第46話 才能がないことを知る勇者
中々に書きたいことがまとまらない。少しアップに時間がかかってしまいました_:(´ཀ`」 ∠):
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ありがとうございます(*'ω'*)
最近休む暇があまりない。空いた時間は訓練、訓練、訓練……テストで頭をかなり使ったからな。体を動かせる目的があるって言うことは、とても良いことだと思っている。
「はぁ〜早く授業終わらないかな」
「なによ。突然」
「ここ最近は充実してるって話だ」
「話が噛み合ってないのに気がついている?テストで頭おかしいのが治ってないみたいね。魔族に襲われた状況が充実していると?」
「日々の訓練にやる気が出てくるってもんだ」
「いっくんが脳筋だって言うのは分かったわ。それで今日も森で訓練するの?」
「あぁ。使えるものは使わないとな」
2人の魔族に襲われたことは陽に話をしてある。そしてそいつらが暴れて街に行かないように、様子を見に行くついでに戦闘訓練に付き合ってもらっている。当然ただではない。代わりに食料を提供している。
「そんな訳で。陽も勇志も今日こそは連れて行くからな」
「なんでそんな死地にわざわざ……」
「実戦に勝る訓練なんてないんだぞ?せっかく的がいるんだから」
「的って……人扱いすらしてないってどうなのよ」
「そうは言っても、友好関係って訳じゃないからな。味方と確信が持てるまで信用はしたりしないぞ」
「いっくんってそう言うところあるよね。まぁ相手は真桜ちゃんを何故か倒しに来てるって話だから仕方がないけど」
そうなのだ。話せば分かる奴らだし、少しの時間を一緒に過してみて始めよりは殺気はない。だけどあいつらは魔族で真桜を殺そうとする目的は変わっていない。安心して不意打ちされないように常に気をつけてはいる。
「そんな難しい顔するなら止めればいいのに」
「そんな顔してたか?」
「してるよ。眉間に皺なんて寄せちゃって」
「ふむ」
「そうそう。眉間の皺は伸ばしてね。そんな顔してたら真桜ちゃんが不安になっちゃうよ」
見られたかと思い真桜を見る。
「ずるずる……うどんってなんでこんなに美味しいの?ただの小麦粉練って麺つゆかけただけなのに」
「なんでだろうな。そこまで気にしたことなかったです」
「勇志君は……ん?どうかした祝君?」
「いや、なんでもないよ」
俺の視線に気づいた真桜が小首を傾げて聞いてくる。どうやらうどんについて勇志と話していて、俺と陽の会話は聞いていないみたいだ。なんでもないと言うと、降りた髪を耳にかけて麺を啜る。仕草一つ一つが可愛い……
「やっぱり何かある?食べてるところをそんなに見られると恥ずかしいんだけど」
「あーすまん。見惚れてた」
「ごほぉっ!」
「大丈夫勇志君?」
「よくナチュラルにそう言うこと言えるよね。びっくりして勇志が咽せちゃったじゃん」
「本当だよぉ……」
照れてるのも可愛い。
そんな昼食を終えて俺達は公園に来た。
「師匠!」
「桐花?今日は早いな」
「はい。ナギ先生が連れ出してくれたので」
「なんでナギ先生?」
「ナギ先生は臨時で来た保健室の先生なんだ」
「そう言うことだ。これが1番よく守れる」
すぐ横には白衣姿のナギが居た。学校に通えば確かに守りやすいだろうけど。この前任せろって言ったのはこのことだったのか。
「いいのか?授業はないから動きやすいだろうけど。保健室の先生が早く退勤するってどうなんだ?」
「別に俺は補助目的で来ているからな。定時までいなくてもいいんだ。別に金を稼ぐことが目的ではないからな」
そう言うもんかね?てか、そんな役職でよく学校が許可したな。もしかして精神操って……
「言っておくが。シュウが考えているようなことはしていないからな」
「まぁ神様だし。なんとでもなるか」
「その言い草は気に入らんが、別に俺がどうやって学校に入ったかなんてどうでもいいだろう。それより魔族との訓練の話だ」
「ん?それがどうした?」
「あれだけ破壊するなと言っておいたのに、何故まだ公園を使う?嫌がらせか?」
