第44話 知らなすぎることに気付く勇者
最近雨がよく降るな〜自転車で駅まで行けなくなると、歩きで行かないと行けないんだよな……30以上かかるとか、これはもう運動だ。ダラダラしたい_(:3 」∠)_
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公園での出来事から数時間。
いや、数秒後か……
「聞いているのかシュウ?」
「はい。聞いております神様」
「貴様、馬鹿にしているのか?」
「そのようなことはございません」
「ええい。その口調やめろ」
「はっはっは。シュウ様でも神様には勝てないんだ〜」
「……娘は少し私に敬意を表してもいいんだぞ?」
「えー神様は私に何か力をくれたりしてないじゃないですか〜そう言うのは世界の信者がするんです。私はお正月もクリスマスもハロウィーンだって受け入れる人ですよ」
それは割と誰でも受け入れているぞ桐花。まぁこの世界では神様に頼む者はいても、敬うまでする人は少ない。あまり信じていない人が大半だからな。
「ならば貴様にもスキルをやろう」
「え!?本当に!」
「いいのかよ」
「どこかの勇者が正体をバラすから、この者にも事情を話せねばならんのだろう」
「神様ぁぁ!!!」
「人族は現金なやつだな……しかしこの公園を元に戻してからだ。誰かが来る前に終わらせねばならんからな。誰かと誰かのせいで」
「「申し訳ありません」」
公園は真桜の出した大量の水により薙ぎ倒された樹々に、バリケードで作った土壁に水を蒸発させる過程で燃えた樹々。ナギが言うに作り直した方が早いのでは?と思わせる状況らしい。
そしてあっと言う間に公園は元の形へと戻っていく。土壁だけはまだだけど。
「外のバリケードはどうすんだ?」
「外側のそれは今からやるところだ。外に何かいても面倒だ。シュウ2人を空から運べ。周りに認識されないよう高さは気にしろ。今日は学園には行かず、私の家に来い」
「了解」
「え?空……」
「シュウ様……空飛ぶ練習した?」
「任せろ。今ならそこらのジェット機にも負けない」
「それはー……!?」
2人を掴み俺は言われた通り空へと昇る。
「腕が引っこ抜ける……」
「あーこのまま召されそう」
「あ、すまん。バリアとか使えないから、空は寒いよな?すぐ降りるから」
「気遣うのそこじゃないよぅ」
「やっぱりシュウ様はシュウ様だった」
「ナギの家は……あそこか。降りるぞ〜」
「ちょっといわ……」
「シュウさ……」
寒くないように2人を抱き抱えて地上に降りる。そこにはすでにナギが待っていた。
「この距離でなんでそんな時間がかかるのだ?それにこの2人はどうした?」
「空は怖いよぅ」
「私はもうすぐ神様の元へ行くかもしれません」
「見えないようにと言ったが、どんだけ高いところに行ったんだよ」
「どれくらいって……飛行機にぶつからないくらいかな」
「……人族の世界では常識はテストに出ないのか?」
「どう言う意味だよ」
道徳と言う授業は小中学であったな。ただ本を読んでやっちゃいけないってことを話すだけだったけど。
「真面目に授業は受けてるけどな。テストだって今回問題ないはずだし」
「神様……人は空を高く飛んではいけませんとは習いません。自力で飛べる人はいませんので」
「そう言えばそうか。では今教えておく。飛行機と言う物が何かは知っている。しかし上空何千メートルの世界に、生身の人が到達することはほぼない。気温や気圧の変化に耐えられず、死に至ることもあるんだ」
「え?空飛ぶだけで死ぬとか……」
「貴様は単独であれば、深海でも宇宙空間でも生きられそうだが。普通の人は圧縮か破裂かどちらかであろう」
「何それ、こわ〜」
「ええ……本当に」
「僕、生きてて良かった……」
ナギに言われたことを頭に刻んでおこう。2人は話を聞いた後に抱き合い、生き延びた実感とやらを噛みしめれいるらしい。まぁ気圧系は知ってたから重力で緩和はしていたから、潰れたり破裂はしないはず。
「では話を戻すぞ。あの公園であった事を確認したいんだが……部屋で話そうか」
あの公園の出来事を改めて話した。酔ってしまったらしい2人はリビングで寝転んでたけど。
「魔力暴走か……公園に人がいなくて良かったな。それにシュウが近くにいたのも幸いだ」
「人は僕がいましたよ」
「よくあの状況で無傷だったな」
「鍛えてますから」
「そうか。それではこれからもその意気で頑張れ」
「違うでしょナギ。私にも何かスキルくれるんでしょ!」
「呼び捨て……」
「スキルくれたら呼び方変えます」
そんなにスキルが欲しいのか。話が終わったタイミングで桐花が復活した。しかしスキルが貰えるなんて知らなかったんだけど。
「なんだその顔は?貴様にはやらん。イザナミから貰っているだろう?」
「ん?イザナミも出来るのか?」
「……さて娘。どんなスキルが欲しい?言っておくが、魔法が使えるようになるとかはないからな」
「えーまぁいいか。別に僕は魔法使いになりたくないし」
今、あからさまに話を逸らしたような?まぁ今更要らないけどな。ここで話をややこしくすると大変だから成り行きを見守ろう。どうせ言ったってくれないだろうし。
「目が欲しい。師匠とか師匠のお母さんの攻撃が目で追えないんだよね」
「目か……魔眼等は私のスキルでもない。シュウの動きを捉えるようなスキルか。そんなぶっ壊れたスキルあるだろうか」
俺の動きを捉えるだけなのにぶっ壊れスキルってなんだよ。てか、母さんの動きは俺にも見えん!
