう言う訳で。同じの行くぞ〜耳塞げ〜」
「やってることが勇者っぽくない!?」
諏訪さんが何か言ってるけど、もう耳を塞いでしまったから聞こえない。桐花ちゃんとファイブちゃんもそれに気づいたか、2人で身を寄せ合い耳を塞ぐ。なんか小動物みたいで微笑ましい。
私のいた世界から、魔王を倒すために来る魔族。そんな人達から私を守ってくれる勇者様。始めはこの生活が終わっちゃうのかと焦ったりもした。でも祝君は魔王である私を守ると言ってくれた。
だから……
「ふははは!こんなに魔法を遠慮なく撃つのはいつぶりだ!この世界は誰にも壊させないぞ!」
って言ってる気がする。耳を塞いでるから、目で見える祝君は楽しそうに魔法を使っている。
諏訪さんが言ってたけど。魔王になっちゃうってこう言うことなのかな?ニヤリと笑う横顔を見つめ、私は思った。
「やっぱりかっこいいな〜」
魔法がピタッと止まる。終わったのかと思い耳を塞いでた手を外す。
「そんな上目遣いで……真桜は可愛すぎるな」
「え?」
「あ、耳塞いで……ない!?」
「その……あの……」
「あー……その……」
視線に気づいて振り返ると、諏訪さんとナギさんがこっちをじっと見ていた。
「アイツは魔王にならんだろうな」
「勇者にもならないでしょうね」
「確かに。アイツは確実にオオカミ……」
「それ以上は口に出してはいけませんよナギ様」
何かすごく言いたいことがありそうな顔で見られてるけど……まぁいつものことか。
私と祝君が仲良く話している時に、周りからこんな感じで見られることはある。本当は恥ずかしいけど、慣れてきたのもあるし。そんなことより周りの目を気にして、照れてる祝君を見逃す方が勿体無い。っと私は思うようにしたのです。
向き直ると祝君と目が合う。
このまま時間が止まればいいのになぁ〜
陽子「真桜はこっちに気がついたけど。また2人の世界に戻ったわね」
ナギ「あれはあれでいいのかもしれんな」
陽子「いっくんが魔王にって話?」
ナギ「そうだ。隣に彼女がいればシュウは人でいられるはず」
陽子「人でいられるね……あんな生き生きと魔法ぶっ放してるのを人と言えるのなら」
ナギ「……」