「別に破壊はしてないだろ?魔法は目立つから極力なしにして、メインは桐花のスパーリングだからな」
「そう言う問題ではない。魔法は使っていなくとも、魔族の2人はどう説明するのだ?」
「え?コスプレ。動画の撮影とか言えば、最近の人は理解してくれるよ」
「よくそれが通じたな……」
「この国はアニメに馴染みがあるからな」
正直、通行人に見られた時はどうしようかと思ってたけど。咄嗟に言い訳した動画の撮影で通じた。その時は俺もこの国すげーって思ったけど。
「おーい桐花!今日も来たな!」
「今日も僕が勝つからね」
「何言ってるの?いつも俺様が勝ってるじゃんか」
「違うよ!僕が勝ってるんだ」
「いーや、違うね!なら今日こそ決着をつけようか」
こうしていつも通りの訓練は始まる。真桜も慣れたのか、何も言わずに魔力付与をする。
「魔力付与か。随分慣れてるな」
「魔力の操作練習にはなるかなって。それにファイブの拳は素手で戦うには熱いし」
「ああ言う操作こそシュウに必要だろう」
「俺はダメだな。なんか癖で圧縮かけて触れたら爆発させてしまう」
「……殺傷が前提なのどうにかしろ」
えーだって戦うってことは、相手を倒すことだろう?それなのに制御したり制限かけたりはおかしいよな。魔力が足りないとか、体力を温存するのなら分からなくもないけど。俺には魔力切れの心配も、ましては戦っている途中でばてたこともない。そこは鍛えればどうにでもなるところだからな。
「どうしたのファイブ!今日はキレが悪いよ!」
「そんなことないわ!」
「頑張れーファイブ!」
「っ!?」
キレッキレな桐花に比べて、ファイブの方は少し硬い。それになんかこっちを気にしているような……
「そうです。しっかり声を出して応援してあげるんです。ウォーブの声がファイブに届くように」
「おう!ファイブー」
「っく!?」
「んー?んー。お姉さんうるさいです!そいつ黙らせて下さい」
「えぇ!?」
そう言うことか。ウォーブと真桜が話しているのが気になっているんだな。気持ちはめっちゃ分かるぞ。
「ん?待てよ。それって……」
「あの女の子は、彼のことが気になって仕方がないみたいね」
「やっぱり陽そう見えるか?」
「あからさまじゃない。逆になんで彼は気が付かないの?」
「好かれている訳がないって思ってるらしくてな」
「あー拗れてるやつね。一つの原因は教えている先生にも原因があるわね」
「真桜が?」
「そう。真桜ちゃんは鋭い方じゃないから」
「ズバッと言いますな」
「友達だからね」
桐花にうるさいと言われて、真桜もウォーブも黙ってしまった。どうしたもんかと真桜は困っているが、俺を見ないで欲しい。俺は恋愛について語れんぞ?
「っきゃ!」
「ファイブ!?」
「あ、大丈夫?」
「……あぁ。問題ない。少し体勢を崩し、いたっ」
「これは足を捻ったか。今日はこれ以上出来ないな」
「っく。不覚……」
今日は早いけどこれで終わりか。まぁ怪我をしたのなら仕方がない。
「おい。シュウ。何故今攻撃しない?魔族を倒せるチャンスではないか?」
「マジで言ってんのかナギ?相手は怪我してんだぞ?」
「シュウこそ何を言っているんだ?相手は倒すべき相手ではないのか?」
「そうだが……俺は怪我したやつを倒すような卑怯者にはならん」
「人族はお人好しが多いと聞いてはいたが。なかなかに面倒であるんだな」
「ナギ先生!ファイブ治してあげられませんか?」
「ここにもお人好しが……」
桐花はナギに治せないか聞いてきている。俺に攻撃しないのかと聞いたナギが魔族を治す訳がない。
「どうして治してあげるのだ?」
「だってファイブが訓練してくれないと強く慣れないし、それに楽しくないんだ。うまく言えないんだけど」
「そうか。つまり自分を強くするためにあの魔族が必要なんだな」
「うん。出来るナギ先生?」
「仕方がない……」
「え?治すの?」
「俺がやるとは言っていない。勇志!来い」
「俺ですか?」
俺には倒さないのかって言ってきたから、桐花にも同じことを言うのかと思ったけど。なんか桐花に甘くないか?