「反応速度とか脳への伝達スピード上げるようなのない?」
「そうなると雷魔法が使えれば手っ取り早いが……」
「じゃ、それでいいよ」
「適性がないのに教えれば脳を焼き切るが構わないか?」
「構うよ!なんでそうなっちゃうの!?」
「適性がない魔法を使えば、反動が来るのは当たり前であろう。魔法は才能が物を言う」
「漫画じゃ魔法は誰にでも使えるのに……」
「それは幻想だ。火に適性がなければ身を焦がすし、水なんか自分の水分量を間違えて……」
「怖い怖い。魔法ってそんな危ないものなの!?」
「魔法は万能ではない。シュウは……いいとして。真桜は覚えておけ」
「俺はいいのかよ」
「お前は全属性耐性あるからな。余程の魔法じゃなきゃどうとでもないだろう」
へー俺、全属性耐性なんてあったんだ。自分のスキル多すぎて、正直どんなのがあるか覚えてないわ。
「お。これをやろう。娘にぴったりなはずだ」
「え?なになに?」
「それは【感覚】と言うスキルだ。周りの空気を読んだり、手で触れない何かを感じとるスキルだ」
「何かを感じとるって……曖昧じゃないか?」
「何を言う。人には五感があるだろう?あれらを伸ばせる唯一のスキルなんだぞ。まぁ使う者次第で変化するスキルだけどな」
「スキルが派生して何かになるんだね!何それ最高じゃん!ワクワクするね!早くちょうだい!いや、下さい!神様!」
「現金なやつだ。もう渡したぞ」
「え?」
桐花は周りをキョロキョロ見てみたり、立ち上がってその辺を歩いたりしている。
「……スキルを手に入れました!的なアナウンスとかないの?」
「なんだそれ。突然知らないスキルのアナウンスとか、恐怖でしかないだろう」
「そんなもん?」
「何万人もいる者達にいちいちアナウンスしていたら、管理する側の負担が半端ないではないか。それに管理されてもいいのか?」
「そっか。あれは読んでる人達に分かりやすくする機能だし。そんなもんか」
確かに俺も気がついたらスキル増えてたな。管理されるのは嫌だが、あるならあるで教えてくれた方が便利だよな。
「ねーナギ様。スキルがどうなってるか確認する方法はないの?」
「鑑定して貰えばいいだろう」
「鑑定してくれる人知らない」
「そこにいるだろう。スキルまで鑑定できるやつが」
「なんと!?師匠は異世界定番の鑑定眼を持ってましたか!」
「あるな。これは初めに持ってた気がする」
「いいな〜鑑定。便利そう」
「便利だな」
「情報量に脳が焼かれないのも何かの耐性があるからだろうけどな」
「…………ちょい!スキルまで危険なのかよ」
「使う者次第だ」
ここにきて色々と知りすぎてないか?てか、その辺の話は冒険するチュートリアルで言ってくれよ。
「イザナミから何も……」
「聞いてないな。とりあえず習うより慣れろって色々やったな」
「あーそのせいで色んなスキルが混合しているのか」
「俺は実験台か?」
「スキルが貰えていて良かったな。さて、これでスキルの話は終わりだな。敵について今後の話し合いをしようじゃないか」
「ナギ……面倒になってきただろう?」
「何を言う。ここまで話してやっただろう。あとは自分達で考えるものだ」
確かにそうかも知れないが。俺はもっと聞かなきゃいけないことが沢山あるような気がしてならない。世の中に出回っている、説明書とか攻略サイトって凄い画期的なものだったんだな……
「では今後の対策として、魔族が2体この街に居ることが分かってる訳だが。真桜と娘の顔はバレていると言うことだよな?」
「そうだな。俺は鎧で顔も隠れてたから、バレていないと思うぞ」
「そうなれば少し厄介だな。学園であればシュウがいるから、真桜はいいとして。問題は娘の方だな」
「ナギ様!桐花だよ。藤宮桐花が私の名前。そう言えば名乗ってなかったね!」
「桐花か。分かった。っと言うか、神様として敬う話はどこにいった?」
「え?ちゃんとナギ様って様を付けてるじゃん」
「じゃんって……」
「諦めろナギ。桐花はこう言うやつだ」
「まぁ呼び捨てにしてる奴もいるし。様が付くだけまともか」
おいーそこでなんで俺を見る?俺だって気を使って……使って……ないな!便利に頼めるだけイザナミより使える。なんてことは心の中にとどめておく。絶対怒るからな。
「今日1日はシュウと共に行動するんだ。明日までにはなんとかしよう」
「なんだかんだ言ってナギは面倒見がいいよな」
「ふん。スキルを渡したのなら、面倒みるのも必然ということ。それだけだ」
「ありがとうナギ様!」
「くっつくな。全く……」
桐花の頭を撫でるその姿は、犬を可愛がる飼い主そのもの。
「ナギ様……私にもスキルを」
「スキルって真桜にはもう必要ないんはないか?」
「一つ欲しいスキルが……お耳宜しいですか?」
「それだけ畏まることもない。言ってみろ。叶えられるかは分からないが」
真桜は俺に聞かれたくないのか、ナギにそっと耳打ちしている。大きな声で言うのは恥ずかしいスキルってなんだ?