「勇志。足首を捻った際の症状はどうなっているか分かるか?」
「症状ですか?一般的には関節が動く範囲以上に強制されて動いてしまい、靭帯が損傷してしまってるのかと。色が変わったりはないし、まだ腫れてはいないのでそこまでひどい状態じゃないかと」
「ふむ。知識は十分だな。ではその場合の治る過程が分かるか?」
「動かさないで安静にしてれば、自然に治るものですよね?足首の腱が切れたりしてるなら、汗とかもっと尋常じゃないくらいでそうですし」
「やはり勇志に治癒の適性があるのも納得できるな」
「どう言うことです?」
「こっちの話だ。彼女の患部に触れて魔力を流してみろ。治るイメージを忘れるんじゃないぞ」
「治るイメージですか。それならなんとなく分かりますけど……」
勇志がファイブの足首にそっと触れる。
さっき言ってた話がなんのことだか、俺には分からないけど。桐花のお願いに動いたんだから、きっと治癒関係で必要なことなんだろう。
「む?」
「そこ。嫉妬しない。これはファイブにとって良いことだからな。多分」
「分かっている。分かっているが……」
「あ、すいません。配慮が足りなかったです。彼氏さん触ってもいいですか?」
「許可しよう!」
「彼氏じゃないから!?」
「ごふぅ!?」
あーこっちで重症患者がいます。心臓を抉られるような痛みだな。これは俺にも分かる。
「ナギさん。魔力ってどう流すんですか?」
「あー教えてなかったか。俺が勇志の中で魔力を巡回させる。その感覚を掴め」
するとナギは勇志の頭に手を乗せる。
「くすぐったいですね。でもこれが魔力なんですね」
「ほう。感覚が鋭いのだな。それを相手に流すことは出来そうか?」
「うーん。こうかな」
「それでいい。それで患部に治るイメージを付与させるのだ」
「……」
勇志の手が光だしたと思えば、その光はファイブの中に消えていった。見てる方からするとそう見える。
「あれが治癒魔法なのか」
「いっくん知らないの?」
「あぁ。異世界じゃ怪我したことないし。誰かが使ってるのは知ってたが、興味なかったからな」
「勇者がそれで良かったの?それなら誰かを治してあげるために覚えたら良かったじゃない」
「そう言われてもな。仲間って呼べるのもイザナミくらいだし、アイツも怪我しないんだよな」
「当たり前だ。そんな柔な鍛え方をしていない。それにもしも傷つけるような奴がいれば、俺が消しに行く」
「怖いな。てか、そっちに集中しろって」
「問題ない。教えることは教えた。あとは本人の能力次第だ」
能力次第ってかなり投げやりだよな。俺が全く出来ないんだから、治癒魔法って言うのは難しいんじゃないんだろうか。ゲームとかじゃ初期設定から選べたりするけど。貴重で引っ張りだこみたいな話も聞くしなぁ。そんな治癒魔法を魔法の使い方を知らない勇志がすぐに出来る訳……
「終わりました」
「「え?」」
「おー痛くないぞ。跳んだりも出来る!」
「それは良かったです」
あれ?治癒魔法ってそんなさらっと出来てしまうものなのか?
「そんな馬鹿な……一度教えただけで出来るような魔法でもないんだが」
「教え方が上手だったんですよ。理屈も感覚も教えて貰えたので、あとは培ってきた知識がものを言うんじゃないか?」
「まぁそうなんだが……ここまで凄いとは思わなかった」
「勇志凄いんだな……意外な才能」
「失礼な奴だ。これくらいゲームやラノベ知識がある俺には造作もない」
必要な知識ってそっち?
「なんか俺も出来そうな気がする」
「シュウ。人で試すなよ。そこの傷ついた木に向かってやれよ」
「俺に対しては雑だな」
「魔力の流れにおいて、言うことなんぞないだろう。あとは治る過程を意識すれば出来る」
「気が治るイメージだな。それなら簡単だろう」
傷がついた木に手を添える。植物なんだし種から芽が出て、中心から外に向かって太くなるのが木だろ。
「っは!」
―ミシッ…………パァァァン!!!
なんと根本から破裂したような音が出た。木を見ると、俺の触れていた場所が木っ端微塵になくなっていた。
―メキメキ……ゴゴゴ……ドシーン!!!
根本が半分なくなった木は、メキメキと音を立てて倒れていった。
「これは……酷い」
「なんだよ。言われたことやっただけだぞ」
「そんな一気に魔力を流すからだ。人でやらなくてよかったな」
「…………俺はもしかしてああなる可能性が?」
「ないとは言わないが。勇志に限ってそれはないと思っていた。あくまでシュウ才能がないだけだ」
「それならよかった……」
おかしい。ゲームの知識は十分なはず。そうか俺は植物に対しての知識がないんだな。
「おい。勇志。俺に治癒魔法をさせてくれ」
「あんなの見て、任せる訳ないだろう」
「あれはきっと植物だから出来なかったんだ。ゲーム知識で人なら出来るはず!」
「はずで四肢を爆散される訳にはいかないって。木だろ?こうやるんじゃないか?」
―メキメキ……
俺が爆散させてしまった木の根に魔法かけると、少しだけ盛り上がったように見える。そして小さな芽が出てきて。
「これ、木は難しいですね。すぐに伸びそうもない」
「当たり前だろう。何十年もかけて伸びているんだ。一瞬でどうにかなる訳ではない。それにしても植物も出来るとは、これはもう俺に教えることはなさそうだな」
「ありがとうございます」
「それとシュウは人や物に治癒を使うなよ。そんな悲惨な絵を俺は見たくない」
「悲惨前提なのがムカつくけど。俺もそんなのごめんだから止めといてやる」
出来ないものは出来ない。勇者は万能ではないのだ。俺は自分にそう言い聞かせておくことにした。決して才能がない訳じゃない……多分……きっと。
陽子「勇者って言ってもなんでも出来る訳じゃないのね」
真桜「完璧に出来る人より、ちょっとくらい出来ない方がいいと思うけどね」
陽子「まぁそうだけど。治癒は出来たに越したことないと思うけど。どんなことにでも使えるじゃない」
真桜「……私も治癒は出来ませんし」
陽子「似たもの夫婦ってことね」
真桜「ふふふふふふ!?」
陽子「同様しすぎ。どしって構えてなよ奥様」
真桜「もう!変なこと言わないでよ」