「ふは。そんなスキルが欲しいのか?」
「だって、適性がないって言ってたから」
「陽子が持っているが、あれはその道でも生きていけると言うこと。1人を満足させたいのであれば、スキルなんぞなくとも努力でどうにでもなる」
「そ、そうですか?」
「真桜の腕前は知らないから、滅多なことは言えないが。先程も言ったが、魔法もスキルも万能ではない。努力は人を裏切らないのだ。だからこそ訓練が必要なんだ」
「確かに……体力ついたから今回の魔族から少し逃げられたし。勉強で眠くなりにくくなったし」
「勉強のそれは違う気がするが……」
なんの話かね?陽子が持ってて真桜はないもの?適性がどうのって話だから、呪術が欲しかったのか?あれって努力してどうにかなるものなのか?それなら俺も頑張れば覚えられるかな……邪眼とか憧れるよなぁ〜
「ん?どうした真桜?」
「私、頑張るね祝君!」
「え?うん。そうだな。頑張ろう」
一緒に頑張ればなんでも出来る気がしてくるから不思議だ。
「では私はやることがあるから、お前達は帰ってくれ」
「いきなりだな。魔族はどうするんだ?」
「シュウがいるなら問題ないだろう。今さっきの戦闘後に、無策で突っ込んでくる馬鹿ではないだろう」
「まぁ魔力も多少使ってるだろうし。1人は溺れてるからな」
「であれば師匠!稽古つけて下さい!新しいスキルを試したいです」
「そうか。なら公園行くか。真桜もそれでいいか?」
「うん。私も魔法の特訓したいし」
「おいおい。せっかく直した公園をまた破壊する気か?」
話を聞いていたナギが慌てている。真桜だってそうそうあんな大魔法使わないよ。多分、きっと……いや、怖いな。念のため魔法の訓練はやめた方がよさそうだな。
「大丈夫だナギ。真桜も武術方面で稽古するから。流石にあんな事態の後に魔法とか目立ちすぎるからな」
「え!?」
「え!?じゃないぞ真桜。必要最低限は覚えて損がないから」
「お姉さんも僕と一緒に頑張ろう!」
「うぅ。2人と訓練となると、ついていける自信がないです」
「そんなハードなことはしないさ。桐花のスキル確認の軽い感じでやるから」
「それなら……」
「じゃ、行くか」
「いいかシュウ。私はしばらく動けないからな?また壊すなよ」
「大丈夫だって。魔族と戦闘する訳じゃないんだから」
「それであればいいが。2人にも言っておくがシュウが壊さないか…………あれ、この3人じゃ不安しかない。陽子はいないのか?いないなら呼べ」
「はいはい。大丈夫だって。それじゃまたな!」
「あ、おい!」
ナギの小言は聞きたくないから、俺達は少し早足で家をあとにする。
そんな俺達は3人でいるからって、公園を破壊するようなことは…………
「また会ったな魔王!」
すまん。もしかしたらダメかもしれない。
祝「全くナギは心配性なんだから」
桐花「本当ですよね!僕が公園を壊すような人に見えますかね?」
真桜「…………魔法使う訳じゃないから、大丈夫だよ桐花ちゃん」
桐花「お姉さん!始めの間が気になります!はっ!これが感覚のスキル!?空気が読める!」
祝「ふは。そうだな。場の空気を読むのも感覚かもな」
桐花「早速スキルの効果が……これ喜んでいいところ?」
真桜「いいところだよ。やったね桐花ちゃん」
桐花「いいならいっか!」
祝「桐花がそれでいいなら……」
桐花「む?何かまた変な間が……」